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#マンションの間取り考

2023.01.19

在宅ワークに使えるスペースは?マンションの間取りから読み解く

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コロナ以後、社会的に在宅ワークを奨励されることになって「夫妻それぞれが住まいの中に仕事ができるスペースが欲しい」という要望が増えています。マンションの多くは空間を効率的に活用できるよう、無駄のない間取りになっています。

その中から快適に在宅ワークができるスペースを確保するのは難しいかと思いますが、中には仕事に適した空間に生まれ変わる可能性を持つスペースもあります。そんな可能性を秘めた間取り例を紹介します。

コンパクトでもワークスペースが設けられる2LDK・52m2の間取り

【図1】ワークスペース・家事コーナーがある2LDK・52m2の間取り

【図1】は典型的な外廊下型のマンションの一室で、床面積52m2、2LDKの間取りです。ファミリー向けのコンパクトな住戸ですが、在宅ワークができるスペースに転換できそうな空間が随所に見られるプランです。

洋室(1)にはすでに造り付けの机がある約半畳のワークスペースが設けられていることに着目しましょう。この洋室(1)には収納力のあるウォークインクローゼットも備え付けられています。

そして、玄関を入ってすぐ、共用廊下に面して洗面・浴室・トイレなどの水まわりが集約していますが、洗濯機置き場のある洗面・脱衣室には家事用のカウンターが設けてあり、いわゆる家事コーナーがある点にも注目です。

・洋室(1)にある半畳の造り付けワークスペース−【図1】の(a)
【図1】の洋室(1)は、採光や通風が得られる窓があり、空調(エアコン)や照明、コンセントなど、仕事をする上で必要なものが揃っています。廊下への出入口である引き戸を閉めれば独立した個室になるため、この部屋に設けられたワークスペースはプライバシー性が高く、集中して仕事ができる環境が整っていると言ってよいでしょう。

注意点は、洋室(1)を夫婦寝室と兼用して使う場合、ベッドやドレッサーなどの置き家具とワークスペースの椅子(椅子を引くスペースも含む)が干渉しないようにレイアウトできるかどうかです。事前に確認をしておきましょう。また、パートナーが就寝する時間帯はここでの仕事はしにくいことが想定されます。夜中までかかる仕事が多い人は気を付けてください。

・ウォークインクローゼットをワークスペースに転換−【図1】の(b)
ウォークインクローゼットとは、中まで入って洋服をしまうことができる、広めのクローゼットのことを言います。洋室(1)のウォークインクローゼットは約1.4帖あり、ここに机と椅子を置いてワークスペースに活用することも可能です。ワークスペースとしては手狭ですが、前後左右の四方を壁や扉で囲われているため集中しやすいスペースともいえます。

クローゼットの扉を閉めれば夜中まで仕事をしても室内に明かりが漏れることはほとんどないでしょう。ただし、ウォークインクローゼットはあくまでも収納なので、内部に照明やコンセントがあるか、もしなければどのように灯りや電源を確保するか、検討が必要です。

【図2】仕事をするために必要なスペース(参考)

・家事コーナーのカウンターを有効活用−【図1】の(c)
【図1】の(c)の家事コーナーは、共用廊下側に小さな窓がある洗面・脱衣室内に設けられています。ここに設けられたカウンターは、アイロンがけや洗濯物を畳むなどの家事用に設けられていますが、カウンターを机代わりに使い、カウンターにあう高さの椅子を用意すれば、ワークスペースとしても活用可能です。昼間の時間、家事をしながら仕事もしたい、という働き方に向きます。

注意事項としては、洗面・脱衣室も兼ねているため家族の出入りが多いこと、照明やコンセントは備わっていても、空調(エアコン)の取り付けは想定されていないと考えられることです。暑い季節、寒い季節の冷暖房をどうするか検討が必要です。

【図1】の間取りのように、例え住戸面積が50m2台のコンパクトサイズでも、ウォークインクローゼットのような広めの収納や、カウンター付きの家事コーナーなど、ゆとりのある空間があれば、その部分をワークスペースに活用できる可能性が広がります。夫婦それぞれが別々のワークコーナーを持つことも可能です。

以前に比べ、近年では戸建住宅でも家事コーナーがある間取りはあまり見かけなくなってしまいましたが、カウンター付きの家事スペースは、仕事もできるフレキシブルな空間として、今後改めて評価されるのではないかと考えています。

どう使ったらいいの? 窓がない部屋がある2LDK・65m2の間取り

【図3】窓がない部屋がある2LDK・65m2の間取り

【図3】はタワーマンションの一室、床面積65m2、2LDKの間取りです。住戸全体の平面形がいわゆる長方形ではない特徴のある形をしており、一部に多角形の空間がありますが、そのような空間もけして無駄にせず、収納スペースなどに活用する工夫をしています。

類似している間取りを検討している方から、洋室(2)(【図3】の(a))の「窓がない居室」の使い方を聞かれたことがあります。マンションでは、この間取りに限らず、窓がなくても居室扱いになっている部屋を見かけることがあります。

