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#マンションの間取り考

2024.12.26

60m2台、家族4人が快適に暮らせる使い勝手の良い間取り

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専有面積が60 m2台とコンパクトでも4人家族で快適に暮らせる間取りがあるとしたら、外せないポイントは何でしょうか。「各部屋の広さ」に目がいきがちですが、「収納スペース」や「動線」、ライフスタイルの変化に合わせて使い方を変えられる「可変性」なども大切なポイントです。

また、バルコニーや専用庭などの「外部空間」も有効に利用したいところです。マンションの場合は共用部で必要な空間を補完できることもあるので、どんな共用施設があるかも合わせてチェックしましょう。

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対面式キッチンと独立性の高い子ども部屋を実現した間取り

【図1】は、専有面積62m2、3LDKの外廊下型のマンションの間取りです。北側に外廊下と玄関があり、南向きにバルコニーがあります。専有面積はファミリータイプとしてはコンパクトですが、子育て世代に人気の対面式キッチンを備え、子どもが2人いても成長した時にそれぞれに個室を与えられる間取りとなっています。

【図1】専有面積62m2、3LDK、対面式キッチンのある間取り
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まずリビング・ダイニング・キッチンに着目すると、12.2帖のLDKに人気の対面式キッチンを実現しています。また、キッチンの対面側にダイニングセット、バルコニー側にリビングセットと、両方の家具を置けそうです。

その最大の理由はリビング・ダイニングの「形」です。図1は縦長の長方形をしていますが、もし真四角に近かったら無駄なスペースが生まれ、どちらかの家具を置けなかった可能性があります。

3つある個室の広さは5.7帖、4.7帖、4.5帖となっており、それぞれ個室として使用するには申し分ありませんが、洋室(1)を主寝室とする場合、シングルベッド(幅約100cm、長さ約200cm)を2つ入れるのは厳しいでしょう。その場合はベッドを置かず布団を敷いて寝る、幅がコンパクトなダブルベッド(幅約140cm、長さ約200cm)を採用するなど、工夫が必要です。

全体的に見ても、トイレ、洗面所、浴室を固めて玄関近くに配置し、廊下を介して反対側に個室を設けているため、3つある個室はそれぞれ水回りから出る音をあまり気にせずいられるよい配置です。

専有面積がコンパクトな間取りでは収納の確保もひとつの課題になりますが、外廊下側にトランクルームが設けてある点に注目です。ベビーカーやサッカーボール、スキー板など主に外で使うものや長物の収納に重宝します。住戸内では、玄関や廊下の空きスペースも有効活用して共用収納を設けている点なども含め、コンパクトな面積の中でいかに収納を確保するか、よく考えられている間取りだと思います。

注意点は、洋室(3)にエアコンがつけられるようになっているか、確認をしてください。もしエアコン用のコンセントやスリーブ(エアコン配管用の穴)がなければ、空調が必要な時期にはLDK側の引き戸を常に開けておくことになり、個室としての使い勝手はよくないかもしれません。

無駄を極力省き、アイランドキッチンを採用した角住戸の間取り

【図2】は専有面積64m2、3LDK、アイランドキッチンのある間取りです。マンションの端にある角住戸のため、南側と西側の2面が外に開放され通風・採光条件に恵まれています。さらに廊下の面積を極力小さくし、その分、ほかの部屋を広くする工夫が見られます。

【図2】専有面積64m2、3LDK、アイランドキッチンのある間取り
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アイランドキッチンとは、島のようにキッチンの四周に空間がある配置のキッチンをいいます。複数人で一緒に料理をするのに向き、比較的広い住戸に採用される傾向がありますが、専有面積64m2台でも採用できたことは特筆すべきでしょう。

先ほども触れたように、廊下の面積をなるべく小さく、その分リビング・ダイニング・キッチンを広くとり、アイランドキッチンの採用を可能としたこと、またアイランドキッチンの採用によりリビング・ダイニング・キッチンの空間が一体化されることでより広く感じられるメリットも生み出しています。

3つある個室の広さは約6.4帖、4.1帖、4帖と、メリハリがついている点も良いと思います。6.4帖の部屋は主寝室に、ほかの2室は子ども部屋にと、それぞれの用途に合わせて配分されています。

アイランドキッチンのあるリビング・ダイニング・キッチンがこの住戸のコア(=中心)であり、各個室と玄関、洗面所もここを通ってアクセスするという明快な動線になっています。家族が顔を合わせる機会が増え、コミュニケーションを楽しむことができる間取りと言えます。

