マンションの間取り図をじっくり見ていると、定番の間取りはもちろん、中にはオンリーワンのユニークな間取りまで、バラエティに富んでいることに気が付きます。豊富な物件の中から選ぶ際には「どんな間取りが自分のライフスタイルに合っているのか」「住まいの広さはどのくらいがよいのだろうか」など、迷うこともあるでしょう。
そこで今回は4人家族が住むことを前提に、専有面積が60・70・80m2台のタイプが異なる3つの3LDKの間取りを取り上げ、間取りの特徴と、その間取りの住まい方を紹介します。
60m2台の場合は狭さを感じさせない間取りを選ぶ
専有面積が60m2台で3LDKの間取りの場合、まずは各居室の面積や採光・通風が最低限取ることができているかどうかをチェックしてください。次に、狭さを感じさせない工夫があるか確認しましょう。今回取り上げた間取りは廊下の面積を極力抑え、その分その他の居室を広く取り、各室専用の収納の他にシューズインクローゼットや廊下収納などの共用収納も充実しています。
生活の中心となるLDKは約12.1帖、3つある洋室は約4.8帖、約6.3帖、約6.7帖と、それぞれ一定以上の広さを確保し、手狭さを感じさせません。角住戸で2面が開放されていること、外壁に沿ってバルコニーがL型に張り巡らされていることなどの条件が加わり、専有面積以上の広がりを感じられる間取りになっています。
引き戸の採用で空間をフレキシブルに使う
LDKと隣接する洋室2の間に"3本引き戸"を採用しています。この引き戸を開け放てば、洋室2とLDKは一体感のある、合わせて約18.4帖の広い空間になります。一方、もし洋室2を個室として使用したい時はこの3本引き戸を閉めればプライバシーを守れます。
このように、引き戸を採用した間取りでは、大がかりなリフォームをしなくても、子どもの成長過程に合わせて空間を有効に使うことができます。専有面積が狭めな住戸では、子どもの成長に合わせて空間の使い方を変えていく必要があります。引き戸を多用していることがポイントになるでしょう。
70m2台は供給が多く、目的に合わせて選べる
専有面積70m2台の3LDKは、新築・中古合わせて最も供給が多い間取りです。今回取り上げた間取りは外廊下型マンションの横長リビングタイプの間取りになります。
リビングとダイニングがバルコニーに面し、幅の広いワイドサッシが採用されているため、明るく、開放感があります。キッチンはリビング・ダイニングを見渡すことができる対面式で、炊事をしながらリビングにいる家族とコミュニケーションを取ったり、子どもの様子を見守ることができる、人気のキッチンです。
また、キッチンから洗面所へも直接アクセスできる「2Way動線」となっているため、炊事・洗濯などの毎日の家事を効率よく行うことができます。
外部空間の取り込みでより広く住まう
バルコニーについているスロップシンクは泥付き野菜を洗ったり、子どもの上履きを洗ったりと、あると便利な設備です。バルコニーでガーデニングをする際の水やりにも欠かせません。
広いルーフバルコニーや専用庭のある間取りなら、休日に子どもと一緒に植物や野菜を育てたり、テーブルセットを出して軽い食事をするなど、家族で楽しむアウトドアリビングとして活躍します。専有面積がややコンパクトな場合、このような外部空間を取り込むことができる間取りがおススメです。
居住性とプライバシー性を確保
今回取りあげた間取りは住戸の奥行に対して間口が広い「ワイドスパン」の間取りです。80m2台の3LDKになると、各スペースにゆとりが生じます。さらに柱が住戸の外側にあるアウトフレームになっているため、各室内に柱が出ず、すっきりした空間となり、家具レイアウトもしやすいでしょう。
