中部圏の新築マンションにおける管理費は2010年から2018年まで11,000円前後の横ばい推移が続いたが、2019年には前年比+8.6%の12,541円と大きく上昇した。修繕積立金は2010年から2011年は5,000円台前半の水準であったが、その後上昇を続け2017年以降は3年連続で7,000円を超える水準を維持している。
直近10年間(2010年~2019年)の上昇率は管理費が11,412円から12,541円で+9.9%、修繕積立金が5,045円から7,393円で+46.5%と共に大きく上昇している。月々のランニング・コスト(管理費+修繕積立金)は16,457円から19,934円で+21.1%と、10年間で3,477円の上昇となった。
また、上のグラフからは新築価格と修繕積立金の相関性が確認でき、新築価格と連動して修繕積立金が推移していることがわかる。近年における修繕積立金の値上がり要因は次の2点が考えられる。
1点目は大手デベロッパーの供給シェアが年々拡大し、相対的に維持管理コストが掛かるハイグレードマンションの比率が高まったためである。
2点目は昨今問題となっているマンション管理業界や建設業界の人手不足による人件費の高騰や建築資材の高騰などによって、建物の維持管理に掛かる費用そのものが値上がりする状況にあることが深く影響しているものと考えられる。
修繕積立基金は2011年以降9年連続で上昇しており、新築価格と概ね連動する傾向となっている。直近10年間の上昇率は334,383円から634,326円で89.7%上昇しており、修繕積立金(+46.5%)を大きく上回った。
これは修繕積立金の設定額が充分な金額に達しておらず、修繕積立基金でカバーする動きが出ているものと推察できる。
デベロッパーは販売戦略として、入居当初の月々支払額(融資返済額+ランニング・コスト)を極力抑える工夫を凝らしているため、この影響が修繕積立基金の大幅な上昇に影響したものとみられる。
戸数規模別に管理費を見ると、年によって各区分の水準にばらつきが見られるため、戸数規模と管理費には相関性がないことを確認できる。直近5年間(2015年~2019年)の管理費は戸数規模に拘わらず、11,000円前後で設定される傾向にある。
続いて修繕積立金について見ると、管理費と同様に戸数規模との相関は確認できず、規模に拘わらず修繕積立金を設定する傾向が強いと見られる。これらのことから、中部圏では管理費・修繕積立金共にスケールメリットが働いていないことがわかる。
最高階数別に管理費を見ると、2015年以降すべての年で20階以上の"タワー型"が20階未満の"非タワー型"の管理費を上回っていることが確認できる。
タワーマンションの多くは豪華な共用施設や充実したサービスが付加価値として備わっており、これらを維持管理していくためには相応のメンテナンス費用が掛かることから高額な管理費が設定されている。
修繕積立金についても管理費と同様に各年でタワー型の金額が高くなっている。また、タワーマンションの戸数規模は300戸を超えるものがほとんどであるため、スケールメリットが働いていないことも併せて確認できる。
タワー型の修繕積立金が高額になる理由のひとつとして、大規模修繕工事の施工方法が特殊であることが挙げられる。
中低層マンションでは外壁改修を行う際に「枠組足場」と言われる鉄材のパイプや板を組み合わせた足場を用いるが、タワーマンションは高層であるがゆえにこの工法を採用できない。
タワーマンションの外壁改修では屋上から足場を吊り下げて昇降させる「ゴンドラ」や、地上から建物に沿ってレールを設置し可動式の足場を組む「移動昇降式足場」を用いるのが一般的である。
これらの足場を使った修繕は工期も長期化しがちであり、また建物の形状に合わせたオーダーメイドの足場計画が必要不可欠となっている。
このようにタワーマンションの大規模修繕工事には超高層ならではの困難さがあるため、修繕積立金が高く設定される傾向にある。
名古屋市の中古マンションのランニング・コストは流通する物件個別の影響を受けやすいため、水準のばらつきが見られるものの、それぞれ一定の傾向が確認できる。
管理費について見ると、高額となる築年帯は大きく2つあり、築5年から築10年の間と築28年前後であることが確認できる。築5年から築10年の物件の管理費は11,000円前後と他の築年に比べ高めの水準となっているが、これはこれらの築年帯においてタワーマンションの流通件数が多かったことが影響している。
一方で築28年の管理費は12,633円と全築年で最も高額であり、この前後の築年についても10,000円を超える高水準となっている。この動きはこれらの年代がバブル期にあたり、高額マンションの高水準な管理費が反映された結果である。バブル期以前の築年では概ね7,000円台~8,000円台の安定した推移となっており、バブル期物件の管理費の高さが際立っている。
続いて修繕積立金について見ると、築1年から築5年までは6,500円前後の推移となるが、築5年を経過した後に明らかな上昇が確認できる。築6年では8,362円と大きく上昇しており、これ以降も築20年頃までは概ね9,000円~10,000円前後で推移している。
また、築30年以上からは再び水準の変化が見られ、概ね11,000円台~12,000円台で推移していることが確認できる。
上記の傾向から、管理費は分譲当初の設定額が竣工後も長期にわたって影響する傾向にあることがわかる。また、修繕積立金は築5年から築10年の間で初回の改定が大幅に行われ、その後も緩やかに上昇を続けることが確認できる。
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