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住宅ローンコラム 業界歴30年以上のFPが伝授!押さえておきたい住宅ローンのキホン

省エネ住宅で住宅ローンもお得になる?環境にも家計にもやさしい住まい選び

2025年06月04日

ここ数年、「省エネ住宅」が注目を集めています。地球温暖化やエネルギー価格の高騰といった背景もありますが、「省エネ住宅」は環境にやさしいだけではありません。マイホームを建てたり購入したりする際に利用する住宅ローンにおいてもメリットがあります。

今回は、省エネ住宅と住宅ローンの優遇措置について解説します。

省エネ住宅とは?

国土交通省によると、省エネ住宅とは「高断熱・高気密に作られたエネルギー消費量を抑える性能を備えた住宅」のことを言います。省エネ住宅は、次の2つの基準を満たすことが求められます。

(1)断熱性能基準(外皮基準)
断熱性能が高い屋根・外壁・窓(=外皮)により、建物の断熱性能(建物の内部から外部へ、外部から内部へ熱が伝わりづらくすること)が地域ごとに定められている基準値より低いこと

(2)一次エネルギー消費量基準
省エネ性能の高い冷暖房・換気・給湯・照明などの設置により、住宅で使うエネルギー消費量を抑えられること

省エネ住宅では、それぞれの基準について以下の性能を満たすものとしています。
(1)断熱性能基準...断熱等性能等級5以上(7段階中)
(2)一次エネルギー消費量基準...一次エネルギー消費量等級6以上(6段階中)

省エネ住宅の代表例としては「ZEH水準省エネ住宅」、「長期優良住宅」、「低炭素住宅」などがあり、いずれも断熱性能基準、一次エネルギー消費量基準を満たしています。

省エネ住宅にはさまざまな優遇措置がある

省エネ住宅の普及促進は、国の住宅政策の中でも最優先課題の一つとなっています。そのため、省エネ住宅については、以下のようなさまざまな優遇措置が設けられています。

図表1:省エネ住宅の優遇制度(新築住宅の場合)loan_20250604_01.jpg

他にも、自治体によっては独自の補助金や優遇制度を設けています。

たとえば、東京都の「東京ゼロエミ住宅導入促進事業」では、一定の要件を満たした省エネ住宅への助成金に加え、不動産取得税が最大で全額免除される制度も用意されています。各自治体の助成制度については、マイホームを新築・購入する地域の自治体で確認してみると良いでしょう。

省エネ住宅の住宅ローンの金利優遇とは?

金融機関によっては、一定の省エネ性能基準を満たす住宅に対して、住宅ローンの金利を引き下げてくれます。省エネ住宅に対して金利優遇がある住宅ローンには以下のようなものがあります。

(1)フラット35
住宅金融支援機構のフラット35は長期固定金利型の住宅ローンですが、省エネ性能が高い住宅に対しては「フラット35S」制度が利用でき、当初5年間、金利が引き下げられます。

フラット35Sの金利引下げメニューには、ZEH、金利Aプラン、金利Bプランの3種類があり、省エネ性能により引下げ幅が異なります。

図表2:フラット35Sの金利引下げメニューloan_20250604_02.jpg出所:住宅金融支援機構「フラット35S」

金利Aプラン、金利Bプランは、新築住宅の場合は図表3の(1)~(5)の5つの項目のうち、いずれか1つを満たすと金利引下げを適用することができます。

図表3:フラット35S 新築住宅の技術基準loan_20250604_03.jpg出所:住宅金融支援機構「フラット35」を基に筆者作成

中古住宅の場合は、金利Aプランなら図表4の(1)~(7)のいずれか1つ、金利Bプランなら(1)?(3)のいずれか1つを満たすことで金利引下げが適用となります。

図表4:フラット35S 中古住宅の技術基準loan_20250604_04.jpg出所:住宅金融支援機構「フラット35」を基に筆者作成

選択肢の中には耐震性能や高齢者配慮などの項目もあり、必ずしも省エネ性能を選択しなくても他の項目の基準を満たせば金利引下げの対象になります。

しかし、2025年4月に施行された改正建築物省エネ法により、全ての新築住宅に省エネ基準適合が義務化され、標準的な住宅の省エネ性能がアップしました。

義務化された省エネ基準は断熱等性能等級、一次エネルギー消費量等級とも4以上ですが、断熱性能を1ランク、または一次エネルギー消費量性能を2ランク上げればフラット35Sの引下げメニューの対象となり、省エネ基準を満たすためのハードルが下がりました。

