不動産投資コラム

所得税の特定の基準所得金額の課税の特例~極めて高い水準の所得に対する負担の適正化~

【問】
甲さんは、昭和60年に設立し、発行済株式の全部を保有するとともに代表取締役として経営していた㈱A(A社)の株式の全部を、令和7年中に某上場会社に全て譲渡する予定です。この譲渡により甲さんには、株式譲渡益が約15億円生じる見込みです。甲さんのように高額の株式譲渡益が生じた場合、所得税の追加的な課税がされると聞きましたが、その概要について教えてください。

【回答】
1.結論

税負担の公平性を確保する観点から、令和7年分以後の所得税につき、極めて高い金額の所得に対する最低限の負担を求める措置として、「特定の基準所得金額の課税の特例」(以下「本特例」)が導入されています。株式等に係る譲渡所得等の金額や、土地建物に係る長期譲渡所得の金額が高額となる場合には、本特例の適用の有無について確認が必要です。

2.解説
(1)本特例の概要

基準所得金額(下記(2)参照)が3億3,000万円を超える場合、[1]の算式で計算した金額から[2]の基準所得税額(下記(3)参照)を控除した金額に相当する所得税が追加で課されます(租税特別措置法(措法)41条の19、改正法附則36条)。
[1](その年分の基準所得金額-3.3億円)×22.5%
[2]その年分の基準所得税額

(2)基準所得金額の意義
「基準所得金額」は、措法41条の19第2項に定める所得となりますが、具体的にはその年分の所得税につき申告不要制度(注)を適用しないで計算した所得金額(特別控除額控除後の額をいい、源泉分離課税の対象となる利子所得の金額や、NISA制度等により非課税とされる金額を含まない。)の合計額をいいます。
例えば給与所得が含まれる総所得金額や、退職所得の金額、土地建物等の長期譲渡所得の金額(特別控除の適用がある場合には、その控除後の金額)、土地建物等の短期譲渡所得の金額(特別控除の適用がある場合には、その控除後の金額)、上場株式等に係る譲渡所得等の金額、(上場株式等以外の)一般株式等に係る譲渡所得等の金額などが、基準所得金額に含まれます。
(注)「申告不要制度」とは、源泉徴収あり特定口座内で上場株式の配当(配当所得)を取得した場合や譲渡による所得が生じた場合に、確定申告が不要とすることができる特例(措法8条の5、37条の11の5)をいいます。

(3)基準所得税額の意義
「基準所得税額」は、その年分の基準所得金額に係る所得税の額(外国税額控除を適用しない場合の所得税の額をいい、附帯税及び本特例により課される所得税の額を除く。)をいいます(措法41条の19第3項)。

(4)本特例に係る所得税の計算例
甲さんのA社株式を譲渡した令和7年分の給与所得の金額が1,000万円、所得控除の合計額が200万円、A社株式の譲渡に係る一般株式等に係る譲渡所得等の金額が15億円、A社からの退職金に係る退職所得の金額が4,000万円の場合、本特例に係る所得税の計算は以下の通りになります。

①1,000万円+4,000万円+15億円>3.3億円 ∴本特例の適用あり。
②(1,000万円+4,000万円+15億円-3.3億円)×22.5%=2億7,450万円
③給与所得の金額1,000万円、所得控除の合計額が200万円の場合の総所得金額に対する所得税額 (1,000万円-200万円)×23%-63.6万円=120.4万円
④一般株式等に係る譲渡所得等の金額 15億円に対する所得税額(税率15%)=2億2,500万円
⑤退職所得の金額に対する所得税額 4,000万円×40%-279.6万円=1,320.4万円
⑥③+④+⑤=2億3,940.8万円
⑦追加で課される所得税額 ②-⑥=3,509.2万円
(2(1)~(3)の参考資料:財務省「令和5年度税制改正の解説」P234~240)

税理士法人タクトコンサルティング

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