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#マンションの間取り考

2020.12.23

コロナ禍でニーズも変化した!? 在宅勤務・テレワークが快適になる「間取り」

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新型コロナウイルス感染症の拡大によって在宅勤務やテレワークが推奨されるようになり、実際に多くの企業で浸透しつつあります。オフィスとは異なり、本来、家族が過ごす場所として設計された自宅で、在宅勤務やテレワークを快適に行うには、どのような間取りがいいのでしょうか。また、コロナ禍で人気のある間取りに変化は生じたのでしょうか。間取りの専門家、建築士の井上恵子さんに話を聞きました。

マンションも在宅勤務を念頭において選ぶ時代?

新型コロナウイルス感染症が流行し始める前と後で、生活様式が大きく変わりました。住まい選びにおいては「駅からの距離」や「広さ」などに対するニーズが変わったとも言われますが、「間取り」ついてもニーズの変化はあったのでしょうか。

まず、井上さんが建築士として、また間取りの専門家として日々仕事をする中で感じていることを聞きました。

「コロナ以前において、住まいは家族がコミュニケーションをとる場という位置づけでした。そのため、間取りに対するニーズとしては家族で過ごすリビング・ダイニング・キッチンを重視する傾向があり、一方で個室数をなんとか確保しようとして設けられた『独立した3~4畳のスペース』はどうやって使っていいのか分からない』という声もありました。

■コロナ以前から人気のある「区切れる」間取りの例

ところが、コロナ禍でテレワークや在宅勤務が推奨されるようになってからは、様子が変わりました。それまで使い道に困っていた小部屋が、仕事をするのに最適なスペースとして歓迎されるようになったと感じます」(井上さん、以下同)

実際に井上さんがマンション選びを手伝うときには、在宅で仕事をするかどうかを聞いて、「この間取りならここを仕事部屋にできますね」と、在宅勤務のしやすさを念頭においたアドバイスをすることもあるそうです。

"集中できること"と、"適度にリフレッシュできること"が大事

それでは、在宅勤務を快適なものにするためのポイントには、どのようなことがあるのでしょうか。

「最も大きなポイントは、"仕事に集中できること"です。

家で仕事をしていると、いろいろなものが仕事の邪魔をします。例えば、子どもがいる家庭では、子どもが悪気なく仕事の邪魔をするかもしれませんし、同じく在宅勤務中のパートナーがいれば、相手の存在が気になって仕事に集中できないことがあるかもしれません。ペットを飼っていれば、Web会議に鳴き声が入ってしまった、なんてことも。

集中できる環境に整えることとあわせて、仕事で煮詰まったときに"適度に気分転換ができる環境であること"も、ポイントの一つと言えるでしょう」

さらに、仕事の内容にもよりますが、時短や育児家事との両立のためには仕事をしながら料理などの家事をしたいという方もいるかもしれません。両立を考えつつも、機密性の高い書類や資料は、紙の書類でも、パソコン上のドキュメントでも、簡単に他の家族が見たり触ったりできない環境に置く必要があります。

「育児・家事との両立を優先する場合は『ながら家事』がしやすいことがポイントになります。家族のためのスペースと仕事のためのスペースが融合しても、家族は仕事上の部外者です。万が一のトラブルを避けるため、書類や情報の管理においてはしっかりとセキュリティを確保しましょう」

■在宅勤務を快適にするためのポイント
・仕事に集中できること
・仕事で煮詰まったときに適度に気分転換できる環境であること
・仕事内容によっては、「ながら家事」がしやすいこと
・たとえ家族であっても、機密資料を簡単に見たり触ったりできないこと

個室があればベスト、なくても3方を囲めば集中できる

それでは、具体的にはどのような間取りや家具の配置が在宅勤務に適しているのでしょうか。先ほど紹介した4つのポイントに応じて、井上さんオススメの間取りとワークスペースの作り方を教えてもらいました。

■在宅勤務に適した間取りの例

●"仕事に集中する"には、DENや壁向きのスペースがおすすめ
最大のポイントである"仕事に集中できること"にフォーカスした場合、狭くても独立した仕事部屋があれば理想です。

「新たに住まいを購入する場合、2.5畳~4畳前後のDENがあれば、小さな子どもがいても集中して在宅勤務ができます(図内おすすめ1)。

現在の住まいに在宅勤務用のスペースを設ける場合、納戸などの収納スペースに仕事用のデスクを置いて、ワークスペースとして活用する方法もあります。オープンな場所しかないという場合は、パーテーションやロールスクリーンを設けて、周りから区切ってみてください(図内おすすめ2)。どんな小さなスペースでも、3方が囲われていると、かなり落ち着きますし、集中できます」

