これまで、キッチン、バス・トイレ、リビング・居室などの単位でリフォームのポイントを見てきましたが、今回はマンション住戸の専用部に関わる「設備」全般に注目し、更新の際のポイントについて、今と昔を比較しながら紹介します。
●1980年代のマンションの設備はシンプル・単機能
・バス・トイレ
1980年代、浴室はコンパクトで追い焚き機能は付いていないか、あっても湯たんぽのような仕組みでお湯を温めなおす「バスヒーター」がある程度でした。また、トイレはシャワー機能のない普通便座で、1回流すのに12リットルもの大量の水が必要でした。
・キッチン
1980年代後半になってシステムキッチンが普及し始めましたが、1980年代前半はまだ流し台、調理台、ガス台がそれぞれ独立したセクショナルキッチンが主流で、ガスコンロはガス会社などで購入したものをガス台の上に置いて使っていました。
・水栓・洗面台
水栓は、キッチンもバスも洗面も、基本的には2ハンドルでしたが、一部シングルレバー混合水栓も出始めていました。洗面台は一面鏡の横などに収納棚が付いた「オープンミラーキャビネット」が一般的で、収納力はあまり高いとは言えませんでした。
・給湯器・温水器
給湯器は、給湯専用で追い焚きができないタイプのものか、「給湯熱源機」という古い方式の追い焚き給湯ができるものがありました。なお、「給湯熱源機」は給湯のほか、温めた温水にファンで風を当てて暖房する「ファンコンベクター」用にも使われていました。温水器は、タンクに水を貯めてガスや電気で温める「貯湯式温水器」が使われていました。
・インターホン・インターネット
インターホンは音声通話のみ、インターネットはまだ普及しておらず室内には電話用のモジュラージャックがあるだけでした。
・換気設備
空気の入れ替えをするだけのシンプルな換気扇が主流で、設置場所もバス、トイレ、キッチンなどに限定されていました。
・防災設備
住宅用火災報知器、住戸用自動火災報知設備、共同住宅用自動火災報知設備は一般的になっており、一部のタワーマンションなどではスプリンクラーが設置されているところもありました。
●現在のマンションの設備は高機能かつ多機能
・バス・トイレ
浴室は大型化が進み、ラグジュアリー思考の高まりとともに、デザイン性や機能性が向上しました。例えば、肩湯やミストサウナなどの癒し機能や、床や浴槽を自動洗浄してくれる機能などが人気となっています。
トイレは節水機能が大幅にアップしたほか、タンクレスのトイレが登場し、デザイン的にも洗練されたものになっています。
・キッチン
システムキッチンが主流となり、多様な素材の天板を選べるようになりました。特に天然石や天然素材を練りこんだ「クォーツストーン(人造大理石)」の天板が人気です。
・水栓・洗面台
水栓は基本的に混合水栓で、節水型となり、吐水口がスライドするタイプのものもあります。手をかざすだけで水が出る自動水栓も人気です。また、衛生意識の高まりに応じて、除菌水を噴霧できるものも登場しました。
洗面台は大型化が進み、鏡の裏に収納が設けられた「ミラーキャビネット」が普及しています。また、洗面所に床暖房を付けるケースも増えています。
・給湯器・温水器
給湯器は、床暖房用の「床暖房熱源機」が登場したほか、効率よくお湯を沸かせる「エコジョーズ(高効率給湯器)」や、温水器では「エコキュート(ヒートポンプ式湯沸)」など新たな仕組みのものもが登場して人気になっています。
・インターホン・インターネット
インターホンは、テレビカメラ付きや録画機能の付いたものが普及しています。ただし、マンションの場合はオートロックシステムや防災設備とも連携しており、マンション全体の設備として捉える必要があります。
また、現在のマンションでは、建物までインターネットの光回線が通っており、各戸にもインターネット専用に配線されているケースが一般的です。
・換気設備
2003年7月に24時間換気が法令化されたため、それ以降に建てられたマンションには24時間換気システムが設置されています。また、浴室の「浴室換気乾燥暖房機」が普及し、一般化しました。10年間お手入れ不要をうたうメンテナンスフリー換気扇も登場しました。
・防災設備
80年代と同様に、建物の構造形状や階数にもよりますが、住戸用自動火災報知設備、共同住宅用自動火災報知設備が設置されています。なお、設置基準は改訂されています。
設備についてはリフォームのきっかけもさまざまですが、代表的なものとして設備の老朽化や、故障、掃除をしても落ちない汚れなどが主なきっかけとして考えられます。実際に設備をリフォームしたお客様の事例を紹介します。