リビング・ダイニングと3つの洋室それぞれが一定以上の広さを確保し、バルコニーに面して通風・採光条件も良く、居住環境が整っています。全ての個室は廊下から直接アクセスできるためプライバシー性が高く、家族の生活時間帯がずれていてもお互いに迷惑をかけることは少ないでしょう。子どもが小さいころから巣立つまで、年齢に関係なく対応可能な間取りです。
玄関ホールやキッチン空間が充実
広い玄関ホールと独立型のキッチンを有し、マンションながら戸建て感覚も持ち合わせる間取りです。独立型キッチンは扉を閉めればじっくりと調理作業に集中することができ、壁面が多いため収納や設備機器を置くスペースも取りやすく、料理が好きな人に向く、充実したキッチン空間になっています。
このように専有面積が広くなると、リビング・ダイニング・キッチン・個室の各空間が充実し、より豊かな暮らしが実現可能となるでしょう。
子どもが独立したあと、余った個室は夫婦別々の寝室として利用したり、夫婦それぞれが書斎や仕事部屋、または趣味の部屋として使うこともできます。一部屋を大きなクローゼット替わりに使ってもよいでしょう。リフォームでリビング・ダイニングと隣の洋室3との境の壁を取り払い、約20畳の大空間にしてもよいでしょう。
一口に3LDKといっても、住戸の専有面積、住戸の形や位置、バルコニーの有無などによってさまざまな間取りがあります。
専有面積が60m2台とコンパクトな3LDKは、光熱費もあまりかからないためコストパフォーマンスがよく、かつ将来的に売却したり、賃貸に出しやすい広さと言えます。
一方、各居室の面積や通風・採光条件など、最低限の居住性が確保できているかを確認してください。専有面積が70m2台の3LDKは最もポピュラーで供給も多く、ご自身のライフスタイルに合う間取りを見つけやすいでしょう。80m2台の3LDKでは全体にゆとりが出てきますが、子どもが巣立った後、夫婦二人になった時の使い方も想像しながら選ぶようにしましょう。
マンションに「夫婦+子ども2人」の4人家族で住む場合、どのくらいの広さを選ぶとよいのでしょうか。ひとつの指標として国が掲げる「誘導居住面積水準」があります。これは世帯数に応じて豊かな住生活を実現するための理想の広さを示したもので、都市居住型マンションでは4人家族は95m2(3~5歳児が1人いる場合は85m2)となっています。
詳しくは第4回『「子育てがしやすい」マンション選びと間取りのポイント』をご覧ください。
上記の目標は「豊かな住生活を営むためにはある程度の広さ=ゆとりは必要である」という認識に基づくものです。転売や賃貸を考えておらず、長く住むつもりなら、この広さを目標としたいところです。3LDKはもちろん、4LDKでも可能な広さです。
しかし実際のところ、広さは【購入予算】によってくるものと考えられます。立地によってm2単価が異なること、また同じ条件でも住宅面積が広ければその分高くなり、面積が狭くなれば安くなります。新築よりも中古の方が購入しやすい価格になっているものが多いでしょう。
無理をしない範囲でまずは予算を決め、その中で購入できる広さの3LDKを探すことが現実的だと考えられます。その上で、狭めであれ、広めであれ、今回紹介したような注意点を忘れずに、理想の3LDKの間取りを見つけていただきたいと思います。
住まいのアトリエ 井上一級建築士事務所主宰/一級建築士/インテリアプランナー
総合建設会社の設計部で約14年間、主にマンションの設計・工事監理、性能評価などを担当。2004年の独立後は生活者の視点から「安心・安全・快適な住まい」「間取り研究」をテーマに、webサイトでの記事執筆、新聞へのコラム掲載、マンション購入セミナーの講師として活動。
著書に「住宅リフォーム計画」(学芸出版社/共著)「大震災・大災害に強い家づくり、家選び」(朝日新聞出版)などがある。夫と子ども2人との4人暮らし。
住まいのアトリエ 井上一級建築士事務所 http://atelier-sumai.jp/
物件を買う
物件を売る
エリア情報