家を買う時のマネープラン 第2回 住宅ローンを選ぶ注意点
2014年10月08日
「一番よい住宅ローンを教えてください」
このように質問される方が多いのですが、これもとても答えにくい質問です。
もしも、一番よいというのが『自分にとって』という意味であるならば、その質問には即答できません。それは、質問している方の資金計画の具体的な内容も、家計の状態も、お金についての考え方もわからないからです。
子供がいる、いないでは、選択すべき住宅ローンが変わることがあります。子供がいれば、大学の教育費負担が大きく、それを現金で支払うため、積立を確実に継続しなければなりません。つまり、積立が安定的に継続できるような住宅ローンを選択する必要があります。
また、収入が同じでも、公務員と自営業者では、違う住宅ローンを考えなければならない場合があります。公務員はおそらく給料が安定していると考えられますが、自営業であれば収入が変動する可能性があるため、突然の収入減少に対応できるような住宅ローンの組み方を考えなくてはならないためです。
このように、家族構成や職業だけでなく、収入、支出、貯蓄の状態など、さまざまな要因で、住宅ローンの選択を変える必要があります。
従って、誰にとってもベストな住宅ローンは存在しないため、個別のヒアリングをしてからでなければ、答えられないということです。
低い金利は誰にでも適用される訳ではない
インターネットで検索すれば、金利の低い住宅ローンがたくさん見つかると思います。
住宅ローンの金利には、店頭金利(基準金利)と優遇適用金利の2種類あります。店頭金利とは、スーパーでいう定価のようなもので、基準となる金利です。優遇とは、いわゆるキャンペーンのようなものですが、定価から値引きをした特価のようなものが優遇適用金利です。この優遇は、誰でも利用できるものと、条件を満たす人しか適用できないものと、審査に応じて決まるものがあります。
例えば、「お借入金ご返済用口座を給与振込口座に指定する」となっていれば、この条件を満たさなければ、優遇は適用されません。このような優遇適用条件は銀行では一般的ですが、もしかすると、勤務先が給与振込口座を自由に指定できず、優遇が適用できないかもしれません。しかし、そういった場合でも簡単にあきらめてはいけません。会社に交渉をする、または金融機関と交渉をするなど、最優遇条件を獲得するために頑張ってみてはいかがでしょうか。交渉をしても失うものは何もないのです。
金利2%から0.1%下げた場合の効果は、借入金額3000万円、借入期間35年、元利均等方式であれば、全期間で約65万円です。ほんの少しの努力で大きなコスト削減が可能になるかもしれません。
ネットやチラシで低い金利を見つけても、記載されている適用条件などをよく確認してください。ただし、実際に何%優遇されるのかは、金融機関に直接確認するのがよいでしょう。もちろん、審査に応じて決まる場合には、「審査に出してみなければわからない」という回答がかえってくるので、その場合は審査に出しましょう。注意すべき点は、金融機関は比較されることを嫌うので、トライするのはせいぜい3社までに抑えることです。
住宅購入時は、不動産会社を通じて情報収集、審査をすることが一般的です。大手不動産会社なら多くの金融機関と提携しており、特別な優遇金利を受けられる場合もあるので、上手く活用すべきでしょう。
低い金利はずっと続かないことがある
優遇は、当初、条件を満たせば適用されますが、場合によりその優遇の適用が取り消されることがあります。筆者が調べたところ、優遇適用がなくなるパターンは主に3つです。
金融機関によっては、一度でも延滞したら優遇が取り消される、としているところさえあります。仮に、借入金額3000万円、借入期間35年、変動金利0.775%、元利均等方式とし、1年経過後に延滞をすると、どれくらいのコストアップになるか試算してみましょう。
優遇が取り消されると1年経過後の金利は店頭金利2.475%となるので、毎月返済額は、81,576円から106,109円に、元利総支払額は3426万円から4427万円となります。毎月返済額は約2.5万円、元利総支払額は約1000万円も上昇するというのは、大きなダメージといえます。このような意図せざる金利上昇は、絶対に避けるべきでしょう。
