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以前の記事「超コンビニ社会の表と裏」(https://www.nomu.com/60/column/fujihara/4.html)で、これから子や孫たちの世代はAI武装したロボットと暮らすようになるという未来像をさらっと語った。しかも、ロボットの普及は、少なくとも人間がやっていた事務処理仕事を一掃するだろうということも。
実は、ロボットと共存する未来はとっくに始まっているから、それは子ども達だけでなく、私たち「60→」世代の世界をも変えていくのだ。
今回は、このポイントをもっと深く探っていこうと思う。
また、私が言い切ってしまうのではなく、読者の皆さんがそれぞれにそうした生活に思いを馳せ、推理脳を働かせて、いま文科省が盛んに提唱しているアクティブラーニング(主体的、協働的で深い学び)が可能になるように問いかけてみようと思う。
ざっと、お題は2題。パートナーやコミュニティの仲間と「どうなんだろう・・・こういうことは起きるかもしれないね」などと楽しくコミュニケーションしていただきたい。
まず、前述の記事「超コンビニ社会の表と裏」(https://www.nomu.com/60/column/fujihara/4.html)の内容を思い出してほしい。
『ロボットと共に生活する未来が来るというが、それはもうとっくに始まっている。人型ロボットとは限らないからだ。ルンバやルーロのような「お掃除クン」ロボはもう普及しているし、車はもはや「移動クン」という名のロボットだ。自動で車庫入れや高速運転をし、渋滞中には前の車を自動追尾してくれる。乗り込むタイプのロボットだから、もはやガンダムの感覚に近い。
スマホは「通信クン」だし、冷蔵庫は「冷蔵クン」という名のロボットだ。もうすぐ買ってきた冷蔵食品をバーコードで見分けて賞味期限切れを教えてくれたり、自動的に足りない食材を発注したりするようになるだろう。「お掃除クン」に至っては、カメラから家の様子をあなたのスマホに送ってくれるガードマンの役割も果たすし、そのうち犬にお座りを命じてから餌をやってくれるようにもなる(笑)。
もちろん、赤ちゃんや認知症の老人の見守りも。
人間がやると面倒な作業を片っ端から奪われるわけだから、あとには何が残るのかが問題だ。たぶん、それこそが、真に人間的な活動であるはずだ。』
さて、第1問。AI武装したロボットが、私たちに馴染みのネットワークに常時接続される未来には、どんな仕事がなくなり、どんな仕事が生き残り、どんな仕事が新しく生まれるだろうか?
これは最近人気の私の講演テーマでもある。拙著『10年後、君に仕事はあるのか?』(ダイヤモンド社)に詳しく書いた。
なくなる仕事を思い描く時、ヒントとしていつも例に出すのは、駅の改札の切符切りだ。自動改札の導入で、はさみを入れていた駅員さんはいなくなった。やがてプリペイドカードが普及し、今はスマホをかざせば通れるように。そのうち、あの箱型の機械もなくなって、スマホを持っていればホームから電車に乗った瞬間にチャリンと基本料金が口座から引き落とされ、降りたホームで追加料金が引き落とされるようになるのかもしれない。
その他にも、世界中の調査機関が、レールの上を走る電車の運転手は真っ先にいなくだろうと指摘している。現に、東京のゆりかもめ(モノレール)には運転手はいない。だから、運転手に憧れて鉄道会社に入る鉄ちゃん系の孫たちは、かわいそうなことになるかもしれない。
一方、なくなりにくい仕事については、幾つかの要素が浮かんできそうだ。
高度なヒューマンケアの仕事(保育とか看護、介護とかの癒し系)、ロボットには再現しにくい指先を高度に使う仕事、そして情報処理的な仕事よりは情報編集的な(人間のインスピレーションやイマジネーションが効く)仕事・・・などなど。
この議論を深めていくと、人間が本来するべき仕事の本質が見えてくるはずだ。
新しく生まれる仕事については、各種のプログラマーが筆頭格だが、ここでは詳しく述べる紙面がない。
下の図は、私たちの世代は「鉄とコンクリート」によって目の前に立ち上がる建設物(高速道路や高層ビルや新幹線や飛行機や大型船)によって「未来」を間近に感じたものだが、これからの世代は、半分の建設がネットの中で行われるので、未来の感じ方も違ってくることを表している。
『10年後、君に仕事はあるのか?』(ダイヤモンド社)より
孫たちの時代になれば、最先端のAI技術がみなチップ上に書き込まれてしまうし、iPS細胞や遺伝子操作やナノテクノロジーというように、本来、形があるはずのものも微細化して見えなくなってしまうので、未来が感じにくくなる。
実際、半分の世界の建設がネット内で起こるということはリアルな事務仕事がなくなることを意味するし、子どもや孫たちの世代では、人生の半分をネット内で過ごすことも間違いなさそうだ。
第2問は、これに関連して、癒しロボは、どこまでその役割を果たすことが可能か?という問題だ。
人間そっくりの表情で会話するアンドロイドの開発も進んでいる。また、ちょっと前には大ヒットした癒し系犬ロボット「アイボ」もいたし、ソフトバンクのペッパーくんを介護施設で使う実験も始まった。さて、あなたはどう考えるだろうか?