6畳以上の個室を2室確保、フレキシブルな住まい方ができる和室のある間取り

【図3】は専有面積68m2、3LDKの間取りです。リビング・ダイニング・キッチンに約14.6帖を確保し、3つある個室の2つが6帖以上となっていること、そのうち一室が和室であることが特徴です。和室はフレキシブルに使えることから、子どもの成長を含むさまざまなライフスタイルの変化に対応しやすい間取りといえるでしょう。

【図3】専有面積68m2、3LDK、和室のある間取り
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専有面積が68m2と70m2に近いので、各室に余裕が生まれています。洋室(1)は6.5帖あり、リビング・ダイニング・キッチンに隣接した和室も6帖を確保しています。和室にある押し入れは洋室に設けられるクローゼットより奥行きが深く、布団も収納できることがうれしいポイントです。

キッチンがリビング・ダイニングと一体ではなく、ほぼ独立型の形をしています。この形のキッチンは、キッチン内の壁面を多くとれるため、調理家電やキッチングッズを多く収納でき、壁に囲まれているので調理作業に集中しやすく、においや煙がほかの部屋に広がりにくいというメリットがあります。

リビング・ダイニング・キッチンに和室が隣接していますが、このタイプの間取りでは、和室には窓がなく、リビング・ダイニングを介して南側のバルコニーから光や風を取り込むことになります。したがって、間にある引き戸を開けておくことが多い使い方になるでしょう。

この和室は、引き戸を閉めると個室として、引き戸を開けるとリビング・ダイニングが一体になり広く使用することができます。小さな子どもがいる家庭であれば、クッション性のある畳の和室で安心して遊ばせることができるでしょう。また、洗濯物を畳む・アイロンをかけるなど家事スペースとしての活用、趣味の部屋にするなど、昼と夜での使い分けや、子どもの成長に合わせた使い分けなど、フレキシブルに利用することができます。

60m2台、家族4人が快適に暮らせる間取りのまとめ

専有面積60m2台の住戸に4人家族が暮らすには少し手狭な印象があるかもしれません。今回は子ども2人にそれぞれ個室を与えられる3LDKで、住戸の位置や形、工夫によって狭さを感じずに暮らすことができる間取りの特徴をまとめました。

・住戸の位置、柱の位置、バルコニー
住棟の端にある角住戸角住戸は窓を多くとれるので、間取りの自由度が上がり、専有面積が狭くても快適で個性的な間取りを見つけやすいでしょう。バルコニーはもちろん、広いルーフバルコニー、専用庭がある間取りであればなお良く、外部空間を第2のリビング、アウトドアリビングとして積極的に活用していきましょう。

・引き戸の多用、住戸の形
部屋の面積が狭い場合、開き戸よりも引き戸のほうが、ドアの開閉に必要な空間を有効に使えます。部屋はその形によって家具の置きやすさが変わります。一般的に真四角よりも長方形のほうが空間の無駄が少なく、家具のレイアウトがしやすいです。もし置きたい家具が決まっていたら、置けるかどうか事前にシミュレーションしてみてください。

・廊下は小さく、その分居室を広く
廊下の面積をなるべく節約してその分を居室に割り振るなど、広く使う工夫をしている間取りもあります。収納は、例え小さなスペースでも、あると便利です。どこにどんな収納があるかチェックしましょう。

・マンションの共用部分で代用する
マンションの共用施設を上手に利用して足りないものを補完することも考えてみましょう。例えば住戸内の収納が不足気味であればトランクルーム付きのマンション、家族に受験生がいる、または在宅勤務が多い仕事であれば、静かな環境で作業に集中できるライブラリーやコワーキングスペースなどの施設、お客様を多く招きたいならゲストルームやパーティルームの有無などを確認してください。

・和室はフレキシブルに使える空間
比較的新しいマンションでは和室を見かけなくなりましたが、中古マンションでは見つけることができます。和室のように多目的に使える部屋は、専有面積の狭さをカバーし、家族構成やライフスタイルの変化に対応しやすいです。

ぜひ、以上のような視点を持って間取り選びをしてみてください。

井上恵子(いのうえ・けいこ)

井上恵子(いのうえ・けいこ)

住まいのアトリエ 井上一級建築士事務所主宰/一級建築士/インテリアプランナー
総合建設会社の設計部で約14年間、主にマンションの設計・工事監理、性能評価などを担当。2004年の独立後は生活者の視点から「安心・安全・快適な住まい」「間取り研究」をテーマに、webサイトでの記事執筆、新聞へのコラム掲載、マンション購入セミナーの講師として活動。
著書に「住宅リフォーム計画」(学芸出版社/共著)「大震災・大災害に強い家づくり、家選び」(朝日新聞出版)などがある。夫と子ども2人との4人暮らし。
住まいのアトリエ 井上一級建築士事務所 http://atelier-sumai.jp/

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