さらに井上さんによると、デスクは部屋の内向きに置くよりも、壁向きに置いた方が集中できると言います。

「北側に窓のある壁向きで、窓から外の景色が見えればベストです。北向きなら直射日光が入らず、南からの日差しを受けた景色が適度な明るさで綺麗に見えて、疲れた目を癒してくれるでしょう」

●"適度に気分転換する"ためのワークスペースの工夫とは?
仕事に煮詰まってしまわない環境という視点で言えば、気候や天候次第ですが、屋外空間をワークスペースとして活用する方法もあります。

「ベランダやテラスなどの屋外にデスクとイスを並べて仕事をすれば、良い気分転換になります。また、共働きのパートナーと在宅勤務をしているような場合でも、一人は室内、一人は屋外とワークスペースを分けることで、より仕事に集中することができます。

バルコニーやベランダなどの屋外空間も活用したい

屋外にワークスペースを設ける場合は、ご近所からの視線が気にならないように、目隠しを設けるといいでしょう。日差しが強い場合は、パラソルなどがあればひさし代わりになります」

●「ながら家事」に適したワークスペース
仕事内容にもよりますが、仕事をしながら家事をしたいという人もいるかもしれません。例えば、仕事中にお湯を沸かす、煮物を作るといった常時見る必要はないが、長く目を離せない家事をする場合は、「キッチンの近くにワークスペースを設けるのがおすすめ」だそうです。

「キッチンの隣に家事室やカウンターがあればベストですが、なくてもダイニングテーブルをデスク代わりに使えば、動線も短く『ながら家事』が可能になります(おすすめ3)」

●セキュリティ確保の方法
家族がいる環境で仕事をする場合には、機密資料の保管などについてもケアが必要になります。

「紙の資料は鍵のかかるサイドキャビネットなどに保管するようにしましょう。また、パソコンの共用はできるだけ避け、最低でもアカウントを分けてパスワードでロックしておくことが重要です。家族間できちんとルールを作っておくといいでしょう」

収納スペースや室内の映り込みなど、在宅勤務のお悩みを解決!

ワークスペースの確保以外にも、在宅勤務をより快適にするためのノウハウやアイテムなどはあるのでしょうか。例えば、納戸や物置きがわりに使っていた小部屋など、これまで収納スペースとして活用していたところをワークスペースとして使う場合、収納が足りなくなってしまうかもしれません。

「収納が足りない場合はレンタル倉庫を活用したり、壁面を上手に利用して収納スペースを設けたりする方法があります。ワイヤー式のラックや組立式の棚などを活用して、タテの収納を意識すれば意外とスペースが生まれるものです」

壁面に収納スペースを設けるのも一つの手

また、在宅勤務のお悩みとしてよく聞かれるのが、Web会議などで室内の様子が他の参加者に丸見えになってしまったり、うっかり後ろに家族が映り込んでしまったりすることです。これらを回避するために、Web会議のシステム上で背景を設定するなどの方法がありますが、住まいとして工夫できる点もあるのでしょうか。

「壁を背にして机を配置したり、パーテーションを置いたりするほか、天井にロールスクリーンを設置して、会議のときだけ下ろして目隠しにするという方法があります。ロールスクリーンは部屋を仕切って仕事に集中する際にも使えるので一石二鳥です。

また、長時間のデスクワークは、腰に負担がかかります。短時間であればダイニングの椅子でもいいですが、できれば健康のためにも自分に合った椅子を購入すると、デスクワークがずっと快適になるでしょう」

これから家を選ぶときには、在宅勤務の可能性もふまえて部屋の使い方をイメージしながら間取りを検討したいものです。また、いまの家でも快適に仕事をするためには、屋外スペースも含めてワークスペースや収納を見直し、必要なアイテムを購入するなど、ぜひより良い環境に整えてくださいね。

井上恵子(いのうえ・けいこ)

井上恵子(いのうえ・けいこ)

住まいのアトリエ 井上一級建築士事務所主宰/一級建築士/インテリアプランナー
総合建設会社の設計部で約14年間、主にマンションの設計・工事監理、性能評価などを担当。2004年の独立後は生活者の視点から「安心・安全・快適な住まい」「間取り研究」をテーマに、webサイトでの記事執筆、新聞へのコラム掲載、マンション購入セミナーの講師として活動。
著書に「住宅リフォーム計画」(学芸出版社/共著)「大震災・大災害に強い家づくり、家選び」(朝日新聞出版)などがある。夫と子ども2人との4人暮らし。
住まいのアトリエ 井上一級建築士事務所 http://atelier-sumai.jp/

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