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住宅ローンコラム 知っておきたい!住宅ローンの最新動向

安易な金利ミックスプランの利用で、想定内のはずが想定外に!?

2014年08月08日

住宅ローンで異なる金利タイプを組み合わせるミックスプランは、ここ数年間、安定した人気があるようです。
ミックスプランは、「金利上昇時に返済額の増加が抑えられる固定金利と、当初の低金利により毎月返済額が安い変動金利を組み合わせることで、それぞれのメリットをバランスよく取り入れることが可能です」などのセールストークが利用されていて、とても耳触りがよいのでしょう。

筆者が相談をさせていただいた方々で、金利予測に自信がないという人はミックスプランを紹介するとかなりの確率で興味を持っていただけます。

金利タイプの選択には、住宅ローンの教科書的な方法として「低金利であれば固定金利、高金利であれば変動金利」という考え方があります。しかしながら、現時点では超のつく低金利なので、固定金利を選択すべきなのに、なぜわざわざミックスプランを検討するのでしょうか。
それは、コストとリスクを同時に抑えられるように見えるからではないか、と推測しています。

毎月返済額については、固定金利よりも低い金利を採用することができれば、確実に下げることは可能ですが、その分、金利変動リスクを負ってしまいます。つまり、コスト削減に見合うだけの金利上昇リスクをカバーできる、もしくは、金利上昇が始まれば固定金利への変更を適切に行うことができるという、自分なりの読みがあるのでしょう。

では、コストとリスクの削減の程度を検証してみましょう。

前提条件:三菱東京UFJ銀行(2014年7月現在)
借入金額3000万円、借入期間35年、元利均等方式
変動金利0.775%、全期間固定金利2.07%
変動金利と全期間固定金利を半分ずつ

6年目に金利が、現状よりも1~3%上昇し、以降完済まで金利が変化しなかった場合を想定してみましょう。

(表1)変動金利
金利そのまま6年目+1%6年目+2%6年目+3%
毎月返済額 81,576円 99,904円 101,970円
11年~108,871円
101,970円
11年~127,462円
16年~128,753円
元利総支払額 3,426万円 3,869万円 4,367万円 4,956万円
(表2)固定金利
毎月返済額 100,459円
元利総支払額 4,219万円
(表3)ミックスプラン(変動:固定=50:50)
金利そのまま6年目+1%6年目+2%6年目+3%
毎月返済額 91,017円 97,181円 101,214円
11年~104,664円
101,214円
11年~113,960円
16年~114,605円
元利総支払額 3,822万円 4,044万円 4,293万円 4,587万円

金利が上昇した場合の比較をしてみれば、金利が2%上昇しなければ、変動金利が有利であり、2%以上になれば全期間固定金利が有利になります。
ミックスプランは、金利上昇によるコストアップは抑えられているものの、金利2%以上になれば変動金利と同じく全期間固定のコストを超えてしまうので、コスト削減効果はあまり大きくないように思われます。
つまり、金利が上がらないと考えれば変動金利を選択すべきだし、金利上昇を懸念するのであれば固定金利だけで十分であり、ミックスプランを採用する意義はあまりないように思えます。

では、組み合わせ方が悪いかもしれないので、同じ銀行の金利タイプごとの金利を挙げます。

(表4)金利タイプ別の金利表
金利タイプ種類当初金利固定期間終了後優遇
変動金利 全期間優遇 0.775% ▲1.7%
5年固定 全期間優遇 1.55% ▲1.7%
10年固定 当初期間優遇 1.40% ▲1.4%
30~35年 全期間固定 2.07%

すべての組み合わせの試算をすると、多くなってしまうので、変動金利、5年固定(全期間優遇)、10年固定(当初優遇)、35年(全期間固定)の4種類に絞ります。

(表5)ミックスプランの組合せ
(1)変動金利+全期間固定
 金利そのまま6年目+1%6年目+2%6年目+3%
毎月返済額 91,017円 97,181円 104,664円 114,605円
元利総支払額 3,822万円 4,044万円 4,293万円 4,587万円
(2)変動金利+10年固定
金利そのまま6年目+1%6年目+2%6年目+3%
毎月返済額 85,984円 95,837円 109,106円 125,207円
元利総支払額 3,559万円 3,943万円 4,366万円 4,845万円
(3)5年固定+全期間固定
金利そのまま6年目+1%6年目+2%6年目+3%
毎月返済額 96,524円 97,983円 104,790円 112,113円
元利総支払額 3,880万円 4,106万円 4,351万円 4,615万円
(4)5年固定+10年固定
金利そのまま6年目+1%6年目+2%6年目+3%
毎月返済額 91,491円 96,639円 109,233円 122,714円
元利総支払額 3,618万円 4,005万円 4,424万円 4,872万円

