普段暮らしていて、あまり気にかけることのない給湯器や給排水管ですが、老朽化して不具合が発生すれば、少なからず日常生活に支障をきたします。
そして実は、この30~40年の間に給湯・給水もかなりの進化を遂げています。そこで、今と昔の給湯器や給排水管を比較しながら、その性能の違いとリフォームのポイントを紹介します。
●1980年代のマンションの給湯器は低機能、給排水管は高リスク
・1980年代の給湯器
給湯器には、大きく分けてガス式と電気式があります。1980年代のガス式の給湯器は、給湯専用で追い焚きができないタイプのものか、湯たんぽのようにして冷めたお湯を温めなおす「給湯熱源機」を使ったものでした。
一方、電気を使った給湯器は、タンクに水を溜めて温める貯湯タンク式が主流でしたが、当時のものは湯温の制御ができず、90度近い熱湯しかつくれなかったため、水と混ぜて使う必要がありました。
・1980年代の給排水管
排水管には、鉄管や鋳鉄管、耐火仕様の塩化ビニル管(耐火二層管)などが、給水管には塩化ビニルで被覆した鋼管(こうかん、塩ビライニング鋼管)や、塩化ビニル管が使われていました。また、給湯管には、塩ビライニング鋼管や塩化ビニル管のほか、熱に強い銅管が使われていました。
鋼管の弱点は錆です。たとえ塩化ビニルで被覆していても、ネジの部分から錆が発生します。銅管の場合は、銅管自体に経年によりピンホールと呼ばれる穴が空き、水漏れが発生するリスクがあります。
さらに、当時はネジを切ったり、溶接したりといった現場作業が必要だったため、熟練工による施工が必須でした。技術が伴わないと施工不備となり、欠陥が生じるリスクもありました。
●現在のマンションの給湯器は省エネ・多機能、給排水管は軽量で錆知らず
・現在の給湯器(ガス式の場合)
現在のガス給湯器は省エネ化と、多機能化が進んでいます。進化したガス給湯器の中でも排熱を利用して熱効率をさらに高めたものが「エコジョーズ」です。また、ガス温水式の床暖房も登場し、普及しました。
・現在の給湯器(電気式の場合)
電気による給湯システムは、湯温をマイコン制御できるようになったもののほかに、ヒートポンプと呼ばれる仕組みでお湯をつくる「エコキュート」が登場し、普及しつつあります。このヒートポンプ式により、少ない電気で効率の高い運転が可能になり、電気エネルギーだけでお湯を沸かしたときと比べて、約3分の1 の電力量で済むようになりました。
・現在の給排水管
排水管は、鉄の採用率がかなり下がり、今は耐火仕様の塩化ビニル製やポリエチレン製のものが主流です。また、給水管と給湯管には、ポリエチレンや塩化ビニル、ステンレスが使われています。
これら現在の給排水管は、軽量であることや、錆の発生や穴の開くリスクが少ないのが特徴です。また、工場でつくられたものを現場で組み立てるだけなので、熟練した技術がいらず、欠陥リスクも抑えられています。
●ガス給湯器を新しくするときの注意点
まず、オール電化のマンションにガス給湯器を設置することはできません。ガスが使えるマンションであっても、ガスメーターの号数(ガスの供給量)を上げるリフォームには注意が必要です。
例えば、ガス温水式床暖房を新たに設置すると、ガスの消費量が増えます。増えたガスの消費量を賄うためには、ガスメーターの号数を上げる必要がありますが、マンション全体のガス供給量との兼ね合いもあるため、号数アップが可能かガス供給会社へ確認する必要があります。
また、ガス温水式床暖房の新設に際しては、マンション共用部にあたる外壁に穴を開けて配管を通す必要がるあるため、管理組合の許可が必要になります。
エコジョーズを設置する場合は、排水経路の確保が必要になります。共用廊下側に給湯器を設置すると、お湯を沸かす際の排水により玄関前が水浸しになってしまうからです。今は屋内のユニットバスに排水する方法もありますが、そのためにはユニットバスのリフォームが必要になります。
●電気式の給湯器を新しくするときの注意点
電気式は、タンクにお湯を溜めているため、使いすぎるとお湯がなくなってしまいます。タンクの容量は家族構成や使用状況に適したものを選ぶ必要がありますが、そもそも大型のタンクを設置するスペースがあることが前提です。
また、電気式の給湯器は電気料金の安価な夜間電力を使ってお湯を沸かすのが一般的で、給湯器用に夜間専用の契約になっていることが少なくありません。そのため、昼間にお湯を沸かそうと思っても沸かせないことがあります。電気の契約によって選べる機種が変わるため、契約形態についても確認が必要です。
大型の貯湯タンクは、搬入・設置経路についても注意が必要です。タンクが大きすぎてエレベーターに乗らない、ドアから入らないといったことがあり得ます。
エコキュートをマンションで使う場合は、共用部への影響から、基本的に交換のみで新設はできません。交換の際も大量の水を排出する必要があるため、きちんと排水処理できることが条件となります。
●給排水管を更新するときの注意点
排水管については、排水が逆流してしまわないように、適切な勾配が確保されなければなりません。また、決められた箇所には耐火仕様の排水管を採用するなど、消防法に抵触しないようにすることは大前提です。
給水管と給湯管についても、消防法に抵触しないようにすること。さらに、配管径が細いと供給できる水やお湯の量が足りなくなってしまうため、家族構成や水・お湯の使用状況から想定して、供給量に応じた管を採用する必要があります。
給湯器や給排水管は、普段はあまり目立ちませんが、快適な暮らしを送る上で非常に重要な役割を担っています。非金属管については20年以上経過していてもリフォームの必要性は低いのですが、鋼管や銅管については老朽化によって水漏れなどのリスクも考えられます。
建物の構造や規約上、希望する工事ができないこともあるため、リフォーム前に管理規約をしっかりと確認しておく必要がありますが、20年程度を目処に交換することをおすすめします。
※本記事は2021年7月末日時点の情報をもとに作成しています。
野村不動産パートナーズ株式会社
建築・リフォーム業界に携わり約20年、マンションのリフォームを数多く手がけ、リフォーム現場の最前線で豊富な経験と広い知見をもとにリーダーとして活躍中。
一級建築施工管理技士、一級管工事施工管理技士の資格を保有。
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