変動金利や固定期間選択型などの場合、金融機関によっては、金利タイプを変更すると優遇がなくなることがあります。例えば、変動金利では大きな優遇があったけど、固定金利選択型に変更すると、同じ優遇が得られない、または優遇が適用されなくなる、というような感じです。このような詳細な情報は、チラシやHPに記載されているのですが、目を皿のようにして探さなければ見つからないかもしれません。優遇が消えると先ほどの通り、尋常ならざるコストアップとなるので、必ず確認しておく必要があります。
優遇の条件を提示している場合、その条件を満たさなくなったら、優遇が取り消されることがあります。特に、金融機関との取引(預貯金、引落口座の指定、カードやローン等)などが条件となっているケースには注意が必要です。ただ、優遇が必ず取り消されるということではないので、個別の金融機関に確認をすべきでしょう。
金利だけでは安さは決まらない
低い金利を探し当てたからといって、それで満足してはいけません。というのは、住宅ローンのコストは、金利と諸費用から成り立っているからです。
金融機関によっては、金利と諸費用をそれぞれ自由に設定されているため、金利の設定だけ見ても本当に安いのかどうかはわからないのです。
例として、某モーゲージバンクの商品を見てみましょう。
金利と諸費用について3つのタイプが用意されています。
タイプA | タイプB | タイプC | |
---|---|---|---|
金利 | 1.65% | 2.00% | 1.95% |
融資事務手数料 | 融資額×2.16% | 54,000円 | 108,000円 |
※2014年10月現在。フラット35Sの適用はなしとします。
この表を見てもすぐには判断できません。ですので、借入金額3000万円、借入期間35年、元利均等方式という前提で試算してみます。
タイプA | タイプB | タイプC | |
---|---|---|---|
毎月返済額 | 94,075円 | 99,378円 | 98,610円 |
元利総支払額(B) | 39,511,524円 | 41,738,968円 | 41,416,359円 |
融資事務手数料(C) | 648,000円 | 54,000円 | 108,000円 |
トータルコスト (B)+(C) |
40,159,524円 | 41,792,968円 | 41,524,359円 |
※トータルコストは、本来は他の手数料も合計して計算しますが、今回は融資事務手数料のみ
としています。
今月の金利と手数料の設定では、手数料の金額とトータルコストが反比例していることがわかります。つまり、目先の金利が低いだけで選ばずに、常にトータルコストを計算して本当に安い商品であるかどうかを確認すべきです。
今回は、住宅ローンの選択に関する内容をご紹介いたしました。
- 誰にとっても「一番よい」住宅ローンは存在しない
- 低い金利は誰でも適用できるとは限らない
- 低い金利はずっと適用されるとは限らない
- トータルコストが安いことも重要
次回は、安定的な返済をするためのポイントを紹介する予定です。
ホームローンドクター株式会社代表取締役。
住宅ローンアドバイザー。銀行、外資系証券会社を経て、1997年に住宅ローン専業のコンサルティング会社の同社を設立。家を購入するための資金計画づくりと住宅ローンの選択について、金融知識と実務経験を活かし、将来の生活にゆとりを築くための設計をするサポートしている。住宅ローンの著書5冊、日経電子版コラムの執筆など。
連載バックナンバー知っておきたい!住宅ローンの最新動向
- 2015/06/24
- 2015/05/25
- 2015/05/07
- 2015/03/09
- 2015/02/16
本コラムは、執筆者の知識や経験に基づいた解説を中心に、分かりやすい情報を提供するよう努めております。掲載内容については執筆時点の税制や法律に基づいて記載しているもので、弊社が保証するものではございません。
住宅ローン新着コラム
-
毎月の返済額、返済総額、借り換え、賃貸とマイホームの比較、
繰上げ返済額をシミュレート。
住宅ローンの知識
提供:イー・ローン
2025年01月06日 現在
提供:イー・ローン