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老後の暮らしとお金のコラム人生を豊かにする老後のマネー

2014/05/19
おひとり様の老い支度 7つのポイント

1990年代前半に起きたバブル崩壊から、日本経済は20年近く低迷を続けてきました。その影響は雇用形態にも強く表れ、労働者のうちパートやアルバイト・契約社員・派遣社員といった非正規雇用者が占める割合は、1995年の20.9%(=5人に1人)から2013年36.7%に上昇しました(総務省「労働力調査」※詳細集計・平成25年平均(速報)結果より)。

非正規雇用者の増加に足並みを揃えるかのように、50歳時点で一度も結婚したことがない人の割合を表す「生涯未婚率」も急上昇しています。国立社会保障・人口問題研究所の「人口統計資料集(2014)」によると、1995年の生涯未婚率は男性8.99%(=11人に1人)、女性5.10%(=20人に1人)でしたが、2010年には男性20.14%(=5人に1人)、女性10.61%(=10人に1人)に急上昇しました。また、低下し続けている初婚率は、2000年11%台(100人に11人)が2012年には8%台(100人に8人)へ低下し、離婚率は2000年以降6%弱(50組に3組)と高止まりしています。

全世帯に占める単独世帯(=おひとり様)の割合は、2010年が32.4%、2015年は33.3%、2035年には37.2%に上昇する、と予測されています(人口統計資料集 2014年)。20年後の日本は「おひとり様」が闊歩している世界なのでしょうか。

自立とよりよい人間関係が重要

子どものない夫婦に投げかけられる言葉に「子どもがいないと年を取ってから大変ね。助けてくれる人がいないもの」みたいなことがよく言われます。では、おひとり様やおひとり様予備軍である子どものいない夫婦の老後は悲惨なのでしょうか?

そんなことはありません。「お金・健康・生きがい」をポイントに周到にプランニングすれば、自由で楽しい老後が待っています。そのためには、現役時代から7つのポイント 「老後資金、健康管理、近所付き合い、終の棲家、金銭管理、エンディングノート、身辺整理」に留意した生活態度が必要です。

老後資金

当然のことながら生活に困窮しても「仕送り」は望めません。まず老後資金の要である公的年金や企業年金、退職金などを確実に把握し、次に老後の生活費を現役時代の生活費の80%程度(男性は100%)に見積って支出額を計算。収支決算をして算出した不足額を、リタイアするまでに計画的に準備するようにしましょう。

健康管理

カゼで寝込んだ、糖尿病がひどくなって入院した、うつ病になった、などなど高齢になれば健康を害する頻度が高くなります。しかし、それを身近で親身にサポートしてくれる人はいません。ですから心身の健康はお金以上に重要なのです。健康診断を定期的に受け、食事内容や運動・休養などに配慮し、友人・知人とのおしゃべりや食事会、趣味のサークル、などで楽しい時間を共有する。そんな規則正しく充実した生活スタイルは心身の健康維持に役立ちます。日々の積み重ねが「ピンピンコロリ」に繋がります。

近所付き合い

例えば、朝7時までに雨戸が開かなければインタホーンを鳴らして状況を確認し合う、そんなご近所同士で助け合う関係を普段から築いておくことが大切です。いただき物やおかず一品のおすそ分け、買い物の代行など、普段のお付き合いの中で関係は培われるものです。遠くの親せきや友人の対応にはタイムラグがあるので、緊急時には間に合わないことが少なくありません。信頼できる近隣の人はとってもありがたい財産です。

終の棲家

一般的に80歳を過ぎると、食事の支度や買い物などに負担を感じたり、家や庭の管理が思うようにできなくなったり、不慮の事故や病気などから要支援・要介護状態になる可能性などが高まっていきます。いやな言葉ですが「孤独死」が頭をよぎったりもします。

他者のサポートなしでは生活が立ち行かなくなる前に、夜間や救急診療のある安心して生活できる場所や助け合える場所(例えば、ケアハウスやグループリビング、サービス付き高齢者向け住宅など)に住環境を移すのもいいでしょう。気の合う友人や兄弟姉妹と一緒に入居すれば、ひとりで暮らすより平安な気持ちで楽しい日々を過ごすことができるかも知れません。50歳代から「誰とどこに(=誰のそばに)住むか」の視点で人間関係を見つめることも必要です。

金銭管理

高齢になるほど金銭管理が難しくなる人が増えます。認知症になる可能性も高くなります。入院や介護施設に入所することもあるでしょう。さらに、死後の事務処理なども必要です。そのような場合の財産管理・金銭管理・生活支援等はどうしたらいいのでしょうか。

対策のひとつに「任意後見制度」があります。これは、十分な判断能力があるうちに、将来サポートが必要になったときに、それらの事務手続き等を任せる人を自ら選び代理権を与える契約を公正証書で結んでおく、という制度です。任意後見人には、信頼できる親族や友人・知人、弁護士、司法書士、NPO法人などが考えられます。似たようなサービスを提供する金融機関もあります。団塊世代が後期高齢に差し掛かるまでには、金銭管理や生活サポートに関する新しいサービスがどんどん提供されるでしょう。こまめに情報を収集してサービス内容に精通しておくとイザというときに安心です。

エンディングノート

「〇〇で倒れ入院。意識が戻らない」といったパターンが増えています。おひとり様はすべて自分で決めるのですが、植物人間(脳死)状態では何も言えません。どんな処置をしてほしいのか、誰に連絡すればいいのか、葬儀はどうするのか、遺産は...。人生の幕引きは自分の希望を通したいものです。そのためには、終末医療や介護を受ける場所、葬儀のスタイル、親族等への感謝の言葉など、あなたの考えをまとめたエンディングノートを作っておくといいでしょう。ただし、これは遺言書ではありません。遺言書は別に作成しましょう。

身辺整理

「70歳を過ぎればいつ死んでもおかしくない」と考え、物だけでなく人間関係も断捨離をしましょう。日記や写真など他人に見られたくないものや処分しにくいものは、元気なうちに処分。ゆったり楽しい日々を過ごすために義理のお付き合いも断捨離し、時間とお金を有意義に使いましょう。

ひとり暮らしの高齢者を取り巻く環境は、年々快適化しています。例えば、インスタント食品や冷凍食品、宅配のお弁当、スーパーの配送サービス、通信販売、生活家電にセンサーを搭載した高齢者見守り・安否確認サービス、メールやインターネット、電子マネー、介護在宅サービスなどなど。それらを利用すれば、高齢のおひとり様が自宅で安心して暮らし続けることも可能な状況になりつつあります。

生活を支えるツールが便利になるほど、高齢者が抱く「孤独感」は強くなるかもしれませんが、しょせん「人はひとり」です。孤独を素直に受け入れると、他者との繋がりが愛おしくなり、孤独感から解放されるきっかけに。おひとり様の老後が豊かになるために、まず準備すべきなのは「自立」と「よりよい人間関係」なのではないでしょうか。

執筆者:大沼恵美子

専業主婦の身から外貨預金に興味を持ったことを機会にファイナンシャル・プランナーの勉強を始め、2000年にCFP (FPの上級資格)の試験に合格。2002年に独立開業し、個人向けにリタイアメントプラン、年金、貯蓄、賃貸経営などの相談業務を行う。また各種セミナーの講師も担当。1級ファイナンシャルプランニング技能士、福祉住環境コーディネーター2級、年金アドバイザーなどの資格を持つ。
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