1.土地と道路の間にある工作物等
土地と接する道路の中に、植樹帯や歩道橋といった工作物や施設等があって、車の出入りなどを遮っているケースが見られます。その場合、相続税の土地評価においては、いわゆる10%評価減の取扱いの適用が検討されることがあります。
この「10%評価減」は、付近の土地の利用状況と比較して著しく利用価値が低下している土地の部分に適用できるものとされています。国税庁のホームページでは例示として次のように記載があります。
(1)道路より高い位置にある宅地又は低い位置にある宅地で、その付近にある宅地に比べて著しく高低差のあるもの
(2)地盤に甚だしい凹凸のある宅地
(3)震動の甚だしい宅地
(4)(1)から(3)までの宅地以外の宅地で、騒音、日照阻害(建築基準法第56条の2に定める日影時間を超える時間の日照阻害のあるものとします。)、臭気、忌み等により、その取引金額に影響を受けると認められるもの
ただし、こうしたマイナス要因が路線価又は固定資産税評価額又は倍率に反映されている場合には、重ねて減額が認められることはありません。
2.植樹帯が問題になった事例
最近、相続税評価の対象となった土地に接する道路の歩道に植樹帯(道路構造令2条18、11条の4)等があったケースで、上記の10%評価減の適用の是非が問われた事例がありました(国税不服審判所(以下審判所という。)令和4年2月1日裁決)
問題となった相続財産の土地(本件宅地)は、2つの道路に接するいわゆる角地(約180m2)ですが、一方の道路(普通商業・併用住宅地区、路線価約100万円)とは段差があるほか、道路の歩道と本件宅地との間に植樹帯があるケースでした。
このため、相続人はもはや角地とはいえないとして、植樹帯のない道路(普通住宅地区、路線価約66万円)を正面路線として土地評価し申告しました。
しかし税務署は路線価方式の土地評価において問題の土地は角地として評価し更正したため、相続人が、①問題の土地が角地かどうか、②段差や植樹帯等があるため10%評価減が適用されるべきかどうかを巡り審判所に審査請求したものです。
ここでは、上記の10%評価減の適用を巡る争点に絞ってお伝えします。
3.審判所の判断
審判所は、前記10%評価減の取扱いを合理的と認めたうえで、段差については、道路面の他の宅地と共通する地勢から路線価を決める際に考慮され、著しい高低差があるとは言えないと認定しました。
また、植樹帯等の工作物については「(植樹帯等のある道路に)接する一連の宅地の利用状況として、宅地の容積率が400%であることを反映した中高層マンション又は事務所美ル等が建ち並んでおり、本件宅地についても同様に利用することが可能であると認められることから、植樹帯及び本件横断歩道の存在を前提にしても、本件宅地の利用価値を著しく低下させる事実は認められない」と認定し、10%評価減の適用を認めませんでした。
なお、土地への車の出入りを制限する植樹帯については、道路法24条(道路管理者以外の者の行う工事)の規定などにより、国や都道府県などの道路管理者の承認等を得て、移設等を行うことができないわけではなさそうです。上記事例は、角地であることも含めて、付近の土地の利用状況と比較して著しく利用価値が低下しているとは認められなかったといえそうです。
4.過去の事例では
過去には、国道沿いの近隣商業地域の土地約800m2で、税務上は普通商業・併用住宅地区にある土地について、土地の前面に歩道橋などがあったため、税務当局側の方で、10%評価減の適用を認めたケースがあります(審判所、平成17年8月23日)。
それによると、審判所は「本件土地の周辺の利用状況をみると、国道(中略)沿いに、中低層の店舗、事務所等や住宅が混在する小規模の店舗、事務所等の低層の建物の敷地に利用されている状況にあり、また、本件路線に横断歩道橋施設が設置されていることによって都市計画上の用途地域や容積率等の利用規制を受けている事実もない」とは認定しています。
しかし評価土地へ出入りする手段が前面道路を利用する以外にない場合に利用価値の低下を認めています。植樹帯の事例では、その状況からそこまでの利用価値の低下が認められなかったといえそうです。