●トイレ設備のリフォーム
K様は、以前に内覧した野村の新築分譲マンションの仕様が気に入り、記憶に残っていたと言います。リフォームに当たり、「高級感がある使い勝手のよい水まわりにしたい」という希望があったため、それに応えてトイレのカウンターには高級感のある天然石を使うとともに、掃除がしやすいタイプの便器を採用したところ、「汚れが付きにくくなった」と、実用面でもメリットを実感されています。
●キッチン・洗面設備のリフォーム
個室タイプで、調理中も食事後も家族と会話ができず孤立感を感じていた奥様がリフォームに当たって希望したのは、リビング・ダイニングを見渡せる対面型キッチンでした。リビング・ダイニングとの境の壁を撤去したことで風通しも良くなり、家族全員が集う開放的なLDKが実現しました。
キッチンとつながる洗面所は、引き戸を開け放てば、家事動線が一直線になるようレイアウトを変更し、家事の効率アップに一役買っています。
●バス設備のリフォーム
住宅設備の老朽化をきっかけにマンションリフォームに踏み切ったN様は、リフォーム後のコンセプトを「ホテルのスィートルーム」と定め、全体的にスタイリッシュな中に温かみが感じられる空間を心がけました。バスルームにもテレビモニターをはじめ、洗練された雰囲気中に最上の寛ぎを提供してくれる最新設備が導入されており、ご主人のお気に入りの場所となっています。
●オール電化にしたい、またはオール電化マンションにガスを引きたいときの注意点
ガスを使用しているマンションでオール電化にする場合、電気容量の制限があります。マンション全体の電気容量の範囲で、早い者勝ちになることもあり、規約で制限されるケースもあります。逆に、オール電化のマンションに一戸だけガスを引くことはできません。
●床暖房を新設・交換するときの注意点
床暖房には温水式と電気式があり、それぞれの特徴を知った上で選択する必要があります。例えば、温水式の床暖房を設置する際には、配管ルート・床の厚さに注意が必要です。また、電気式に比べて厚みが出るため、段差が生まれることを考慮する必要があります。
電気式は専用回路の確保が必要になるため、きちんと配線ルート計画を立てなければなりません。また、電気容量以上の範囲へ敷設することはできません。
●キッチンまわりの設備新設・交換の注意点
食洗器やコンベクションレンジを新しく設置する場合は、専用配線の確保が必要です。また、これらの設備はキッチンの収納スペースとトレードオフの関係にあるため、その分の収納スペースが別に必要になる場合があります。
キッチンを移設する際には、換気ダクトルートの確保も必須です。換気ダクト・排水勾配の確保が困難な場所への移設はできません。また、ディスポーザーの新設はできません。
●給湯器・温水器交換の注意点
マンションの場合、エコキュートは共用部への影響から、基本的に交換のみで新設はできません。交換の際も大量の水を排出する必要があるため、きちんと排水処理できることが条件となります。
エコジョーズに代える場合も、お湯を沸かす際に排水があることから、共用廊下側に室外機を設置するとトラブルになる可能性があります。また、管理規約で給湯器の室外機の色を外壁の色と統一するように指定されているケースなどがありますので、事前に確認が必要です。
●防災設備の注意点
間取り変更などを行った場合、スプリンクラーや火災報知器の警戒区域も変わり、防災設備を増設しなければならないケースがあります。マンションでは消防設備点検が必須のため、消防署から指摘が入った場合は必ず改善しなければなりません。間取り変更の際には、消防法に抵触しない範囲で行うか、事前に消防などと協議・確認した上で行う必要があります。
マンション設備のリフォームは、設置場所や規模の大小などによりさまざまなケースが考えられます。建物構造や規約の関係から希望する工事ができないことも多いので、リフォーム前に管理規約をしっかりと確認し、信頼できるリフォーム業者と相談しながら進めることをおすすめします。
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野村不動産パートナーズ株式会社
建築・リフォーム業界に携わり約20年、マンションのリフォームを数多く手がけ、リフォーム現場の最前線で豊富な経験と広い知見をもとにリーダーとして活躍中。
一級建築施工管理技士、一級管工事施工管理技士の資格を保有。
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