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#マンションの間取り考

2023.08.29

街のシンボル「トライスター型マンション」の特徴と間取り

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圧倒的にユニークな外観から一般的なマンションとは一線を画す「トライスター型マンション」。トライスター型とは、上空から見た時に全体が Y 字の形をしているものをいいます。その外観のインパクトとともに多彩な間取りがあることも、トライスター型マンションの大きな魅力となっています。

トライスター型マンションとは

トライスター型マンションとは、中央にエレベーターなどの共用部分が集まっており、その中心からYの字型に、3つの住棟が放射線状に延びている形状のマンションをいいます。その形は星の輝きに例えられ、"トライ(3つの頂点をもつ)スター(星)"という呼び名となっています。

【図1】トライスター型マンションの全体平面図(上から見た図/イメージ)

トライスター型マンションの歴史

Y字型の集合住宅のルーツは、昭和30年代に当時の日本住宅公団や自治体などが建設した団地にあります。4~5階建て程度の中低層が中心で、当時その形をした団地は「スターハウス」と呼ばれ、画一的になりがちな団地群の中でもひときわユニークな個性を放っていました。一方で、一般的なかまぼこ型の住棟と比べて建設コストがかかってしまうことや、一棟に設けられる住戸数が限られるなどの理由から、続けて造られることはなかったようです。

その後、高層でかつ大規模の分譲マンションにスター型が引き継がれ、現在ではトライスター型と呼ばれるようになりました。今では東京・愛知・大阪・福岡・北海道などにトライスター型タワーマンションやホテルを見ることができます。

街のシンボルとなっているトライスター型マンション

トライスター型マンションの多くは大規模で総戸数は数百から千戸を超え、地上36階~53階建てと高層であり、利便性の高い都市部に建っています。その独特でインパクトのある外観は遠くからでも目立ち、多くがその街のランドマークとなっています。

トライスター型のメリットとして、広い間口を持つ住戸を確保しやすいこと、陽当たりや通風、眺望の条件がよい住戸が多く、多彩な間取りが揃っていることが挙げられます。画一的ではなく個性的なところ、間取り選びが楽しいところなども大きな魅力と言えます。

一方で、部屋の形が必ずしも四角ではないケースもあるので、そんな空間を有効に利用できるか、必要な家具をおけるかどうかの検討も必要です。部屋の中に出てくる柱や梁の位置もしっかりチェックしましょう。

トライスター型マンションの間取り例(1)変形空間のある1LDKの間取り

【図2】は、住戸の形が変形しているユニークな間取りで、1LDKのためシングルもしくはカップルにおすすめです。バルコニーに面して間口がすぼまっており、共用廊下側に向かって広がっています。リビング・ダイニングの空間が変形していますので、置きたい家具がちゃんと収まりそうか検討が必要です。

【図2】延床面積58m2、1LDKの間取り

主寝室として使う洋室には外気に面した窓がついておらず、リビング・ダイニングと接する引き戸を開けて、そこから採光・換気・通風を得る「2室採光」という手法を取っています。マンションでは良く取られる方法です。リビング・ダイニング側とゆるやかにつながった空間になるため、洋室のプライバシー性はやや低くなりますが、そのような点も気にならないか確認してください。

トライスター型マンションの間取り例(2)変形空間のある2LDKの間取り

【図3】も住戸の一部の壁が斜めになっている変形型の住戸です。間口は広く、二つある個室のうち洋室(1)はバルコニーに面しており、採光・換気・通風条件、プライバシー性が高く、好条件を満たしています。洋室(2)には外気に面する窓がないため、リビング・ダイニング側から光をとる「2室採光」となります。この空間をどう使うのか、しっかりイメージをもっておくことが大切です。

【図3】延べ床面積71m2、2LDKの間取り

例えば子どものいるファミリーの場合、子どもが小さいうちは洋室(2)とリビング・ダイニングとの間の引き戸は開け放しておいて、リビング・ダニングと一体の空間として広々と使い、子どもが大きくなったら引き戸を閉めれば子ども部屋としても使えます。夫婦のみの場合はここをシアタールームや趣味の部屋として使っても良さそうです。

トライスター型マンションの間取り例(3)角住戸の広々間取り

【図4】の間取りは、住棟の先端に位置する角住戸の一例です。角住戸の特徴として、広いリビング・ダイニングは2面に開放して大きな窓があり、採光・通風条件に優れ、眺望も2方向を楽しめます。二つある洋室もそれぞれバルコニーに面して窓があり、居住環境に優れ、プライバシー性も高い個室となっています。

【図4】延べ床面積86m2、2LDKの間取り

このような間取りは一般的なタワーマンションの角住戸でもよく見かけますが、ひとつのマンションの中に角住戸をたくさん設けることができるのは、トライスター型マンションならではのメリットと言えるでしょう。

トライスター型マンションの特徴と間取りのまとめ

トライスター型マンション共通の特徴をまとめます。
・トライスター型とは、上から見てYの字の形をしている
・その独特な形から街のシンボル的な存在となっている
・多くが大規模なタワーマンションで、利便性の高い都市部に建つ
・多彩な間取りパターンをもち、変形した住戸もある

トライスター型マンションを検討する時の間取り選びの注意点
・変形した空間を有効に使えそうか
・置きたい家具が置けるか
・柱や梁の位置やでっぱりは気にならないか
・2室採光の個室の使い方をイメージできているか
・個性的な空間を楽しめそうか

気を付ける点はありますが、トライスター型のマンションには魅力もたくさんあるので、その個性的なマンションでの暮らしをぜひ楽しんでいただきたいと思います。

井上恵子(いのうえ・けいこ)

井上恵子(いのうえ・けいこ)

住まいのアトリエ 井上一級建築士事務所主宰/一級建築士/インテリアプランナー
総合建設会社の設計部で約14年間、主にマンションの設計・工事監理、性能評価などを担当。2004年の独立後は生活者の視点から「安心・安全・快適な住まい」「間取り研究」をテーマに、webサイトでの記事執筆、新聞へのコラム掲載、マンション購入セミナーの講師として活動。
著書に「住宅リフォーム計画」(学芸出版社/共著)「大震災・大災害に強い家づくり、家選び」(朝日新聞出版)などがある。夫と子ども2人との4人暮らし。
住まいのアトリエ 井上一級建築士事務所 http://atelier-sumai.jp/

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