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2017年公示地価、「住宅地価格」は上昇か、下げ止まりか

2017年4月27日

2017年の地価公示では、「上昇」「下げ止まり」と、新聞やテレビなどメディア各社でばらつきが見られました。なぜそのようなことになったのでしょうか。住宅地のほか、商業地や工業地の特徴を含めて、2017年(平成29年)の公示地価を解説しましょう。

<今回のポイント>
■【住宅地】9年ぶりに変動率がプラスに
【商業地】銀座の最高価格5,050万円は「バブル」?
【工業地】物流施設でも建物のアメニティが重要に
商業地のマンション用地化の動きが、都心から周辺部へ

【住宅地】 9年ぶりの変動率プラス。果たして「上昇」か「横ばい」か

2017年の公示地価(国土交通省が発表する1月1日時点の土地価格)で、住宅地の変動率が全国平均で9年ぶりにプラスとなりました。ところが、これに対するマスメディアの報道では、各社異なる表現が使われていました。

「住宅地9年ぶりに~」までは共通するのですが、その後が「上昇」(日本経済新聞、NHK)、「下げ止まり(止まる)」(朝日新聞、読売新聞、毎日新聞、住宅新報)と、まちまちなのです。

国土交通省が発表する公示地価の変動率は、小数第一位までで表記されています。国土交通省のWEBサイトでは、住宅地の全国平均は「0.0%」です。

しかし各報道機関からは、さらに細かい数字が報じられました。朝日新聞・毎日新聞・日本経済新聞は「0.022%」、NHKは「0.2%」、読売新聞は国交省と同じ「0.0%」でした(図1参照)。

これらの数字の出どころまでは明らかにされていませんが、取材に基づいたものであるはずです。従来通りの少数第一位までの「0.0%」なら、各社とも「横ばい」「下げ止まり」という表現になるところでしょう。

あえて小数第二~三位まで表示すれば、「上昇」とタイトルを付けて景気の浮揚感を表現できます。政府の意向などを"忖度(そんたく)"したところもあったのでしょうか。

図2-1(図2-2は過去3年分の拡大)は公示地価の変動率の推移です。0.0より上は前回より上昇、0.0より下は下落を意味します。これを見ると、「上昇」というより「下げ止まって横ばいになった」という感じが近いことがわかるでしょう。

圏域別では、東京・名古屋・大阪の三大都市圏が0~1%の範囲に収まり、ほぼ横ばい状態といえます。「その他地方都市」はマイナスですが、「地方中枢都市」(札幌、仙台、広島、福岡の4市)は、三大都市圏を大きく上回る高い伸び率を示しています。

「東京圏」の住宅地では、「東京都心部」(2016年=4.6%→2017年=4.2%)や「神奈川県横浜市」(同1.2%→0.9%)は、昨年より上昇率が低くなっています。「都心区では急速な上昇を警戒する動き」(東京都区部)/「高値警戒感から総額がかさむ物件に対する需要には一部弱さも見られる」(神奈川県)と分析されています(いずれも国土交通省「価格形成要因等の概要」)。

地方都市の住宅地の平均下落率は縮小していますが、まだ下げ止まりとは言えないエリアも少なくありません。東京圏でも、千葉県柏市の住宅地で、全国一の下落率(マイナス8.5%)を記録した地点がありました。最寄り駅から遠い旧分譲地です。こうした格差はますます広がっています。


【商業地】銀座の最高価格5,050万円は「バブル」?

商業地については、三大都市圏はいずれも高い上昇率を示し、「地方中枢都市」はさらにその上を行っています。こうした状況から「不動産バブル」に近い状態ではないかという指摘も出ています(図3参照)。

図4は、主要都市の商業地の「最高価格」の推移を示したものです。全国トップは今年も東京都中央区銀座4丁目にある「山野楽器銀座本店」の5,050万円(1m2当たり)です。

同地点の昨年(2016年)の公示地価は4,010万円で、既に「平成バブル」(1991年=3,850万円)や「不動産ミニバブル」(2008年=3,900万円)を超えていました。そこからさらに26%、1,000万円以上も値上がりし、過去最高記録を更新しました。

このグラフを見ると、23区と他のエリアとの格差が、たしかに目立ちます。しかし、「収益力(賃料)」をベースに計算された数値としては、「銀座」の価値をとらえたものといえるのではないでしょうか。

「銀座」は言うまでもなく、国内外から多くの人を集めることができる日本最大の商業地です。人が集まればモノが売れ、テナント賃料も高くすることができます。それが地価に反映されているということです。

公示地価は、いくつかの鑑定評価手法で算定された価格を元に決められます。実際に取引された成約事例を基に計算する「比準価格」(取引事例比較法)、貸した場合の賃料をもとに計算する「収益価格」(収益還元法)が代表的です。

銀座4丁目の収益価格は4,730万円(※)で、公示地価と1割も違いません。賃料の利回りは、おそらく2%台後半くらいでしょう。他のエリアでは、採算的な利回りの下限は3%程度ともいわれます。「銀座」は全国一のブランド力に加えて、再開発によって付加価値が増していることを考えれば、妥当な評価ではないでしょうか。

こうした運用益(インカムゲイン)を基準とした評価ですから、売却益(キャピタルゲイン)に偏った取引が横行していた平成バブル期とは、大きな違いがあります。

※平成29年地価公示「鑑定評価書」より。鑑定評価はひとつの調査地点を二人の不動産鑑定士がおこなう。「銀座4丁目」については、の収益価格が4,730万円と4,350万円(公示地価の約86%)。比準価格は、5,200万円と5,350万円だった。

銀座エリアでは商業地6地点で20%以上の高い上昇率を示しました。商業地で全国一の上昇率は、大阪市中央区道頓堀「づぼらや」の41.3%です。京都では八坂神社に近い祇園の地点で29.2%の上昇率を示しています。

いずれも外国人観光客が急激に増えている集客力の高いエリアです。こうした高い上昇率を示すのは、各大都市圏の中でも中心部の一部のスポットに限られています。

編集協力:AllAbout

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