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#マンション購入の費用

2023.12.05

住宅ローンは1人で借りる?2人で借りる?(後編)

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マンション購入にあたり、住宅ローンを借りる条件を色々な角度から検討すれば、より有利な条件を見つけられることがある。前編では、1人で借りる場合と、2人で借りる場合として(1)ペアローン、(2)連帯債務(収入合算)、(3)連帯保証(収入合算)の3パターンで違いを確認した。

(1)ペアローン:2人で1本ずつそれぞれの収入に応じてローンを組む方法。2人とも「主債務者」でお互いに相手の「連帯保証人」となる。
(2)連帯債務(収入合算):2人の収入を合算して1本のローンを組む方法。1人が「主債務者」、1人が「連帯債務者」となる。
(3)連帯保証(収入合算):2人の収入を合算して1本のローンを組む方法。1人が「主債務者」で、1人が「連帯保証人」となる。連帯保証人は債務者ではないので、債務者が返済できなくなった場合にのみ返済の義務を負う。

後編では、(1)~(3)の実務的な違いや、2人で借りることのデメリットなどを紹介する。

(1)ペアローンと、(2)連帯債務(収入合算)の違い

後編では、まず(1)ペアローンと(2)連帯債務の違いについて、実務面から解説したい。(1)ペアローンは、2人がそれぞれの借入金額を決めて契約することとなる。従って、2人の住宅ローン控除額は借りた時点で自動的に決定する。

しかし、(2)連帯債務の場合は、ローンの契約書上、2人がどのような割合で借りているのか記載されていない。よって、借りた時点で、住宅ローン控除額は自動では決まらない。決まるのは、確定申告時にそれぞれが住宅ローンをいくら借りているか申請した時だ。

それでは、借入金額の割合をどのように決めるか。実は、その決め方に定まったものがないようだ。税務署にどのように設定すれば正解なのか問い合わせても、明確な回答は得られなかった。

多くの人が、半分ずつとか、収入に比例して決めるようだが、それが正しいのかわからない。本来は資金を負担した割合で、所有権の割合を揃えるのだが、実際にどのような割合で資金負担していくのか、現時点でわかるはずもないからだ。

逆にいえば、借入金額の負担割合はある程度自由に決められるようだ。もし可能であれば、現時点の収入を前提に、住宅ローン控除が最も大きくなるようにすることもできる。

ただし、フラット35の場合、連帯債務の制限として、主債務者(この場合はAさん)の持分がゼロとなるのは、受け付けてもらえない。逆に、連帯債務者(Bさん)の持分がゼロでも受け付けてもらえる。この点を外さなければ、自由に決定できるのだ。

繰り返しになるが、自由に決定することが税務上絶対に問題にならない、ということではない。自己責任で決めてほしい。

相手方に収入がない場合の方策

場合によって、申請時点ではたまたま片方に収入がないことがある。転職活動中だったり、出産のために退職した場合などだ。近い将来に就業が見込まれるのであれば、できれば住宅ローン控除を受けられるようにしたいだろう。

しかし、銀行で(1)ペアローンを選ぶと、申請時点で収入がないため借りることができない。よって、単独債務か(3)連帯保証(収入合算)となる。これだと、債務者でない方は住宅ローン控除を受けることができないのだ。

2人が住宅ローン控除を受けられるようにする方策として、フラット35の(2)連帯債務の場合は、申請時点で収入がなくても債務者として契約することが可能だ。

2人で住宅ローン控除を受けた方がよい場合は、しばしば発生する。それは、中古住宅の場合、1人当たりの住宅ローン限度額が3,000万円だからだ。借入金額が3,000万円を超過すると、単純計算で住宅ローン控除を2人で受けた方がよいとなる。

ただ、(2)連帯債務の場合においても何もしなければ、おそらく2人目の住宅ローン控除を受けることはできない。なぜなら、確定申告時に1本の住宅ローンだからと全額を1人で借りていると申請しまうと、2人目の追加ができなくなるからだ。最初の申告時に借入金額を割り振って申告するのを忘れないようしてほしい。最初の申請で全期間の住宅ローン控除が決まるため、最初だけ1人分で申請し、途中から2人分ける、ということはできないのだ。

2人で借りるデメリット

続いて、2人で借りる場合に、気をつけるべき点について説明しよう。

・デメリット1:離婚について
インターネット上の情報などでは、よく「2人で借りる場合、離婚になれば住宅ローン並びに手続きが大変だ」と指摘されている。しかし、それは間違いだ。1人で借りたとしても、離婚したらやっぱり大変だからだ。

もちろん、1人で借りていて、離婚後、債務者が住み続けるなら手続きは簡単だ。けれども、その家に本人が住まないとなると、手続きは大変になる。住宅ローンは債務者が住むことを前提とした商品なので、離婚後に住み続けないとなると、所有権や住宅ローンの名義など、さまざまな問題を解決する必要があるからだ。

