1. 住宅用地なら負担減
個人が賃貸住宅の運用をする場合には、固定資産税はコストになります。そこでテーマの一つになるのが、固定資産税の住宅用地の課税標準の特例(地方税法349条の3の2以下「特例」という。)の適否です。
固定資産税において「住宅用地」というのは住宅の敷地と認定された土地のことです。その面積が200m2までの小規模住宅用地である場合には、固定資産税の課税標準が最大で固定資産税評価額の6分の1になります。都市計画税も同様に、課税標準が最大3分の1になります(地方税法702条の3)。すなわち住宅用地の認定は税額に直結する重要なファクターになっているわけです。
2. 駐車場の問題点
住宅の付属駐車場も住宅用地と認定されれば、特例の適用があります。ただし付属駐車場は住宅と一体として利用されている場合には、その敷地は「住宅用地」と認定される仕組みです。このため付属駐車場であっても外部の人に貸付けている場合は「住宅用地」とは認められません。
3. 裁判になった事例
こうしたなか最近、併用住宅となる有料老人ホームの付属駐車場の敷地が「住宅用地」に該当するかどうかをめぐり、争いになった事案がありました(東京地裁平成28年11月30日判決)。
判決によると、原告Aさんは平成25年、介護付き有料老人ホーム・高齢者福祉施設などの用途の建物を自分の土地に新築し、老人ホーム運営業者Bとの間で30年間貸付ける契約をしました。施設には問題になった駐車場が9か所あり、その面積は全部で140m2ほどでした。ただし入居者の中には、自分で自動車を運転し、問題の駐車場に駐車する人はいなかったということです。
都税事務所は、平成26年6月に問題の駐車場の敷地は固定資産税等の「住宅用地」には該当せず、残りの敷地は併用住宅の敷地に当たるとして賦課決定をしたので、Aさんは審査請求、裁判に及んだものです。
Aさんは、およそ「住宅用地とは、専用住宅又は併用住宅を維持し又はその効用を果たすために使用されている一画地の土地をいうとされており、駐車場もこれを基準として住宅用地に該当するかを判断すればよく、居住部分に居住している者が利用する部分か、それ以外の者が利用する部分かを特定して判断をするものではない。」と主張しました。
これに対し東京都は、「都資産税部長通達(平成27年3月20日付け26主資評第352号)において、「第一は、駐車場等が当該住宅の附属的な施設と認定できることである。したがって、専ら当該住宅の居住者のための施設であること」等の要件を定めている。「居住者のための施設」とは、居住者自らが利用する施設を意味するものである。」と反論しました。
裁判所はまず、「特例第1項によれば、住宅用地に該当するには、専用住宅又は併用住宅の「敷地の用に供されている土地」であることを要するところ、「敷地の用に供されている土地」であるかどうかについては、(中略)社会通念に従い、その土地が専用住宅又は併用住宅を維持し又はその効用を果たすために使用されている一画地の土地であるかどうかによって判断すべきものと解するのが相当である」と指摘しました。その上で裁判所は、各駐車場について立ち入り、道路に至ることが可能な状態にあると認め、その利用状況についてもおよそ次のように認定しました。
- ア、実際上、来訪者用駐車場として利用され、駐車場が空いている限り、利用され得る。
- イ、入居者が買い物や外部の病院に行くためタクシーを呼んだりするのに利用されることがある。
- ウ、訪問診療の医師、救急車、リネン、清掃、薬局等の関係者等の駐車場としても利用されている。
裁判所は、こうした認定事実をもとに駐車場が老人ホーム等の家屋と「形状上一体のものとして利用されていることは明らか」と判断しました。東京都側の主張について裁判所は、「駐車場が住宅用地に該当するには専ら当該住宅の居住者のための施設であること、更には、専ら居住者自らが利用する施設であることを要するものと解すべき法令上の根拠はなく、(中略)併用住宅の非居住部分の利用者が利用している駐車場であるからといって、併用住宅の「敷地の用に供されている土地」の該当性が直ちに否定されるものではないというべき」として採用しませんでした。なお、東京都は判決を不服として控訴しています。