このような状況から、金利引下げに加えて快適な生活を得られる省エネ住宅は今後も増加するでしょう。

なお、図表2にある「ZEH」と「ZEH水準省エネ住宅」は異なるものです。ZEHとは、太陽光設備など創エネの導入により一次エネルギー消費量がほぼゼロになる住宅のことです。そのため、金利の引下げ幅も最も大きくなっています。一方のZEH水準省エネ住宅では、太陽光設備の導入が必須ではありません。

そのほか、フラット35には「金利引下げポイント制度」があり、「子育てプラス」「維持保全型」「地域連携型」など他の引下げ条件との組合せによって得られるポイント数に応じて、金利引下げ幅や適用期間についてより大きな優遇を受けることができます。

(2)民間金融機関の環境配慮型住宅ローン
近年では多くの金融機関が、省エネ住宅を対象に、通常の住宅ローンよりも金利を優遇する環境配慮型の住宅ローンを提供しています。金融機関により条件も異なり、長期優良住宅などの省エネ住宅の他、ZEH、ZEH水準省エネ住宅、太陽光導入住宅などさまざまです。そのため、詳細については各金融機関に確認し、比較するのが良いでしょう。

省エネ住宅が優遇される理由は?

金融機関が省エネ住宅向けの住宅ローンを拡充している理由の一つに、住宅の資産価値が長期的に維持しやすいことがあります。高断熱・高気密で省エネ性能が高い住宅は、中古住宅になっても人気が高く、将来的にも資産価値の目減りを抑えやすいと考えられています。

そのため、融資する金融機関側にとっても、担保評価を維持しやすく、貸し倒れリスクを抑えることにもつながります。

さらに、省エネ住宅の普及を後押しすることにより環境保護に貢献しているというアピールができ、金融機関のイメージアップにもつながることがあります。

実際にどのくらいお得になる?
住宅ローンの金利優遇を受けると、住宅を購入した人はどのくらいお得になるのでしょうか。フラット35の例を見てみましょう。

条件:フラット35(2025年4月最頻金利・融資率9割以下・新機構団信付)の場合 借入金額3,000万円35年返済の場合

図表5:フラット35 金利引下げプランの返済額比較loan_20250604_05.jpg

金利Aプランとフラット35を比較しても、当初5年間で計448,860円もの返済額の差が生じます。35年間返済を続けた場合は809,421円とさらに大きな差になります。

さらに忘れていけないのが、毎月の光熱費の軽減です。省エネ性能の高い住宅は、屋外の暑さ寒さをさえぎり冷暖房も効きやすいため、光熱費を大幅に節約できます。さらに太陽光発電設備や蓄電池を搭載するZEHの場合、余剰電力があれば売電できるため、売電収入を得られる場合もあります。

このように、金利差による返済額の軽減と光熱費の節約を合わせると、経済的な効果はより大きなものになります。

中古住宅に一層広がる住宅ローンの優遇制度

フラット35Sでは、2025年4月から新しく「フラット35S中古プラス」の適用を開始しました。省エネ性能を含む一定の基準を満たす中古住宅について、当初5年間、金利が0.25%引き下げられます。また、「フラット35S中古プラス」はフラット35Sと併用して利用することもでき、金利の引下げ幅も大きくなります。

今後、中古住宅に対する金利優遇がより広がれば、中古住宅を購入する際にも省エネ住宅かどうかが重要な選択の基準になっていくと考えられます。

まとめ

2050年カーボンニュートラルの実現を目指して、国内のCO2(二酸化炭素)の排出量の3分の1を占める住宅分野の省エネ化の推進は重要な課題です。省エネ住宅を選ぶことで、経済的な恩恵を受けるだけでなく、この課題の解決にも貢献することにもなります。

これからのマイホームの取得において、省エネ住宅の選択は大きなポイントになるでしょう。

執筆者:橋本秋人(はしもとあきと)

ファイナンシャル・プランナー(CFP®、1級FP技能士)、終活アドバイザー、不動産コンサルタント

1961年東京都出身  早稲田大学商学部卒業後、大手住宅メーカーに入社。30年以上、顧客の相続対策や資産運用として賃貸住宅建築などによる不動産活用を担当、その後独立 。現在は、FPオフィス ノーサイド代表としてライフプラン・住宅取得・不動産活用・相続・終活などを中心に相談、コンサルティング、セミナー、執筆などを行っている。

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