近畿圏の新築マンションにおける管理費は2010年以降10,000円前後で推移し、2015年に11,000円の大台に乗って以降はやや下落傾向となっている。修繕積立金は2011年に坪単価と同様の動きを見せ下落したが、2012年から2018年まで7年連続で上昇し、2017年には6,000円を超えている。
直近10年間(2010年~2019年)の上昇率は管理費が10,055円から11,346円で+12.8%、修繕積立金が5,169円から6,232円で+20.6%と共に大きく上昇している。月々のランニング・コスト(管理費+修繕積立金)は15,224円から17,578円で+15.5%と、10年間で2,354円の上昇となった。
また、上のグラフからは新築価格と修繕積立金の相関性が確認でき、新築価格と連動して修繕積立金が推移していることがわかる。近年における修繕積立金の値上がり要因は次の2点が考えられる。
1点目は大手デベロッパーの供給シェアが年々拡大し、相対的に維持管理コストが掛かるハイグレードマンションの比率が高まったためである。
2点目は昨今問題となっているマンション管理業界や建設業界の人手不足による人件費の高騰や建築資材の高騰などによって、建物の維持管理に掛かる費用そのものが値上がりする状況にあることが深く影響しているものと考えられる。
修繕積立基金は2011年以降9年連続で上昇しており、新築価格と概ね連動する傾向となっている。直近10年間の上昇率は348,263円から493,873円で41.8%上昇しており、修繕積立金(+20.6%)を大きく上回った。
これは修繕積立金の設定額が充分な金額に達しておらず、修繕積立基金でカバーする動きが出ているものと推察できる。
デベロッパーは販売戦略として、入居当初の月々支払額(融資返済額+ランニング・コスト)を極力抑える工夫を凝らしているため、この影響が修繕積立基金の大幅な上昇に影響したものとみられる。
戸数規模別に管理費を見ると、2015年以降の各年で50戸未満または500戸以上の区分が最も高額であることを確認できる。また、特徴的なのは50戸以上から500戸未満の各区分の間で金額の差があまり生じておらず、管理費が最も安くなる区分についても年によってばらつきが見られるという点である。
続いて修繕積立金について見ると、戸数規模による金額の差はほとんど確認できず、どの年においても概ね6,000円前後の水準となっている。
これらのことから、近畿圏では管理費・修繕積立金共にスケールメリットが働いていないことがわかる。
最高階数別に管理費を見ると、ほとんどの年で20階以上の"タワー型"が20階未満の"非タワー型"の管理費を上回っていることが確認できる。また、最高階数が高くなるほど管理費が高額になる傾向も見られ、2017年以降は階数と管理費の上昇が完全に一致している。
タワーマンションの多くは豪華な共用施設や充実したサービスが付加価値として備わっており、これらを維持管理していくためには相応のメンテナンス費用が掛かることから管理費が高額になっている。
修繕積立金についても20階以上の階数区分のほとんどで20階未満の金額を上回っており、タワーマンションの修繕積立金が高額であることがわかる。
また、タワーマンションの戸数規模は300戸を超えるものがほとんどであるため、スケールメリットが働いていないことも併せて確認できる。タワー型の修繕積立金が高額になる理由のひとつとして、大規模修繕工事の施工方法が特殊であることが挙げられる。
中低層マンションでは外壁改修を行う際に「枠組足場」と言われる鉄材のパイプや板を組み合わせた足場を用いるが、タワーマンションは高層であるがゆえにこの工法を採用できない。
タワーマンションの外壁改修では屋上から足場を吊り下げて昇降させる「ゴンドラ」や、地上から建物に沿ってレールを設置し可動式の足場を組む「移動昇降式足場」を用いるのが一般的である。
これらの足場を使った修繕は工期も長期化しがちであり、また建物の形状に合わせたオーダーメイドの足場計画が必要不可欠となっている。
このようにタワーマンションの大規模修繕工事には超高層ならではの困難さがあるため、修繕積立金が高く設定される傾向にある。
大阪市の中古マンションの管理費は築浅時が高額となっており、築3年の16,517円が最も高いが、その後急落し築5年には10,829円となっている。築浅の管理費が高額な理由は新築マンションの分譲時の管理費設定額が年々上昇していることにある。
また、築浅で売りに出される物件の多くはキャピタルゲインを狙った投資物件であり、このような物件の多くは都心の高額マンションやタワーマンションであるということも、築浅の管理費が高額になる要因となっている。
また、築5年から築25年までは11,000円前後で概ね安定した水準となっているが、築26年から築30年は12,000円~13,000円と水準が高くなることが確認できる。これはちょうどこの年代がバブル期にあたり、高額マンションの高水準な管理費が反映された動きである。バブル期以前の物件では築46年までは概ね10,000円前後の安定した水準となっており、それ以降は下落する傾向にある。
一方で、修繕積立金は築1年の6,581円から築5年までは6,000円前後の推移となるが、築5年を境に明らかな上昇が確認できる。
築10年では8,736円(築1年の1.33倍)、築15年では10,471円(同1.59倍)もの水準に達している。築15年以上では若干のばらつきが見られるものの、概ね10,000円台~11,000円台の範囲に収まっていると言える。
管理費と修繕積立金の水準を比較すると築浅時の乖離は大きいが、築15年を経過する頃からバブル期の年代を除いて両者の水準は近しくなる傾向が確認できる。
築15年以上ではどの築年帯でも概ね10,000円前後の水準となっていることから、大阪市における管理費と修繕積立金の合計額は高くても20,000円前後を目安に設定しているものと推察できる。
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