2人で借りている場合はもちろん大変だ。所有権や住宅ローンの名義など、どのように結着させ、どのように手続きを行うか、協議をして決めていくこととなる。ただし、2人で借りていて離婚後に相手方が家をでていく場合、住宅ローンの契約は(1)~(3)のような連帯債務または連帯保証の契約のままでいた方がよいこともある。

それは、相手方が慰謝料代わりに住宅ローン返済を行う場合のことだ。債務者が1人で、連帯保証人になっていなければ、万が一延滞があった場合、督促は債務者にしかいかない。債務者の返済が滞っていても、住む人にその事実が知らされないのだ。

実際、離婚後に住んでいたらいきなり差し押さえとなったケースがあった。相手方が延滞を続けたせいで差し押さえとなったのだが、住んでいる方は延滞していた事実も知らず、督促もなかったため、差し押さえは寝耳に水だった。しかも、どんなに説明しても、家を出ていかざるをえなくなったのだ。もし、督促状が自分にも来ていれば、支払いに行ったのに、ととても悔しそうだったことが印象に残っている。2人で借りたままか、連帯保証人になっていれば、督促状が届くので、差し押さえを回避できる可能性があるのだ。

・デメリット2:団体信用生命保険について
団体信用生命保険(以下、「団信」とする)は、2人で住宅ローンを借りると少し複雑だ。

ペアローンであっても、家計負担が増える!?
相手方が死亡すればその債務は消滅し、1人分の債務だけが残る。債務だけ見れば、本来は1人で返済できる金額になっているので問題ないはずだが、もう1人が死亡することにより、家計全体の収支が変化するため、必ずしも返済に余裕のある状態にはならないことが多い。

(2)連帯債務は、2パターンあり
(2)連帯債務の場合、どちらか1人だけ団信に加入するケースが多い。その場合は、団信加入者が死亡すればすべてローンがなくなるが、団信非加入者が亡くなった場合には、債務はそのまま残ることとなる。

団信加入者が死亡した場合は懸念なしだが、団信非加入者が死亡した場合には、上と同じく家計全体の収支が変化するため、生活は厳しくなることがある。

一部の銀行やフラット35等は、「夫婦連生」という団信を提供している。これは、連帯債務者のどちらが亡くなっても、住宅ローン全額が消滅するという優れものだ。もちろんその代わり団信特約料が高くなる。

注意点としてはどちらか亡くなった場合、亡くなった方の債務は保険で消滅するのでよいのだが、生き残った方の住宅ローンは、その残高の分だけ一時所得とされる点だ。住宅ローンがなくなったのはよいが、相手方の住宅ローン残高は一時的に入ってくる収入のようなものとみなされるので、所得税と住民税の負担が発生するのだ。残高やその時点の収入にもよるが、税金の負担額が数百万円になる場合もあり、家計がとても厳しくなることがある。

このような場合、夫婦連生に加入せず単独で保険に加入する場合は、非課税となるため、あえて単独で加入し、もう一人はローンに相当する死亡保険をかけておく、という方法もある。夫婦連生よりも少々コストが高くなるかもしれないが、検討してみてほしい。

(3)連帯保証は、1人で借りた場合と同じ
(3)連帯保証の債務者が死亡した時はすべて住宅ローンが消滅し、もう一方の連帯保証人が死亡した時は住宅ローンが変化しない。この場合、前述のように連帯保証人にローンに相当するような死亡保険に加入を検討してほしい。

・デメリット3:人数増加によるコスト増について
インターネット上の情報などでは、人数増加によるコスト増の指摘をしているものが多いが、おそらく情報がちょっと古いのだろうと思われる。

前編で試算した図表2を見れば、人数によるコストの違いは小さいとわかるだろう。最近では、電子契約が普及しはじめ、収入印紙がかからなくなってきた。また、例に挙げたメガバンクは、電子契約手数料は複数回の契約であっても1回分しか負担しなくよい、としているので、差が数万円でしかない。

まとめ

住宅ローンを複数で借りる場合、メリットだけではなくデメリットもある。離婚や万一のことが生じた場合にもさまざまなリスクが生じることを説明した。これらのメリット・デメリットの両面を十分に理解したうえで、自分たちに最適な形を検討するのがいいだろう。

また、今回は夫婦のみで検証したが、親子の場合は、(1)ペアローンと(2)連帯債務で借入金額にかなり差がつくことがある。理由は、親が高齢であることが多く、借入期間を短くさせられるからだ。個別に研究してほしい。

淡河範明(おごう・のりあき)

淡河範明(おごう・のりあき)

ホームローンドクター株式会社代表取締役。
住宅ローンアドバイザー。銀行、外資系証券会社を経て、1997年に住宅ローン専業のコンサルティング会社の同社を設立。家を購入するための資金計画づくりと住宅ローンの選択について、金融知識と実務経験を活かし、将来の生活にゆとりを築くための設計をするサポートしている。住宅ローンの著書5冊、日経電子版コラムの執筆など。

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