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#マンションの間取り考

2022.10.04

動線から考える「片付く間取り」「散らかりやすい間取り」

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出しっぱなしのモノで部屋が散らかっていると、くつろげないし、家に帰るのも嫌になってしまいますよね。「片付け」は人生の中でもずっと付きまとう課題だと思います。

まずは家の中で一番散らかりやすい「リビング・ダイニング」が片付く方法として、「人の動き」と「収納の位置」に着目して、どこに収納があると「出しっぱなし」を防ぐことができるのか、間取り図を見ながら検証してみたいと思います。

散らかりやすい間取りとは?

散らかりやすい間取りとは、つまり家の中にモノが出しっぱなしになりがちな間取りだと言えるでしょう。その原因として「しまう場所の問題(容量、場所)」や、「しまう習慣がついていない」ことなどが挙げられます。

収納そのものが少ない間取りや、持っているモノに対して収納量が足りない間取りはもちろん、十分な容量があっても、モノを使う場所と離れたところにあったり、収納したいモノのサイズと合わなかったりすると、それは散らかりやすい間取りになってしまいます。

出しっぱなしを防ぐ間取りの例

逆に言えば、「人の動き(動線)」上の、適した位置に適した容量の収納があれば、自然としまう習慣がつき、出しっ放しを防ぐことができます。

【図1】は、南向きに広い間口があるワイドスパンの2LDK、81.43m2の間取りです。バルコニーに面して6.5帖と5.0帖の個室2室と17.3帖のリビング・ダイニングがあり、それぞれ窓もあり、採光・通風条件に恵まれています。

【図1】出しっぱなしを防ぐ間取り

家の中で最も散らかりやすい場所は、家族がそれぞれの持ち物を出しっぱなしにしがちな「リビング・ダイニング」です。

リビング・ダイニングに出しっぱなしになりがちなモノをピックアップして、どうしたらそれらの出しっぱなしを防ぐことができるのか、適切なモノの置き場所はどこなのか、玄関のドアを開けてからリビング・ダイニングまでの動線上にどんな収納があるとよいのかを見ていきましょう。

出しっぱなしになりがちなモノと収納の位置関係

玄関やリビング・ダイニングで出しっぱなしになりがちなものとして、以下6つがあると思います。

・<ポイント1> 靴
・<ポイント2> 使用済みマスク
・<ポイント3> 上着
・<ポイント4> 子どものバッグ、ランドセル
・<ポイント5> 食料品
・<ポイント6> 郵便物、お便り

【図2】玄関からリビング・ダイニングまでの動線

<ポイント1>靴の収納はシューズクローゼットと下駄箱を使い分ける
疲れて帰宅してまず目に入るのは玄関です。玄関の「出しっぱなし」を防ぐ方法から紹介します。

近年では玄関に収納力のあるシューズクローゼットのある間取りも増えています。今回取り上げた間取りは、シューズクローゼットと下駄箱とが両方あるので使い分けができます【図3】。

一歩玄関のたたき(土足の部分)に下りてから中に入るシューズクローゼットには、毎日は使わないもの、例えばベビーカーやサッカーボール、ゴルフバッグなど、また季節性の高いやスキー用具など、大きなものや長物、外で使うものなどを定位置として収納しましょう。

一方、日常的に履く靴は下駄箱に収納します。下駄箱は床から天井まであるトールタイプだと収納力が格段にアップします。扉は開き戸タイプが一般的で、開けると全体が見渡せる点がメリットです。一方、引き戸タイプは扉を開ける際に前面に空間がなくても良く、出し入れがしやすいというメリットがあります。

【図3】シューズクローゼットと下駄箱の使い分け

下足箱の収納方法ですが、玄関の上がり框(かまち、靴を脱ぐ部分。一段段差がついていることが多い)に近く、たたきに下りなくても手が届く位置には履く回数の多い靴を入れます。玄関ドア近くで一回たたきに下りないと取り出せない位置にはたまにしか履かない靴を入れるなど、使用頻度の高いもの、低いものでも収納の定位置を決めておきましょう。

すっきりした玄関をキープするためには、帰宅したら靴をすぐ下駄箱にしまうことが好ましいですが、乾かしてからしまいたいと考える人もいると思います。「一人当たり一足まで出しておいても良い」など、家庭内でルールを設けるとよいでしょう。

<ポイント2>使用済みマスクは置き場所、捨て場所を決める
コロナの流行が続き、マスクが手放せない日々が続いています。使用済みマスクの出しっぱなしを防ぐために、処理方法をきちんと確立しておきましょう。

帰宅したらまず「手洗い」をしたいですよね。今回取り上げた間取りもそうですが、近年では玄関のすぐ近くに手洗い・うがいができる洗面所を設けた間取りに人気があります。

玄関に近い洗面所内にゴミ箱を置いておけば、手洗いと同時に使用済みマスクを捨てることができます。また洗濯して繰り返し使うタイプの使用済みマスクの定位置としては、洗面所の洗濯機近くにマスク専用のネットを吊り下げる、マグネットで洗濯機に張り付けておき、そこに入れるとルールを決めるなど、それぞれの家庭にあった工夫をしてはどうでしょうか。

まだまだマスクを使う機会は多そうですが、洗面所に使用済みマスクの捨て場所・置き場所を決めておくことで、リビングや食卓上に使用済みマスクが出しっぱなしになることを防ぐことができます。