窓がなくても間取り図に「洋室」などと表記されている場合は、隣接するリビングなどと随時開放できる襖や障子などで分けられていて、リビングと合わせて採光計算され、基準を満たしているケースが考えられます。基準に満たない場合は居室扱いできず、「納戸」や「サービスルーム」などと表記されます。

居室扱いとなっている場合は、照明、空調(エアコン)、コンセント等が一式揃っている可能性が高いですが、バルコニーに面していない位置にある部屋は、エアコンがつけられる仕様になっているか、念のため確認が必要です。

洋室(2)は、居室同等の設備が整っており、約4.5帖の広さがあるため、寝室や子ども室などに使うことも、図中に示したように、2人分のワーキングスペースとして活用することも可能です。

注意点は、部屋の入口である引き戸を閉めれば独立した部屋になるものの、リビング・ダイニングとは一枚の戸を隔てて緩やかにつながっており、隣室にいる家族の気配、生活音などを感じながら仕事をすることになります。また、実際には窓がないため、引き戸を閉めると昼間でも暗く、風の通り抜けも期待できないことです。隣り合うリビング・ダイニング・キッチンの使い方も含めて検討するようにしましょう。

リビングの一部にワークスペースを設けた2LDK・90m2の間取り

【図4】あちこちにワークスペース設置が可能な2LDK・90m2の間取り

【図4】は郊外にある内廊下型のマンションで、床面積90m2とゆとりがあり、約28.4帖の広いリビング・ダイニング・キッチンにアイランドキッチンを備えた2LDKの間取りです。この間取りのように十分な広さのあるリビングなら、その一角に造作家具を使って二人分のワークスペースを設けることができます(【図4】の(a))。

リビングのコーナーにワークスペースを設ける場合、リビングとの間の造作家具(仕切り)の高さ設定によって仕事の仕方が変わってきます。ある程度高く、座った時に前方の視線を遮る高さにすれば集中しやすくなり、低くすればリビングにいる家族の様子を見ながら仕事ができるなど、希望に合わせて設定しましょう(【表1】参照)。

【表1】仕切りの高さと視覚(参考)

ワークスペースがリビングの中にあるため、仕事をしながら家族とコミュニケーションを取ることができ、仕事中の孤独を感じにくく、また家事と仕事を同時にこなすこともできます。

注意点としては、家族が在宅の時や来客時は落ち着いて仕事ができないこと、会話やテレビなどの生活音、調理時の音やにおいなども、集中の妨げになる可能性があります。オンライン会議が多い人はこの位置にあるワークスペースは向かないかもしれません。

その場合、リビングに設けるワークスペースとは別に、独立性が高い洋室(1)の中にも机を置いてワークスペースを設けてもよいでしょう。その他にも、リビングと隣接しているものの扉を閉めれば個室になる洋室(2)や、大きなファミリークローゼットもワークスペースに利用できます。

ワークスペースを二か所設けることで、夫妻で同時に在宅ワークを行う際にお互いを気にせず仕事に集中することができ、またオンライン会議の時のみ個室にこもるなど、シチュエーションに合わせた仕事の仕方ができます。

・ゆとりのある空間を見つけて、外部空間も利用する
すでに住んでいるマンション住戸の中で、在宅ワークを行う場所を確保したい場合、最低限必要なものは、まずは机と椅子が置けるスペースです。必ずしも個室である必要はなく、寝室やリビングの一角や、ウォークインクローゼットや納戸などの小さな空間でも転用は可能です。

その際必要なスペース(寸法)は【図2】を参考にしてください。クローゼットや納戸など、居室以外のスペースを使う場合は、照明、空調(暖冷房)、電源の確保が必要です。

いつも家族と一緒では息がつまることもあるかもしれません。ベランダやバルコニー、テラスなどの外部空間も活用しましょう。例えばマンションのバルコニーもテーブルと椅子を用意すれば立派なワークスペースになります。

外部空間利用の注意点は、近隣からの視線が気になるとあまり使わなくなる可能性があることです。その場合は、気になる方向に目隠しフェンスなどを設けて視線を遮る工夫をしてください。

また、直射日光があたらないよう、日よけのパラソルやサンシェードなどもあるとよいでしょう。空調(暖冷房)がないため、真夏や梅雨の時期、真冬などは長い時間滞在することは難しいかもしれませんが、短い時間でも一人になれる空間があると息抜き、リフレッシュができ、仕事もはかどるでしょう。

井上恵子(いのうえ・けいこ)

井上恵子(いのうえ・けいこ)

住まいのアトリエ 井上一級建築士事務所主宰/一級建築士/インテリアプランナー
総合建設会社の設計部で約14年間、主にマンションの設計・工事監理、性能評価などを担当。2004年の独立後は生活者の視点から「安心・安全・快適な住まい」「間取り研究」をテーマに、webサイトでの記事執筆、新聞へのコラム掲載、マンション購入セミナーの講師として活動。
著書に「住宅リフォーム計画」(学芸出版社/共著)「大震災・大災害に強い家づくり、家選び」(朝日新聞出版)などがある。夫と子ども2人との4人暮らし。
住まいのアトリエ 井上一級建築士事務所 http://atelier-sumai.jp/

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