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東京都心6区の中古マンション市場 現状と見通し
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Ⅰ.区別取引額と取引数
24年度上期の取引額は前期比横ばいの1955億円、取引数は日経平均株価の急落も受け減少
中古マンションの取引額はほぼ横ばいとなりました。レインズ1によると、2024年度上期2に東京都心6区3(以下「都心6区」)で取引された中古マンションの取引額は1955億円、23年度下期の1943億円とほぼ同水準となりました。
図表1は、都心6区の中古マンション取引額の推移です。取引額は21年度下期から23年度下期にかけて継続的に増加し、今期も調査開始以降の増加基調を維持しました。内訳をみると、港区が同△9.3%の547億円、新宿区が同△3.3%の292億円、文京区が同△8.2%の185億円と減少した一方、千代田区が前期比+0.4%の102億円、中央区が前期比+11.0%の505億円、渋谷区が同+15.8%の325億円と増加しました。
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取引数は日経平均株価の急落も受け減少しました。24年度上期の取引数は2,170件、前期を6.3%下回りました(図表2)。月別の内訳をみると、6月以降は前年同月比マイナス、日経平均株価が急落した8月は前月比△17.0%・前年同月比△9.6%の302件、影響がより顕在化した翌9月は前年同月比△16.7%の348件となりました。以上の結果、21年度下期以降継続的に増加した取引数は、今期において調査開始以降初めて減少しました。
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1 国土交通大臣から指定を受けた不動産流通機構が運営しているコンピューターネットワークシステム
2 2024年4月~9月
3 千代田区、中央区、港区、新宿区、渋谷区、文京区
Ⅱ.区別成約単価と取引市場の参加者動向
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成約単価続伸も在庫成約倍率はやや上昇気配、需給バランスの動向に留意
成約単価は引き続き上昇しました。図表Ⅲ左図は、都心6区中古マンションの平均成約単価です。21年度下期以降、継続的に上昇した平均成約坪単価は、今期、前期比+7.1%の509万円となりました。
内訳をみると、平均成約単価は全6区で上昇しました。港区の平均成約坪単価は前期比+6.7%の591万円となりました。港区では内陸部・湾岸部ともに単価が上昇しています。虎ノ門ヒルズレジデンスでは、棟内における過去最高の成約単価とみられる取引が成立しています。中央区の平均成約坪単価は前期比+12.1%の519万円となりました。勝どき駅・月島駅至近のタワーマンション高層階の複数住戸が坪あたり1000万円超で取引されるなど、湾岸部を中心に成約単価が上昇したとみられます。渋谷区の平均成約坪単価は前期比+8.7%の550万円となりました。神宮前・広尾・恵比寿等で坪あたり1000万円を超える多数の取引がなされ、平均成約単価が上昇する要因となりました。その他、千代田区が前期比+2.8%の535万円、新宿区が同+3.6%の423万円、文京区が同+3.7%の412万円となりました。日経平均株価急落の影響は平均成約単価にも及びましたが、従来のトレンドに回帰したようにみえます(図表3右図)。
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一方で取引市場参加者の動向を確認すると、転売を目的とした不動産業者の購入や転売目的の新規プレイヤーの参入が一部でみられたものの、この8月・9月の購入の勢いはやや減退していました。具体的には、転売目的の不動産業者に慎重な姿勢がみられたほか、購入検討の様子見や取り止め、契約のキャンセルなどの動きがあったようです。また高価格帯の物件では、外国人の案内数が減少するなどの傾向もみられました。
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図表4は、2024年4月以降の在庫成約倍率の推移です。在庫成約倍率は在庫数を成約数で除して算出したもので4、中古マンション市場における需給バランスを表し、値が大きいほど需給が緩和した状態を示しています。取引市場参加者の動向を裏付けるように、都心6区における在庫成約倍率にはやや上昇気配がみられます。
都心6区の中古マンション市場においては、引き続き、海外からのマネー流入、富裕層の不動産投資・相続対策ニーズ、パワーカップルによる実需ニーズなどの安定的な需要があると考えられます。しかしながら、不安定な為替相場や株式市場をうけて、マーケット・サイクルのピークを見極めようとする動きも生じつつあります。コロナ禍は収束したものの、都心6区の中古マンションをとりまく環境は不確実性が高い状況にあり、都心6区における需給バランスの動向に留意が必要です。
4 在庫数は各月中旬頃の時点。成約数は取引数と同義。
提供:法人営業本部 リサーチ・コンサルティング部
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