不動産投資コラム

抑えておきたい店舗・事務所物件への投資メリット・デメリット

マンションやアパートの利回りが低下すると、事務所や店舗物件への投資に目を向ける人が増えます。ハイリスクの代わりに高い利回りが期待できるからです。そこで今回は、事務所や店舗に投資するポイントを紹介します。

高利回りが魅力? 店舗・事務所物件に注目が集まる理由

店舗や事務所物件は、住居物件に比べて相対的に利回りが高いのが特徴です。しかし、一方でリスクが高いのも事実。そこで、今回は店舗・事務所に投資をするメリット・デメリット、注意点などを住居物件と比較しながら整理してみましょう。

店舗・事務所のメリットを活かせば、高収益を狙える

1.店舗・事務所のメリット (地域差があることに注意)
1)利回りが高い
2)賃料の単価が高い
3)保証金が多く運用できる
4)経費率が低い
5)原状回復の負担が少ない
6)契約自由の原則

<利回りが高い>
店舗・事務所のメリットは、第一に、前述したように利回りが比較的高いこと。物件の売出価格が上昇して利回りが全体的に低下する状況でも、一定水準の利回りが期待できます。

<賃料単価が高い>
店舗・事務所は、住宅系に比べ、床面積当たりの賃料単価が高いのです。住宅の入居者は「居住サービスを消費する」だけですが、店舗・事務所のテナントは「モノやサービスを売って収益を生み出す」ため、より高い家賃設定が可能といえます。

<保証金が多い>
住宅の保証金は家賃1~2ヵ月分が一般的で、最近は縮小傾向にあります。店舗・事務所の場合は3ヵ月や半年、1年分というケースも少なくありません。また、預かった保証金の一部は償却され、退去時に返還しなくてもよいケースもあります。その分を運用して利殖することができるのです。

<経費率が低い>
これは、ビル一棟全体を一つの事業者に一括貸しする場合に限られます。一棟貸しの場合、清掃や設備点検、室外部分の照明代などがテナントの負担になることが多く、オーナーは支出する必要がありません。住宅だとオーナー負担となる共用部の維持費や光熱費が掛からないのです。

<原状回復の手間・費用が不要>
テナントが退去する際の原状回復は、賃貸住宅の場合、国土交通省の「原状回復ガイドライン」や東京都の「東京ルール」などによって決められており、故意・過失による損傷以外の自然損耗などの補修費は、貸す側(オーナー)が負担しなければなりません。

しかし、店舗・事務所の場合は、通常はスケルトン渡しのため、退去時には、テナントの負担で原状回復し、スケルトンの状態に戻して返還するのです。そのため、オーナーが原状回復に費用をかける必要がありません。この点においても、店舗・事務所のほうが経費率が低くなるといえるでしょう。

店舗・事務所のデメリットはリスクの高さ

2.店舗・事務所のメリット
1)空室リスクが高い
2)賃料の変動が大きい
3)テナント募集にノウハウがいる
4)金融機関の融資条件が厳しい
5)地震保険に加入できない

<空室リスクが高い>
店舗・事務所は居住用の物件に比べ、空室リスクが高いのが最大のデメリットです。「住まい」は、景気が悪くなったからといってすぐに引っ越したりはしません。しかし、店舗や事務所の「撤退(閉店)」「移転」は柔軟に行われます。住宅に比べて景気動向などに左右されやすいのです。

<賃料の変動率が大きい>
住宅でも家賃の上下はありますが、通常は物価上昇率に近い範囲、2年で5%~10%程度でしょう。しかし店舗・事務所の場合は、需給バランスによって大きく変わり、5割、10割の変化もあり得ます。なお、大きく下がるおそれがある一方で、大幅に値上げできる可能性もあります。

<テナント募集にノウハウがいる>
ひとくちに店舗・事務所といっても、さまざまな業種・業態があり、それぞれのテナントごとに、求められる立地や建物の構造・設備が異なります。

