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老後の暮らしとお金のコラム人生を豊かにする老後のマネー

2015/07/24
いつからいくらもらえる?60歳からの働き方と年金

60歳定年後、80%超が継続雇用を選択

本人が希望すれば原則65歳まで雇用することを企業に義務付けた「高年齢者雇用安定法の改正」が平成25年4月1日に施行されて丸2年が過ぎました。「平成26年高年齢者の雇用状況集計結果」(厚生労働省)によると、98.1%の企業が高年齢者雇用確保措置を実施しており、平成25年6月1日から平成26年5月31日までの間に、60歳で定年になった人のうち継続雇用された人が81.4%もいます。希望したが継続雇用されなかった人は0.3%、定年退職した人は18.3%です。

そもそもこの改正は、厚生(共済)年金の支給開始年齢が65歳に引き上げられることにより60歳台前半に「公的年金の空白の期間」が生じてしまうことへの対策でした。では、60歳以降も働き続けると年金にどのような影響があるのでしょうか。

60~64歳に支給される特別支給の老齢厚生年金

厚生年金は、平成6年と平成12年の改正で支給開始年齢が60歳から65歳まで段階的に引き上げられることになりました。現在は、特別支給の老齢厚生年金(定額部分)の引き上げが終了し、特別支給の老齢厚生年金(報酬比例部分)の引き上げ段階にあります。65歳から支給開始になるのは、男性は昭和36年4月2日以降、女性は昭和41年4月2日以降に生まれた人からです(図―1参照)。

特別支給の老齢厚生年金(定額部分・報酬比例部分)とは、60~64歳で国民年金・厚生年金・共済年金のいずれかに通算300ヵ月以上加入しかつ厚生年金に1年以上加入した人に支給される年金です。65歳以降は、定額部分は国民年金から支給される「老齢基礎年金」へ、報酬比例部分は「老齢厚生年金」へと名称が替わります。

厚生年金に加入して働くと支給停止になる場合がある

60歳以降も厚生年金に加入ながら働く人に支給される(特別支給の)老齢厚生年金を「在職老齢年金」といいます。が、給与や賞与に応じて一部あるいは全額が支給停止されることがあります。

在職老齢年金の支給額の計算は60~64歳と65歳以降では異なります。年金が全額支給されるのは、60~64歳は「基本月額+総報酬月額相当額」が28万円以下、65歳以降は47万円以下の場合です。70歳以降も支給調整は続きますが、厚生年金から外れるので厚生年金保険料の負担はありません。

【用語解説】
「基本月額」:加給年金を除いた老齢厚生年金の月額。65歳以降に支給される「老齢基礎年金」は支給調整対象外なので、基本月額の計算には含まない。

「総報酬月額相当額」:月給(標準報酬月額)に直近1年間の賞与を12で割った額を足した額。

「加給年金」:一定の要件を満たす扶養者を持つ一定要件を満たす老齢厚生年金受給者に上乗せして支給される年金。在職老齢年金が1円でも支給されると支給される。

在職老齢年金が更にカットされる

60歳以降も雇用保険に加入して働くと、賃金が60歳時点の給与の75%未満の月には「高年齢雇用継続基本給付金」が支給されます。年金も支給される場合は、賃金の6%を限度に年金がカットされます。これを併給調整と言います。

手取り額はいくらになる?

60歳以降も厚生年金や雇用保険に加入しながら働くと、年金はどのくらいカットされ給与を含む手取りはいくらになるのでしょうか。

例えば、60歳到達時の賃金が50万円、60歳以降の賃金(総報酬月額相当額)が30万円、特別支給の老齢厚生年金(基本月額)が10万円の61歳の人が、厚生年金と雇用保険に加入して働くと、年金は在職老齢年金の支給停止が6万円、加えて高年齢雇用継続給付金との併給調整で1.8万円、合計7.8万円カットされます。一方、雇用保険から高年齢雇用継続基本給付金が4.5万円支給されるので、手取りは「賃金+年金+高年齢雇用継続給付金-年金カット額=30万円+10万円+4.5万円-7.8万円=36.7万円」になります。仮に厚生年金や雇用保険に加入しない場合は、年金カットと高年齢雇用継続給付金がないので「賃金+年金=30万円+10万円=40万円」です。

このように働き方や年金額、給与、賞与によって手取り総額は変わります。事前にいくつかのパターンで手取り概算額を計算するといいでしょう。

厚生年金に加入しない働き方のデメリット

前出のように厚生年金に加入しないで働くと年金カットはありませんが、次のようなデメリットがあります。

・夫が厚生年金から外れると、専業主婦のような扶養配偶者は国民年金の第3号被保険者から第1号被保険者に替わり、60歳になるまで国民年金保険料を納める必要がある。

・健康保険から外れ国民健康保険に加入することになり保険料負担が増える可能性がある

厚生年金と健康保険の加入要件は同じ、一心同体なのです。これらの負担額は思いのほか高額です。人によってはカットされる年金額に近い額になるかも知れません。

年金と資産と余命で決める働き方

労働市場では「70歳現役」への流れが始まっています。厚生年金に加入して働き続け将来の年金受給額を増やすもよし、フリーランサー(個人事業主)として社会保険に縛られず働くもよし、趣味人として生きるもよし、働き方は年金と資産と余命を天秤にかけて選択するのがベストでしょう。その前に、働き方別に90歳程度までのキャッシュフローを専門家に試算してもらうことをおすすめします。

執筆者:大沼恵美子

専業主婦の身から外貨預金に興味を持ったことを機会にファイナンシャル・プランナーの勉強を始め、2000年にCFP (FPの上級資格)の試験に合格。2002年に独立開業し、個人向けにリタイアメントプラン、年金、貯蓄、賃貸経営などの相談業務を行う。また各種セミナーの講師も担当。1級ファイナンシャルプランニング技能士、福祉住環境コーディネーター2級、年金アドバイザーなどの資格を持つ。
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