不動産投資コラム

積算価格とは?実勢価格との違い・計算方法・用途をわかりやすく解説

積算価格とは?実勢価格との違い・計算方法・用途をわかりやすく解説

不動産価値を判断する査定価格には「積算価格(せきさんかかく)」や「収益価格」があります。
これらの価格は用途や表現したい内容に応じて使い分けますが、実勢価格(一般的な不動産流通価格)とは異なる価格です。
この記事では、積算価格の意味や用途、および実勢価格との違いを解説し、計算シミュレーションを例示しています。

積算価格は不動産価値を判断する指標

積算価格は不動産の価値を判断する指標のひとつで、コスト面にフォーカスした評価額です。具体的にどういうものか、用途や他の指標と比べながら詳しく見ていきましょう。

1.積算価格とは

積算価格とは、「土地価格と建物価格をそれぞれ異なる方法で計算し合算した評価額」のことです。
土地の評価は、主に「路線価」「公示価格」「固定資産税評価額」を利用して評価されます。
建物の評価は、新築価格から建物の法定耐用年数と新築後の経過年数を加味して計算されます。このような方法を「原価法」といいます。

土地価格は、毎年7月頃に国税庁が発表する「路線価」に土地の面積を掛けて計算します。なお、土地の評価はその土地に繋がる道路の数や道路幅、土地の形状などに影響を受けるため、土地の状況にあわせてさらに価格の補正を行います。
※路線価は実際の土地取引相場価格よりも低く設定された指数です。土地の実勢価格ではない点にご注意ください。

建物価格は、まず木造や鉄筋コンクリート造など、建物構造による建築単価に延床面積を掛け合わせて新築価格を求めます。次に、建物の法定耐用年数と新築後の経過年数を加味して再調達価格を計算(原価法)します。

詳しい計算方法やシミュレーションは後ほど解説しますので、概略を押さえておきましょう。

2.積算価格のおもな用途

積算価格は、融資を受ける場合に、金融機関が行う担保査定の根拠として用いられます。

一般的に債務者がローンを返済できなくなると、金融機関は担保不動産を差し押さえて競売し、売却金から資金を回収します。

金融機関が担保査定で積算価格を利用するのは、積算価格は路線価をベースに算出しているからです。多くの不動産評価には公示地価が用いられますが、公示地価よりも低く定められることが多い路線価が算出根拠のため、不動産を競売して回収できる資金額の目安になり、担保不動産の評価に適しているのです。

つまり、積算価格は金融機関から融資を受けられる金額の目安として考えることができます。ただし、積算価格のみで融資金額が決まるわけではありません。あくまで目安であることに注意しましょう。

3.公的指標の種類

積算価格の計算で用いられる路線価以外にも、下表のような公的な土地評価指数があります。

発表主体 発表時期(基準日) 相対評価水準 用途
公示地価 国土交通省 毎年3月
(1月1日時点)
多くの不動産評価の基礎
基準地価 都道府県 毎年9月
(7月1日時点)
公示地価と同等 公示地価と同様の役割
路線価 国税庁 毎年4月
(1月1日時点)
公示地価の80% 相続税や贈与税の算定基準
固定資産税評価額 自治体 3年ごとに評価替え
(1月1日時点)
公示地価の70% 固定資産税や登録免許税の算定基準

公示地価は全国の土地価格の基準となる重要な指数で、公示地価の動向は、経済市況や物価変動などとも密接に関わり合っています。

公示地価は実勢価格(一般的な売買価格)と同等、もしくは少し低い額と解釈されるのが一般的です。

4.他の不動産価値の指標、収益価格

収益価格は、収益性に着目した評価指標です。不動産を賃貸した場合に1年間で得られる収益と、利回り率から建物価格を計算する「収益還元法」という方法で計算します。

例えば、年間収益が1,000万円で運用利回りが10%の建物の収益価格は下記のように計算します。
収益還元法による建物価格=1,000万円÷10%=1億円(収益価格)

