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住宅ローンコラム 知っておきたい!住宅ローンの最新動向

金利予測で住宅ローンを選ぼうとしていませんか?

2014年06月04日

住宅ローンについては、専門家の目から見ると誤解されていることが数多くあります。
その原因のいくつかは、時間の経過とともにシステムが変化していることによるものです。より適切な判断を下すには、既存の情報だけではなく、現在の状況を詳細に分析することが必要不可欠だといえるでしょう。

金利なんてどこも同じ?

金融の自由化により、1994年に規制金利から自由金利に変わりました。それからしばらくの間は、ほとんどの金融機関は、短期プライムレートは現三菱東京UFJ銀行の決定する金利を参考に金利を設定していましたが、数年経過して、金利が同じなのは独禁法に抵触しかねないと、各金融機関が独自に金利を設定するようになったのです。ちなみに、2014年1月現在で主要な金融機関476社中、変動金利の店頭金利を2.475%(最頻値*1)としているのは、全体の約3割にとどまっています。

変動金利の適用金利(*2)(優遇後)は、0.599~3.575%と幅があり、平均金利は約1.3%となっていてバラバラです。「どこの金融機関でもそう大差はない」というのは誤解であることがわかります。

金融機関による金利の差が、どの程度の影響を及ぼすのか試算してみましょう。最安の変動金利0.599%が全期間継続すると仮定すると、借入金額3,000万円、借入期間35年、元利均等返済の場合、元利総支払額が3,326万円となります。同様に、上記金融機関で最も金利が高かった3.575%では5,262万円となり、1,936万円も多く支払うことになります。

この10年間の変動金利(店頭金利*3)の変動幅はたった0.5%でした。単純に比較するのはやや荒っぽいとは思いますが、金利予測は大切であるものの、個別商品の調査の方にも十分な時間をかけるべきではないでしょうか。

*1 データの中で最も頻繁にでてくる値
*2 お客様の個別な事情等を考慮して、一般的な金利よりも安くしている特別金利
*3 定価のようなもので、お店にきた一般のお客様に提示する金利

変動金利は短期プライムレートに連動する?

この変動金利は、短期プライムレートに連動する、と書籍やネットで読んだことがある方は少なくないでしょう。しかしそれは、正確には、変動金利の店頭金利に連動しているというべきです。「変動金利(店頭)」と短期プライムレートの指標となる「無担保コールレート(翌日物)」(*4)の相関係数(*5)について2004~2013年までの10年間のデータをみると、0.85と連動性がかなり強いといえます。しかし、「最優遇金利」と「無担保コールレート」とは相関係数0.65で、連動性はやや強いといったくらいになります。

市場の動きを反映するのが店頭金利であるというならば、最優遇金利は銀行の政策(営業方針とも言い換えられます)にあわせて、市場の金利の動きとは別の動きをしているといえるのではないでしょうか。

例えば、メガバンクの変動金利(店頭金利)2.475%、最優遇金利0.775%を見ると、2.475%が市場連動部分で、▲1.700%が銀行の営業方針ということになります。この▲1.700%の部分が営業方針によるディスカウントなのです。つまり、市場金利の変動以上に、銀行の経営方針のウェイトが高くなっているといえます。

*4 1年以下の短期資金をやりとりする、銀行間の市場において代表的な指標となっている金利
*5 異なる2種類のデータの関係性を表し、-1~1で表示され、1に近いほど関係性が強い

銀行は住宅ローンで儲かっている?

住宅ローンを取り扱う金融機関は、日本においては少なくとも1500社くらいありますが、この数が多すぎることは誰の目にも明らかでしょう。

残念ながら、銀行決算の数字が出そろっていないため、全国の銀行の2013年3月期決算*6から、資金調達費用、営業経費の平均値を取り出し、それぞれ総資産の平均値で割った比率でみてみましょう。それぞれが、0.19%、0.74%となり、団信コストの負担分を0.2%とすると、コストは1.13%と計算されます。よって、住宅ローンを1.13%以下で貸すと赤字になる訳ですが、前述の通り変動金利は平均金利が1.3%で、1%割れで貸している先も多く、住宅ローン事業はあまり収益性のある事業ではないとわかってしまいます。超低金利の住宅ローンはやっぱり儲からないのですね。

全国地方銀行協会の会長のインタビュー記事では、「地方銀行の2014年3月期決算は『増益のところが多く、総じて好決算である』と語った。ただ、好決算を支えた要因は保有株式の減損損失が減るなどの非資金利益で、利ざや縮小で本業の資金利益が伸び悩んでいることを踏まえ『構造的問題は大きい』との認識を示した。」(2014年5月14日付日本経済新聞電子版)とあり、地方銀行では、資金利ざやの縮小が経営課題として認識されるようになっているようです。ネット専業銀行も超低金利を提示することで知られていますが、地方銀行も負けず劣らずの低金利を提示しています。各固定期間の金利の安い商品ベスト10には半分近く地銀が占めている場所や時期もあるくらいです。ただ、多くの地銀は2014年3月期の資金利ざやが減っているようなので、銀行にとって住宅ローンはどんどん儲からなくなっているようです。

銀行の融資獲得のために採算性を度外視した金利競争で収益性が毀損され始めている、そんな現状がどこまで続くのでしょうか。今後は、採算性を重視し、金利設定を見直すところがでてくるかもしれず、特に注意すべきは、資金利ざやのマイナスが大きい金融機関だと考えます。

今後、自行の採算性を重視し、優遇を縮小する動きがでてくると推測されますが、それだけでなく、店頭金利の設定を引き上げる可能性も考えられます。

金利選びに決算分析が必要になる、そんな時代がすぐそこまできているのかもしれません。

*6 全国銀行協会の全国銀行財務諸費用分析の全国銀行総合財務諸表(業態別)

執筆者:淡河 範明(おごう のりあき)

ホームローンドクター株式会社代表取締役。
住宅ローンアドバイザー。銀行、外資系証券会社を経て、1997年に住宅ローン専業のコンサルティング会社の同社を設立。家を購入するための資金計画づくりと住宅ローンの選択について、金融知識と実務経験を活かし、将来の生活にゆとりを築くための設計をするサポートしている。住宅ローンの著書5冊、日経電子版コラムの執筆など。

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