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#マンション購入の費用

2022.11.15

マンションの自己資金はいくらにしたらいい?(2)中級編

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マンションの購入において自己資金をいくらにすればよいかは、誰もが検討すべき課題であることは間違いない。(1)初級編では、借入金額にともなう実質負担額の変化を確認し、物件が長期優良住宅認定の新築マンションであれば、借入金額5,000万円では住宅ローン減税の恩恵を最大限に得られること、余剰資金を繰上返済に回すことで、よりコストをおさえられることがわかった。

中級編となる今回は今後の金利変動を見越して、金利が上昇した場合のシミュレーションや金利タイプの違いによる変化を確認する。

金利が上昇すると住宅ローンの実質負担額はどうなるか

金利が上がったら(1)初級編で効果を確認した「一部繰上返済」を経た実質負担額はどうなるだろうか。金利上昇のパターンを予想するのは難しいので、予想はすべきではないと考える。そこで、金利が上昇した場合の実質負担額の変化をみながら、そのコスト負担が耐えられるのかどうかを見てみるのが現実的であろう。

仮に金利が5年間変化せずに、6年目から1%、1.5%上昇した場合をそれぞれ見てみよう(表1)。

金利1%上昇であれば借入金の10%超、金利1.5%上昇であれば借入金の20%超と、金利が上がると実質負担額が大きく増えることがわかる。ただ、当初3,000万円を借りた場合の実質負担額よりも、借入金額を引き上げて13年後に一部繰上返済をする方が負担を小さくすることができることもわかる。

また、実質負担額だけを見れば借入金額を増やすメリットがあるのはやはり、借入金額を5,000万円に設定したときとなっている。

変動金利ではなく、10年固定金利を採用したら変化があるか

表1のように金利が上昇するとコスト増が大きいため、金利タイプの変動金利から固定金利(10年固定)に変更することで利息軽減ができるかを確認してみたい。

以下の試算では、5年後に金利が1%上昇する場合を想定している。

また、10年固定金利の商品については、できる限りリアルな試算とするために現在の住宅ローン商品等も参考にしながら、10年固定金利1では、当初金利が0.8%で、固定期間終了後の優遇が▲0.8%になるとし、10年固定金利2では、当初金利が1.05%で、固定期間終了後の優遇が▲2.1%になるとした(表2)。

5年後に金利1%の上昇であれば、変動金利の方が安くついていて、一部繰上返済をしても10年固定は金利上昇を抑えることに失敗しているといえよう。この程度の金利上昇見込みであれば、10年固定を選ぶべきではないだろう。

次の試算では、表2と同条件で5年後に金利が1.5%上昇する場合を想定している(表3)。

5年後に金利1.5%上昇するのであれば、変動金利よりも10年固定金利2がやや安くなるが、10年固定金利1は少し高くついている。つまり、10年固定金利は金利上昇リスクを軽減するとはいっても、現時点での金利設定や金利の上昇時期や上昇幅によっては、必ずしも金利上昇に強いとはいえない。

また、当初金利が安い10年固定金利1の方が、10年固定金利2よりも割高になってしまう点にも注目してほしい。10年の固定期間終了後の金利がポイントで、「10年固定金利1の▲0.8%<10年固定金利2の▲2.1%」と10年固定金利2の方が固定期間終了後の優遇が大きく異なるため、当初の金利との逆転現象が起こりうるのだ。

この固定期間終了後の優遇金利は、表示がわかりにくく、また、利用者が見落としがちだが、絶対に見落としてはいけない「超重要事項」だ。

これを見ると、10年固定金利を選択するのであれば、10年固定金利2を選ぶべきだろう。

全期間固定金利のタイプによって変化があるか

では、全期間固定金利との比較をしてみたい。

全期間固定1は、全期間1.245%としている。全期間固定2は、当初5年0.81%、6~10年は1.06%、11年目以降は1.31%と「3段階」で金利が上がるタイプだ。全期間固定3は、当初1.5%で、11~15年は1.35%、16~20年は1.2%、21~25年は1.05%、26~30年は0.9%、31~35年は0.75%と段階的に金利が下がる「ステップダウン」のタイプとした(表4)。

結論だけをいえば全期間固定金利は、商品により一定の金利上昇抑制効果があり、金利1%の上昇までは変動金利の方が実質負担額はやや安いが、それ以上に金利が上がる場合には全期間固定金利の方が実質負担額を安く抑えられるだろう。

これを見ると、金利1%以上に上昇する可能性を重く見れば全期間固定金利2を選ぶべきで、金利上昇1%以下にとどまると考える人は変動金利を選択すべきであるが、変動金利を選択するならば金利が1%以上に上昇した場合のことを考えて何らかのリスク対策を検討すべきだ。

まとめ

金利が上がると当然に実質負担額が大きく増えるが、もし自己資金に余裕がある場合に当初に頭金を3,300万円入れて3,000万円を借りた場合の実質負担額よりも、借入金額を5,000万円まで引き上げて頭金を1,300万円とし、13年後に2,000万円の一部繰上返済をする方が負担を小さくすることができることがわかった。

また、金利1%の上昇までは、変動金利の方が実質負担額はやや安いが、それ以上に金利が上がる場合には、全期間固定金利の方が実質負担額を安く抑えられることが確認できた。

(3)上級編ではコスト面だけに限らず、確保しておいた自己資金を資産活用した場合にどうなるか、シミュレーションで確認しながら考察したい。

淡河範明(おごう・のりあき)

淡河範明(おごう・のりあき)

ホームローンドクター株式会社代表取締役。
住宅ローンアドバイザー。銀行、外資系証券会社を経て、1997年に住宅ローン専業のコンサルティング会社の同社を設立。家を購入するための資金計画づくりと住宅ローンの選択について、金融知識と実務経験を活かし、将来の生活にゆとりを築くための設計をするサポートしている。住宅ローンの著書5冊、日経電子版コラムの執筆など。

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