私自身は娘の10歳の誕生日に、長野県川上村(藤原忠彦村長)から天然記念物「川上犬」の生後2ヵ月の仔犬をもらい受け、東京の自宅で11歳になる今日まで育ててきた。村長の持ち犬との掛け合わせで3頭、さらに1頭と合わせて4頭の子を産み、繁殖にも一役かった。もともと川上犬の出産を見られること自体が大変珍しいことのようだが、ハッピーは永福町の自宅の中で出産してくれたため、娘は全ての仔犬の出産シーンを目撃し、ビデオに収めた。
>>「よのなかnet」のページにリンク http://www.yononaka.net/happy/
さて、犬の名の話である。夫婦は次第に互いの名前で呼ばなくなるし、子ども達も大きくなると頻繁に名を呼ぶことがなくなる。だから、家族の皆が一番呼ぶのは、犬の名になるだろう(笑)。だったら、できるだけめでたい方がいい、と考えた。
長男が生まれた頃に頂いたぬいぐるみの犬の名をハッピーと呼んでいたこともあり、純粋な日本犬なのに「ハッピー」とした。週刊現代のグラビアに載る機会があったのだが、落語の林家木久扇師匠も川上犬を飼われていて、同じ理由で「ハッピー」とつけたことを聞いて驚いた。
「週刊現代」人生の相棒(撮影:渡辺充俊)より
最初に連れてきた日、車ではお漏らしもしなかったのに、家に着いた途端ジャーッとやった時のなんとも困ったような顔。庭で飼っているのだが、家族の留守中にリードが外れて外に飛び出したらしく、家に帰れなくなって近所の人がゴミ捨て用の網に引っ掛けてくれていたこともあった。楽しい思い出も、困った思い出もある。
さてさて、もしこれがロボット犬であったとしたら、ここに書いているような物語を共有できたろうか?・・・無理なんじゃあないか、と私は思う。
もちろん、うちのハッピーもあと何年生きるかわからないし、介護の問題もある。「可愛い!楽しい!ハッピー!」だけでは済まないだろう。それでもすでに私たち夫婦と子どもたちの心の中には、ハッピーとの日常の思い出が詰まっている。
ロボットが壊れても泣かないだろうが、飼い犬が亡くなった時には、人目をはばからず号泣することは避けられない。猫好きの方でも同じことではないかと思う。
今回、「ロボット社会で、なくなる仕事となくなりにくい仕事はなんだろう?」と「癒しロボはペットに勝てるか?」の2問を問いかけてみた。
こうした正解のない問題に対して、推理脳を発揮してブレスト(知恵出し)してみることは、あなたの情報編集力を鍛えてくれる。情報編集力は、別名「つなげる力」でもあるから、あなたと世の中の事どもを多様に柔らかく、つなげてくれる役割を果たす。すると世の中とのエネルギー交換が行われ、ボケにくくなる。
一人であっても一人ブレストするのがオススメだ。「これが起こったら次はこうだろうな」とか「こういう商品にはこういうサービスがあるといいのにな」とか、連想ゲームをする癖をつけるといい。
好奇心を失わず、脳を柔らかく鍛えておくことは、年齢に関わらずに若さを保つ秘訣ではないだろうか。
【関連サイト】・川上犬基礎情報
http://www.vill.kawakami.nagano.jp/www/contents/1001000000051/
教育改革実践家/『人生の教科書[家づくり]』著者
1955年東京生まれ。東京大学経済学部卒業後、株式会社リクルート入社。東京営業統括部長、新規事業担当部長などを歴任後、1993年よりヨーロッパ駐在、96年同社フェローとなる。2003年より5年間、都内では義務教育初の民間校長として杉並区立和田中学校校長を務める。2008~2011年橋下大阪府知事特別顧問。14年武雄市特別顧問、2016年春から奈良市立一条高校校長に就任。
リクルート在職中に注文住宅・リフォーム情報誌の創刊に携わる。37歳から家族でヨーロッパに移住。自然豊かなロンドンの住宅やパリのペントハウスに住んだ経験を活かし、東京に家を建て、2016年4月より奈良市に91歳の父と85歳の母と同居。
「よのなかnet」藤原和博のデザインワーク
http://www.yononaka.net/
人生の教科書[家づくり]―筑摩書房
http://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480421623/
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