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老後資金は、財形年金貯蓄や個人年金保険、定期預金、国債、社債、投資信託、株式などさまざまな金融商品を利用して長い年月をかけて準備します。今回は、退職一時金を生活資金に充てる場合に便利な金融商品や、葬儀・相続時のトラブル回避に役立つ金融サービスをいくつかご紹介します。
「家計調査報告(家計収支編 平成26年平均速報結果の概況)」(総務省)によると、夫65歳以上、妻60歳以上の無職の夫婦のみの世帯の1ヵ月の家計収支は、収入20万7千円に対し支出26万9千円で、6万2千円(年間約75万円)不足しています。多くの人は金融資産を取り崩して補っていますが、「老後資金が目減りする」という不安から金融資産の取り崩しに二の足を踏み、節約・我慢の生活を続ける人も少なくありません。
生活資金は老後の生活をつつがなく過ごすための資金です。取り崩してもいい、いえ、むしろ計画どおりに取り崩すべき資産と言えます。取り消すことに不安を感じないような工夫としては、預入期間を1年・2年・3年・4年・5年とずらした定期預金をつくり、満期金を自動的に生活口座に振込むという方法があります。その他、預金を年金のように定期的に一定額を一定期間受取る(以後「定時定額受取り」とする)という金融商品もあります。定時定額受け取りの金融商品の一例を紹介します。
年金式定期預金とは、一括して預け入れた預金を一定期間据置き、年金のように定時定額で受取る商品です。現在取扱っているのは中央ろうきんなどほんの一握りの金融機関だけとなっております。中央ろうきん「ゆとりすと(300)」は、「預入金額100万円 ~ 3,000万円、据置き期間3ヵ月 ~ 5年、受取り期間3年 ~ 20年以内、受取りは1ヵ月毎・2ヵ月毎・3ヵ月毎・6ヵ月毎・1年毎から選択」できます。
保険料を一括で支払い、据置き期間の後に一定期間にわたって年金として受取る保険商品を一時払い個人年金保険と言います。退職金を生活資金に充当するための商品のひとつに「据置き期間1ヵ月 ~ 1年程度、受取り期間10年程度」がありましたが、2014年中に多くの保険会社が取扱いを中止しました。運用環境が好転すると再度販売される可能性があります。
契約者本人が生存中は本人が定時定額受取り(一時受取りができる金融機関もある)、死亡後は残りの信託金を家族(以下「受益者」とする。複数も可。)が一時金や定時定額で受取るという商品です。信託銀行や信託銀行と信託代理店業務を提携した金融機関が取扱っており、三菱UFJ信託銀行「ずっと安心信託」、三井住友銀行「家族リレー信託」、りそな銀行・埼玉りそな銀行・近畿大阪銀行の「マイトラスト『未来安心図』」、広島銀行「〈ひろぎん〉アットトラスト」などがあります。サービス内容や最低信託金額、契約時手数料、信託報酬などは金融機関により異なります。
公的年金以外に財形年金や企業年金があるので生活費をまかなえる程度のお小遣いが欲しい、という場合には利息分割受取型定期預金を利用するのもいいでしょう。「一括して預け入れた預金の利息だけを一定期間分割して受取る」というもので、元本は減りません。横浜銀行の「(愛称)利息分割定期」は、預入期間1年・2年・3年・4年・5年、受取りは1ヵ月毎・2ヵ月毎・3ヵ月毎・6ヵ月毎から選択できます。
公的年金(老齢基礎年金・老齢厚生年金・退職共済年金)は原則65歳から給付が始まります。地域銀行を中心に多くの金融機関はその受取り口座獲得にしのぎを削っており、そのツールのひとつに「定期預金金利上乗せサービス」があります。年金受取り口座を開設すると、店頭表示金利に一定幅を上乗せされた定期預金の預け入れができるというものです。金融期間により諸条件は異なりますが、退職金の一部を有利な定期預金で運用したい人にはメリットのある商品です。
考えたくはないけれど必ず訪れる現世からの旅立ち。そのセレモニー後によく耳にする「故人の銀行口座が封鎖されて困った」という問題の対策に使えるのが遺言代用信託です。信託契約を結んだ本人が死亡すると、受益者が信託金を一時金や定時定額で受取る、という商品です。死亡診断書や受益者本人の確認書類、印鑑、通帳などがあればすぐにお金を受取ることができるだけでなく、信託金は相続の分割協議から除外されるので、受益者に確実にわたるというメリットがあります。
老後資金に余裕がある場合は、50万円 ~ 100万円程度で株式投資信託や株式などに投資するというのはいかがでしょうか。日本の政治や外交、景気動向、各種技術の革新、日本の将来性などの影響を直に受けるこれらの金融商品で資産を運用していると、預貯金の金利のおおよその動きがわかるようになります。もしかすると認知症の予防にも役立つかもしれません。年間100万円までの投資に対する配当金と譲渡益が最長10年間非課税になるNISA(*)は、ちょっとしたお小遣いを得るには手ごろなシステムです。ただ投資商品はリスクのあるものですから、投資資金が大きく目減りする可能性があることを理解し難い方は避けた方がいいでしょう。
* NISAとは、新規投資額年間100万円を上限として株式投資信託や上場株式に投資し、その配当と譲渡益が最長5年間非課税になる制度です。投資できる金額は100万円 × 5年 = 500万円、投資可能期間は平成26年 ~ 35年(10年間)です。
ご紹介した金融商品は、2015年4月時点で金融機関が取り扱っている商品の中の一部です。決して特定の金融商品を推奨するものではありません。年齢、家族構成、資産額などにより使い勝手がいい金融商品は変わりますし、利用予定だったものが突然取扱い中止になることもあります。資産を運用管理するには、常日頃の情報収集が重要です。使途に合う金融商品なのか見極める目と理解できない金融商品には手を出さない覚悟が必要です。
専業主婦の身から外貨預金に興味を持ったことを機会にファイナンシャル・プランナーの勉強を始め、2000年にCFP (FPの上級資格)の試験に合格。2002年に独立開業し、個人向けにリタイアメントプラン、年金、貯蓄、賃貸経営などの相談業務を行う。また各種セミナーの講師も担当。1級ファイナンシャルプランニング技能士、福祉住環境コーディネーター2級、年金アドバイザーなどの資格を持つ。
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