特定の業種・業態に合わせた作りになっている物件が一度空いてしまうと、他の業種・業態への転換が難しく、新たなテナントが入るまでに時間がかかる場合があります。住宅よりも、入居者募集のノウハウ、テクニックが必要といえるでしょう。

<金融機関の融資条件が厳しい>
店舗・事務所に対する金融機関の審査は住宅系よりも厳しく、担保掛け目も低めに設定される傾向があるようです。審査にも時間がかかります。その理由は、物件の担保力やオーナーの資金力・実績の他に、テナントの属性まで詳しく調べるケースが多いからです。いわゆる反社会的勢力ではないか、テナントとなる企業の経営状態はどうかなども審査されることがほとんどです。なかには、店舗専用、事務所専用の一棟ビルには融資しない金融機関もあります。

オーナー個人でテナントの属性まで調べることは難しいでしょう。その点で、金融機関の融資審査が厳しいのは、ある意味ありがたいことでもあります。審査に通る物件なら、ある程度は信用できるといえるのではないでしょうか。物件を仲介する不動産会社でも、調査をおこないアドバイスをするケースがあります。

<地震保険への加入ができない>
店舗・事務所は、地震保険には加入できません。地震保険は、専用住宅か併用住宅が対象です。住宅以外の事業用物件の場合は、店舗総合保険などに「地震危険補償特約」を付けるタイプもありますが、保険料や補償内容は個別に審査されます。

住居併用タイプがおすすめ

店舗・事務所には、以上のようなメリット・デメリットがあります。これらを踏まえて魅力を感じるなら、投資対象の選択肢のひとつに加えてもいいでしょう。経験上、店舗・事務所に投資するのは、住宅系の投資物件を複数所有している、不動産投資経験者が多いようです。

中高層のビル全体が店舗・事務所になっているタイプはリスクが高いため、初心者の方にはお勧めできません。あえて店舗・事務所の高収益性を目指したいなら、2~3階建て以下のロードサイド型店舗、ないしは、タワーマンションの低層階にある区分店舗などを検討すると良いかもしれません。5~10年は安定した経営が見込めるテナントが入っていれば、リスクもそれほど大きくないのではないでしょうか。

初心者の方の場合には、1~2階が店舗や事務所で、2~3階以上が居住用という住宅併用タイプもおすすめです。店舗・事務所で高収益を得ながら、比較的安定した居住用部分を確保することによって、空室リスクを減らせるからです。住宅併用なら地震保険にも加入できます。

もちろん、住宅併用でも、店舗部分に入居するテナントの安定性は大切です。短期間で退去し、1フロアが長期にわたって空きテナントとなっては、マイナスが大きくなってしまいます。安定した入居を期待するには、立地がポイントになります。ここで言う立地の良し悪しは、単に都心に近い繁華街であればいいというわけでもありません。

郊外のターミナル駅から徒歩20分以上という立地でも、1階店舗の入居者だけが一括契約できる10数台分の駐車スペースが差別化要因となって、20年以上もテナントが入居している例もあります。

店舗・事務所物件というのは、基本的に借り手が商売をするためのものです。そのため、ビジネスとして賃料を交渉することも可能ですし、一方で、家賃水準やテナントの出入りは景気の波に大きく左右されます。立地により大きく変わりますが「ハイリスク・ハイリターン」といえます。とはいえ、中には上述した住居・店舗併用ビルのような物件も潜んでいます。住居系の物件とは視点を変えれば、「ミドルリスク・ミドルリターン」の物件を見つけることもできるかもしれません。

宮澤 大樹
宮澤 大樹

宮澤 大樹野村不動産ソリューションズ株式会社 プライベートコンサルティング営業部

1998年から不動産業界に携わり、首都圏のマンション販売・投資用マンションの販売を経験。 その後、2005年より主に一棟マンション・ビル等の投資事業用不動産を中心とした仲介業務に従事。

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