積算価格の計算方法とシミュレーション

積算価格の計算を、実際にシミュレーションしてみましょう。土地と建物に分けて行います。

1.土地の積算価格の計算方法

対象土地の路線価が100万円/m2、面積が100m2の場合の土地価格を計算します。

土地価格=路線価100万円×100m2=1億円

さらに、土地の状況が下表のようである場合、上記価格に補正を加えます。

土地の状況 補正の方法
2つの道路の角地 土地価格を10%増やす※1
2つの道路に挟まれる より高い路線価を採用※2
旗竿地・不整形地 土地価格を30%減らす※3
  • ※1 2つの道路が交差する角地は、見栄えや利用価値が高いため土地価格を高く評価します。
  • ※2 2つの道路に挟まれた土地は、土地価格を計算する際に使用するのは高いほうの路線価です。
  • ※3 旗竿地や不整形地は、通行しづらく大きな建物が建たないことがあるため土地価格を低く評価します。

なお、旗竿地とは細い通路状の土地の奥にまとまった土地がある形状で、不整形地とはきれいな四角ではなくいびつな形状のことです。

例えば今回の土地が角地なら、補正後の土地価格は10%を増やし、1億1,000万円になります。
なお、公示地価や路線価はパソコンやスマートフォンから誰でも無料で調べることができます。公示地価は土地総合情報システム、路線価は「財産評価基準書路線価図・評価倍率表」をご覧ください。

2.建物の積算価格の計算方法

建物価格は、都道府県ごとに異なる工事費用に、建物の延床面積を掛けて計算します。

異なる地点の工事費用例は下表をご参照ください。

工事費用表(3地点を抜粋)
1m2当たりの工事費用
構造 東京 北海道 沖縄
木造 17.3万円 18.7万円 18.0万円
鉄骨造 30.9万円 25.6万円 27.9万円
鉄筋コンクリート造 32.7万円 26.5万円 26.5万円
鉄骨鉄筋コンクリート造 36.4万円 30.4万円 28.4万円

引用:地域別・構造別の工事費用表(1m2当たり)【令和4年分用】|国税庁

建物が鉄筋コンクリート造、延床面積が120m2の新築場合には、下記のように計算できます。

東京にある建物なら、建物価格=建築費32.7万円×延床面積120m2=3,924万円、
沖縄にある建物なら、建物価格=建築費26.5万円×延床面積120m2=3,180万円 です。

3.不動産積算価格の計算シミュレーションと解説

上記の説明をもとに、以下の内容で積算価格を計算してみましょう。

対象土地:路線価が100万円/m2、面積が100m2で2本の道路が交差する角地
対象建物:木造一戸建て、延床面積200m2、築10年、工事費用表および耐用年数は下表の通り

工事費用表(全国平均)および法定耐用年数
構造 1m2当たりの建築費 法定耐用年数
木造 17.3万円 22年
鉄骨造 25.6万円 34年
鉄筋コンクリート造 26.5万円 47年
鉄骨鉄筋コンクリート造 28.4万円 47年

引用:地域別・構造別の工事費用表(1m2当たり)【令和4年分用】|国税庁
引用:主な減価償却資産の耐用年数表|国税庁

土地価格=路線価100万円×100m2=1億円
角地は10%増しのため、1億円×110%=1億1,000万円と補正

建物の新築価格=建築費×延床面積=17.3万円×200m2=3,460万円
残耐用年数割合=(耐用年数ー経過年数)÷耐用年数=(22年ー10年)÷22年=約0.55
建物再調達価格=建物の新築価格×残耐用年数割合=3,460万円×約0.55=約1,903万円

従って、積算価格=土地価格+建物価格=1億1,000万円+約1,903万円=約1億2,903万円 です。

まとめ

積算価格は金融機関の担保査定によく使われますので、検討している物件の融資可能額の目安にすることができます。
土地価格が道路との位置関係や地形によって影響を受けたり、建物価値が構造や都道府県によって異なったりすることを知っていると、物件選びのときにも役立ち、高値で買ってしまうリスクを減らすことにも繋がります。また所有物件の不動産評価額を様々な指標から把握することは売却時にとても大切です。
不動産価値がどのように評価されるのかを理解しておけば、不動産価格を正確に判断する目が養われるでしょう。

柴田 敏雄
柴田 敏雄

柴田 敏雄宅地建物取引士、管理業務主任者

司法書士事務所に2年、大手不動産管理会社に5年、個人顧客を中心に不動産賃貸・売買の仲介営業会社に7年間従事。また、外資系金融機関にも2年間従事し個人顧客へ金融資産形成や相続税の節税アドバイスなどを担当。現在は不動産/金融業界での経験を活かし、記事の執筆にもあたっている。
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