不動産の価値は築年数の経過と共に落ちていくものです。マンションにおいても適切な管理・メンテナンスがされていないと、劣化が進んで住まいの価値は下がってしまいます。しかしリフォームを行うことで再び価値を引き上げることが可能です。
野村不動産パートナーズのリフォーム部門に長く在籍し、最前線の現場で活躍するプロが、マンションの「設備」と「建材」にフォーカスしたリフォームのトレンドについて解説します。いま求められているマンションの設備・建材とは、いったいどのようなものでしょうか。マンションのリフォームを検討している方はぜひ参考にしてください。
マンションのリフォームにおいては、設備や床・クロス・建具などの建材だけを部分的にリフォームするケースもあります。
特に中古マンションを購入した場合、前の住人が使用していた設備に抵抗を感じ、直接肌が触れるお風呂やトイレだけでも新品に変えたいと希望する方は多いです。
お風呂やキッチンなどを単体で交換する際は、より性能が高く、手入れをしやすいタイプに変えるのが主流です。設備に関してはリフォームが必要になる時期の目安があるので、適切なタイミングで交換することでより快適に暮らすことができます。
一方、建具や床、壁だけを新しいものに交換したいという方もいます。中古マンションを購入したけれど床と建具の色にミスマッチがあるから変えたい、入居から年数が経って壁の汚れや床の傷みが目立ってきたので変更したいなど、見た目の課題もリフォームで解決することが可能です。中にはコンセントや電気スイッチ、ドアのレバーハンドルなど前の住人がよく触れていた部分だけを交換するというケースもあります。
水回り同様に直接手が触れる場所のリフォーム需要は高い傾向にあります。ただ、これらを交換する場合は付帯的に他の部分のリフォームも必要になることがあるため、結果として「建具だけ」「床だけ」のリフォームにはならないことのほうが多いです。
ライフスタイルや家族構成の変化はリフォームに踏み切るきっかけの一つです。たとえば、子どもが巣立った後に間取りを変更し、それに伴い建具や設備を変えることはよくあります。他にも育児や子どもの成長の過程でドアや壁に穴が空いてしまうといった想定外のトラブルもよく起こります。このように暮らし方や家族構成によってもリフォーム需要の高い部分は異なります。
リフォームをする上でどれくらいの費用をかけられるかを明確にしておくことは重要です。リフォームに必要な費用は部位や面積、設備や建材のグレードによって幅があるため一概には言えませんが、一般的な75m2の3LDKのマンションで全ての部屋のフローリングの張り替えをした場合、150万円くらいが目安となります。
LDKに床暖房が備わっている場合はプラス60~70万円ほどコストがかかります。既存の床暖房設備をそのまま使用できないのかと疑問に感じるかもしれませんが、フローリングを剥がした際に既存の床暖房を傷めてしまうことを前提として工事を行うため、床暖房ごと新調する必要があるのです。
床を変えたいけれど予算に限りがある場合、上手くコストダウンをする方法もあります。その一つが既存のフローリングに3~5mmくらいの薄いフローリングを上貼りするという手法です。見た目は新品なので快適に生活することができるでしょう。
この手法であればフローリングを剥がす必要がないため既存の床暖房をそのまま使用することもできます。75m2の3LDKのマンションであれば、およそ80~100万円ほどで工事ができるので、フローリングをまるごと新調するよりもコストダウンが見込めます。
先述したように、扉を変えるには枠も変えることとなり、周辺の付帯工事も必要になります。ドアの製品価格は一つあたり10~15万円ほどが相場ですが、交換作業料と枠の付帯工事費としてさらに6~7万円ほどがかかるので、合計で20万円前後のリフォーム費用が必要です。3LDKの全ての扉を変更する場合は、3室分にトイレ、洗面所、LDKに入る扉など通常5~6枚分の費用を掛け算することになるでしょう。
また、扉と枠を変更すれば周囲のクロスも変更する必要が出てくることがほとんどです。扉のデザインにあわせて巾木や床、クロスを変更したくなるかもしれません(図1参照)。どこまでリフォームするのかは、費用を決める上で大きなポイントとなるでしょう。
各メーカーでは、グレードを分けて商品展開をしています。グレードによって設備や建材の価格に差はあるものの、1番グレードが低いものだからといって質の悪いものというわけではありません。
設備や建材の品質・性能は日進月歩で、以前は年に1回程度だった新商品発表も、近年は年に2~3回行われることが増えました。同じようなグレードの製品でも10年違えば性能は全く違うと言っていいほど進化しているので、最新の設備であれば、ある程度のお手入れ性能などは担保されていると考えていいでしょう。リフォームをすること自体が価値であり、新しいものに交換することでぐっと暮らしやすくなります。
昨今、ウィズコロナにウクライナ侵攻、そして住宅ローンの金利の引き上げなど社会情勢が大きく変動しました。これらの変化はリフォーム業界にも影響を与えています。原油・原材料の価格高騰に伴いリフォーム商材の価格も上昇傾向にあり、今後は工事費や人件費も上がってくることが予想されます。
都市部を中心に新築マンションの価格が高騰し、その後を追う形で中古マンションも値上がり続けています。中古物件を購入したものの購入費用自体が高額であるため「リフォーム費用まで捻出できない」という方が増え、リフォームにかけるコストが縮小する傾向も見られるようになってきました。
そのような状況の中で、こだわりたい部分にしっかりとコストをかけたいという方が多くなっているように感じます。どこにコストをかけるかの優先順位付けがより明確になってきたとも言えるでしょう。安い資材を使って全体的にリフォームをするよりも、こだわりたい場所をしっかりと決めてお金をかけるというのが近年の傾向のようです。
近年のリフォームのトレンドの一つが"オーダーメイド"です。リフォームをする際、自分の好きなサイズ・素材・色などをすべてオリジナルでつくることができる造作工事を選択することも可能です。特に収納家具やテレビボード、ベッドルームのヘッドボードなどはオリジナルのものを取り入れたいと希望する方が多く、既製品にはない高級感や個性を打ち出せるのが魅力と言えます。オーダーメイドで施工するためコストはかかるものの、高い満足感を得られると人気です。
もしもリフォームのテイストで悩んだら、「明るめ」「暗め」など色味や明るさの好みだけでも明確にしておくことをおすすめします。また、手持ちの家具やインテリアに合う空間にしたいと考えている場合は、カラーサンプルなどを持ち帰っていただくこともあります。現在の住まいや使用されている家具、インテリア等の写真をもとにリフォームの内容を決めていくこともできます。
インターネットを使用してさまざまな情報を集めることができるので、お客様から「こんなデザインを取り入れたい」と提案を受けることも増えました。お客様自身がリフォームについて自ら学び、知識を蓄え、SNSや雑誌などを活用すれば、空間づくりのイメージを膨らませやすくなるでしょう。
野村不動産パートナーズ株式会社
建築・リフォーム業界に携わり約20年、マンションのリフォームを数多く手がけ、リフォーム現場の最前線で豊富な経験と広い知見をもとにリーダーとして活躍中。
一級建築施工管理技士、一級管工事施工管理技士の資格を保有。
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