※いずれも、毎月返済額は最大値を記載している

※固定期間が終了した場合には、変動金利型に変更し、以後、完済まで金利タイプは変わらないものと
 する

日銀は2%の物価上昇を目標としているので、2%金利が上がるとすると、いずれの組合せよりも、全期間固定金利型の方が有利になることとなります。

ここで、問題とすべきは、単に金利が上昇するとコストが増加することではありません。
それは、家計によってコスト増加に対する耐性が異なるからです。筆者の考えでは、「家計が赤字になることを避けるべき」と考えているので、そのための金利上昇リスクをどこまで受け入れてよいかの限界値を計算してみます。

では、これまでの前提条件をもとに、6年目に金利上昇3%になると、毎月返済額が変動金利を選択した場合の当初返済額からいくら上昇するかをまとめてみました。例えば、(1)変動金利+全期間固定でいえば、114,605円((1)の「6年目+3%」)-81,576円(変動金利型の当初毎月返済額)=33,029円となります。
また、全期間固定型とのかい離幅を参考に加えました。金利が上昇すると仮定するなら、そもそもどのプランを選択すべきなのか、ミックスタイプ、全期間固定型と比べて検討してください。

(表6)変動金利と各プランの毎月返済額の上昇幅
 (1)変動金利+全期間固定金利(2)変動金利+10年固定(3)5年固定+全期間固定(4)5年固定+10年固定全期間固定型
6年目+3%の
毎月の返済額
114,605円 125,207円 112,112円 122,714円 100,459円
変動金利の
毎月の返済額
81,576円 81,576円 81,576円 81,576円 81,576円
上昇幅 33,029円 43,631円 30,536円 41,138円 18,883円

※(1)~(4)は表5の組合せを指す

仮にこの家計が、変動金利よりも2万円しか許容できなければ、全期間固定を選ばなくてはならないことがわかります。

では、この家計が25,000円の上昇までなら耐えられると仮定し、変動金利の組み入れ比率では調整すると次のようになります。

(表7)各プランの変動金利の組み入れ比率
(1)(2)(3)(4)
組入れ比率 21% 26%

今回は、借入金額3000万円、借入期間35年、家計のリスク許容度(金利上昇による毎月返済額の上昇を家計で黒字を維持できるためのノリシロ)が毎月25,000円、リスクシナリオとして6年目に金利上昇+3%という前提で計算していますが、(2)(4)のように、10年固定を採用すると、金利上昇リスクが許容範囲を超えてしまうため、採用すべきではないことがわかります。

また、(1)(3)の組み合わせであれば、金利が上昇しても家計が赤字にならないようにするためには、変動金利は約20~25%以下におさえる必要があることもわかります。

つまり、借入条件やリスク許容度を吟味した上で、ミックスプランの比率を判断しなければならない、ということになります。もし、家計のリスク許容度を把握せずに、ミックスプランは半分ずつとか、10年固定を固定金利のため、金利上昇リスクが少ないと考えているとしたら、家計によっては致命傷になりかねません。将来の避けるべきリスクについては、リスクシナリオを想定した上で、避けるのかどうかを判断してほしいものです。

執筆者:淡河 範明(おごう のりあき)

ホームローンドクター株式会社代表取締役。
住宅ローンアドバイザー。銀行、外資系証券会社を経て、1997年に住宅ローン専業のコンサルティング会社の同社を設立。家を購入するための資金計画づくりと住宅ローンの選択について、金融知識と実務経験を活かし、将来の生活にゆとりを築くための設計をするサポートしている。住宅ローンの著書5冊、日経電子版コラムの執筆など。

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