マスクの収納場所を決めておくことで、出しっぱなしを防ぐ

<ポイント3>上着をリビングに持ち込まないことで、ダブルの効果も
外出の際に着ていた上着は、脱いだ後、ついついリビングのソファーにバサッと置いてそのままになりがちです。玄関からリビングに行く途中に家族で共用できる収納(クローゼット)があれば、外で着用した上着、バッグ、帽子などもここにしまうことで、リビングへの出しっぱなしを防ぐことができます。また衣類に着いた花粉などを居室に持ち込むことも防ぐこともでき、ダブルの効果が期待できます。

もし廊下に収納(クローゼット)がない場合は、玄関のシューズクローゼットの中にハンガー掛けやバッグを置ける棚をDIYで作成してみてはいかがでしょうか。

<ポイント4>リビング内に子どものバッグ、ランドセル置場を設ける
子どものバッグやランドセル、勉強道具、ゲーム機などもリビングに出しっぱなしになりがちなもののひとつです。せっかく子ども部屋を設けても、学校から帰宅して手洗いを済ませたらリビングに直行し、バッグやランドセルもそこに置きっぱなしになることも多いと思います。なぜなら、小学校中学年くらいまでの子どもは、親のいるリビングで勉強や宿題をすることも多く、ランドセルがリビングにあった方が部屋まで勉強道具を取りに行く手間が省けるからです。

【図4】の間取りのように、リビングの出入口近くに収納があると、子どものランドセルや幼稚園バッグ置場として活用できます。子ども部屋があるのだから荷物は子ども部屋に置いてくれればよいのに...という思いは、ある程度成長してから期待しましょう。

ちなみに、この間取りは将来個室を一つ増やし、3LDKにすることも可能な間取りになっています。夫婦+子ども2人の4人家族の場合、子どもが成長してそれぞれ個室を与える時期が来た頃に、【図4】の位置に間仕切りを設けます。その際、ここにある収納は、子ども部屋の収納として活用されます。

【図4】将来個室を増やすことも可能な間取り

<ポイント5>食料品の備蓄場所は玄関の近くに
コロナの流行や自然災害の多発を受け、食料品や飲料水などを多めにストックする家庭も増えました。食料品置場が適切な場所にないと、買い物をする⇒しまわずにしばらく玄関や廊下、リビングの一角に、段ボールのまま、もしくはビニール袋に入ったまま出しっぱなしになる、ということになってしまいがちです。

備蓄する食料品などはローリングストックで管理をしていくことが理想的ですが、それを叶えるためには、キッチンに小さくても良いので収納定位置として食品庫(パントリー)があり、さらに運ぶ手間を軽減するためにパントリーが玄関の近くにあるとよいでしょう。

今回の間取り例では、玄関とキッチンが近く、またキッチンの出入口付近にパントリーがあります。食料品の出しっぱなしを防ぎやすい間取りになっています。

<ポイント6>たまりがちな郵便物、お便りはデータ化してリサイクル
ポストから取り出した郵便物や、子どもが学校から持ち帰ったお便りなども食卓上やリビングテーブルの上に出しっぱなしになりがちなもののひとつです。開封して読んだ後も、しばらく置きっぱなしになっている家庭も多いのではないでしょうか。

このような郵便物やお便りでテーブル上の空間を占拠されることを避けるためにも、読み終わった郵便物類の置き場所を決めておくとよいでしょう。例えば、リビングの出入口付近の棚に定位置を決めておけば、出しっぱなしや紛失を防ぐことができます。

読み終わった郵便物やお便りは、中身を確認し終わったら、資源ごみとしてリサイクルしたいものです。保管所の近くに紙専用のリサイクルボックスを置いておいて、読み終わった郵便物やお便りで不要なものはそこに入れるというルールを作ってみてはどうでしょうか。

これまでは取っておく必要があると考えていたお便り類も、写真を撮ってデータを残しておけばよいものも多いです。データ化⇒リサイクルの流れをつくることで、紙の保管スペースを節約できます。

リビング・ダイニングの片付けは家族の共同作業、全員で取り組む

出しっぱなしを防ぎ、片付けをしやすくするためには、収納スペースの広さだけでなく、どこに収納があるかも大切です。特に家の中でちらかりやすいリビング・ダイニングについては、玄関からリビング・ダイニングの間の動線上に適切な収納場所があってモノの定位置を決めておくこと、捨て場所を決めておくことで家族の1人1人が片付けをしやすくなり、出しっぱなしが減り、散らかりにくい家になります。

玄関やリビング・ダイニングのような家族の共用空間は、だれかが代表して片付けをするのではなく、それぞれが自分の持ち物を責任をもって片付けることが大切です。モノの定位置が決まっていれば、小さな子どもでも、粘り強く伝えることで片付けが習慣となります。

家族が早く帰りたいと思うような、スッキリ片付いた家、くつろげる家になるよう、収納や片付けのルールなどを見直してみてはいかがでしょうか。

井上恵子(いのうえ・けいこ)

井上恵子(いのうえ・けいこ)

住まいのアトリエ 井上一級建築士事務所主宰/一級建築士/インテリアプランナー
総合建設会社の設計部で約14年間、主にマンションの設計・工事監理、性能評価などを担当。2004年の独立後は生活者の視点から「安心・安全・快適な住まい」「間取り研究」をテーマに、webサイトでの記事執筆、新聞へのコラム掲載、マンション購入セミナーの講師として活動。
著書に「住宅リフォーム計画」(学芸出版社/共著)「大震災・大災害に強い家づくり、家選び」(朝日新聞出版)などがある。夫と子ども2人との4人暮らし。
住まいのアトリエ 井上一級建築士事務所 http://atelier-sumai.jp/

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