2021年の首都圏平均は24.56とやや低下、24ポイント台半ばを維持
マンションPERが最も低かった駅は「橋本」の15.54、最も高かった駅は「自由が丘」の40.82
2021年における新築マンションPER(=マンション価格が同じ駅勢圏のマンション賃料の何年分に相当するかを求めた値)の首都圏平均は24.56(対象143駅)と前年から0.13ポイント低下したものの、依然として24ポイント台半ばという高水準での推移が続いている。
新築マンションの平均価格(70m2換算)は前年比+1.1%の7,828万円、分譲マンションの平均賃料(70m2換算)は+1.7%の260,962円と揃って上昇傾向を維持、今回は賃料の上昇率が上回ったことで回収に要する期間は前年に比べて0.1年ほど短くなった。
各駅のマンションPERを色分けした路線図を見ると、2021年において賃料見合いで新築マンション価格が比較的割安であることを示す青色や緑色の駅はJR山手線エリアでは皆無であり、基本的には例年通り東京都下や周辺3県の近郊~郊外エリアに点在している。
これらの合計シェアは今回15.4%まで拡大したが、新型コロナ禍の影響を受けた前年からの反動の域を脱しておらず、デベロッパー各社もコロナによる購入者トレンドの変化を見定めている中においてはこれらのエリアに手頃な価格帯の物件を供給することに対して慎重な姿勢を崩していない。
そのため、今回の動きを以て近郊~郊外エリアへの物件供給が本格化するとの判断は早計であると考えられる。一方、首都圏平均よりも総じてマンションPERが高い赤色は79駅と55.2%までシェアを拡大させており、2013年以降の価格高騰局面においては2018年の57.4%に次ぐ高水準を示している。
また、マンションPERの最低値が15ポイント台半ばに留まっているのに対して、最高値は3年ぶりに40ポイントを上回るなど、賃料見合いで価格水準が一段と上振れる傾向がデータにも表れている。
首都圏で最もマンションPERが低かった(割安感が強かった)駅は京王相模原線「橋本」の15.54で、賃料換算での回収期間は首都圏平均に比べて9年ほど短い。郊外ターミナル駅の「橋本」はリニア中央新幹線の停車も計画されており、最近では駅周辺において大規模な再開発が進められている。
対象の新築マンションは駅徒歩19分の大規模物件で、割安な価格に設定されている。将来的なポテンシャルを秘める当駅だが、月額賃料を見てみると対象物件は駅徒歩15分以遠にもかかわらず隣接する「相模原」より1割以上も高い。かなり強気な設定が為されている感は否めず、賃料見合いでの割安感はやや過大と捉えるのが妥当であろう。
ランキング上位20駅の中で新築タワーマンションからの賃料事例が発生していたのは半数の10駅にも及んでおり、このうち、「海浜幕張」「柏」「大船」「津田沼」「柏の葉キャンパス」「所沢」では大幅な賃料上昇が生じている。
一方、最もマンションPERが高かった(割高感が強かった)駅は東急東横線「自由が丘」の40.82で、賃料換算では首都圏平均と比較して回収に16年以上も余計にかかる計算となる。賃料見合いで最も割高な駅となってしまった主な要因は、分譲された新築マンションと賃料事例が発生していた物件のスペックに大きな乖離が生じていたためである。
分譲実績が確認された新築マンションは駅徒歩9分で平均専有面積が101.4m2の高級レジデンス、賃料事例が発生していたのは3物件で、大半は駅徒歩18分の物件によるものであり、その平均賃料は250,874円となっていた。
なお、分譲実績が確認された物件と駅徒歩時間が同程度のマンションに限れば賃料水準は325,125円で、これに基づいてマンションPERを算出すると32.37まで低下するが、首都圏平均を大幅に上回っていることには変わりない。
ランキング下位の駅において賃料水準が前年と比べて大幅に低下したケースはほとんどないことから、これらは額面通り新築マンション価格が賃料見合いで割高となった代表的な駅であると言い切っても差し支えないだろう。
東京23区の中でも千代田区・港区・渋谷区・目黒区には立地優位性や交通利便性に加えてステータス性を有する高級住宅地が存在し、これらの一等地に立地する邸宅型マンションは富裕層からかなりの人気を集めている。
最近では賃料見合いでの割高感を度外視したハイスペックな高額物件の供給も常態化してきており、「神谷町」「代官山」「白金高輪」など数年間に渡ってランキング下位に登場する駅も珍しくはない。
前年に比べて最も割安感が強まった駅はJR総武線「飯田橋」で、賃料換算で回収期間が10年以上も短くなった。割安感が大幅に強まった一因には価格水準の低下が挙げられ、2021年には非タワーのコンパクト物件も供給されていたことから、新築マンションの価格水準は1千万円以上も低下していた。
今回掲出した20駅のうち、新築マンション価格の下落率が二桁以上だったのは半数以上にも及ぶ。ただし、これは個々の物件価格が値下がりしたわけではなく、あくまで新型コロナ下で支持を集めやすくなった値頃な価格帯の駅遠物件が供給された影響によるものである。
また、駅近物件やタワー物件などから高額賃料事例が発生したために月額賃料が10%以上も上昇した駅は10駅(「飯田橋」「所沢」「金町」「大船」「柏」「検見川浜」「海浜幕張」「茅ケ崎」「志木」「西葛西」)を数える。一方、前年から最も割高感が強まった駅はJR総武線「市ケ谷」で、回収までの期間が15年以上も長期化することとなった。
月額賃料は前年から4.7%上昇したが、新築マンション価格は7千万円以上も上振れたことで賃料見合いでの割高感が著しく強まる結果となった。高順位の駅ほど価格上昇率が概ね大きくなる傾向で、前出の「市ケ谷」に至っては1億円以上の高水準にもかかわらず+72.4%と非常に高い上昇率を示している。
都心や城南エリアの人気住宅地においては、大手デベロッパーが手掛けた高級レジデンスが価格水準を押し上げている。これらの物件は戸数規模が大きいタワー物件に比べて住戸の希少性が高く、最近では販売ターゲットの富裕層からより多くの引き合いを得るために滅多に出ない"ピン立地"において著名な建築家が監修・設計した物件など、さらに付加価値を高めた高級マンションが数を増やしている。
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