周辺の開発度合いで"新駅効果"大きな違い立地の良しあしも影響
沿線が延伸したJRおおさか東線の「JR野江」と「JR淡路」では明暗が分かれる形に
?沿線延伸開業があったJRおおさか東線の例(2駅)
開業効果があったと言えるのが「JR野江」である。駅の東側には京阪本線「野江」が徒歩2分という至近距離に存在する。
中古マンション平均坪単価の推移はやや複雑ではあるが、2016年までは一時期を除き、「JR野江」が所在する大阪市城東区の平均坪単価を概ね下回る水準で推移したが、2017年1Qを境に同区の平均坪単価を上回るようになり、特に2018年1Qには163.8万円まで一気に高騰した。
開業後の2019年3Qには142.5万円となり、これ以降はほぼ城東区の平均坪単価を下回ることはなくなっている。
ただし、新築マンションの分譲戸数は増加したとは言い難く、開業後においても2021年2Qの52戸を数える程度となっている。京阪本線「野江」に近いため「京橋」「北浜」「淀屋橋」に直結する京阪本線を最寄り駅とするマンション供給が多いと想像される。
このことは後述の「JR淡路」と同じ状況である。にもかかわらず「JR淡路」とは異なる「効果あり」となったのは、大阪市中心部へのアクセスの良い京阪本線も利用できる点にあるのかもしれない。
「JR淡路」は中古マンション坪単価が下落しており、新駅効果はなかったと言っても差し支えない。開業前1年の坪単価(83.9万円)と開業後1年の坪単価(95.3万円)は+13.6%と大きくなっており、該当駅所在行政区である大阪市東淀川区の上昇率+3.4%と比較しても大きく上昇している。
駅の開業前後1年のみを見ると「効果あり」と判断したいところであるが、中古マンション平均坪単価の推移は2012年1Q以降直近の2023年2Qまで全体としては実質的に下落基調である。
そのため大阪市東淀川区の平均坪単価との比較では、2016年3Qを境に逆転して下回るようになっており、差は期を追うごとに大きくなっている。
「JR淡路」から約徒歩4分の場所に阪急京都線「淡路」が存在している。そのため、こと鉄道利便性の向上という側面においては、大きなメリットが出ていない可能性があり、中古マンション平均坪単価だけで見ると新駅の効果は限定的であったと考える。
?もともとの良好立地に新駅効果でシナジーが出た例
JR神戸線の「六甲道」と「灘」の市街地の中に2016年に開業した駅である。「摩耶」が開業する前から阪急神戸線と阪神本線の間をJR神戸線が3路線並走し、既存の隣駅である「灘」からもさほど遠くないため、元来アクセスが良い人気の住宅地である。
開業1年前にあたる2015年3Q:153.2万円→2016年1Q:127.1万円と大きく下落して開業を迎えたが、開業後は2Q:105.0万円→2017年1Q:165.5万円と急上昇した。
2017年2Q以降はグラフでも明らかな通り、神戸市灘区の平均坪単価を大きく上回るペースで上昇している。
開業1年前から新築マンションの新規分譲もコンスタントにあり、かなりの新駅効果があったものと認められる。ただこのエリアは、「摩耶」開業の影響のみではなく、近辺の既存2駅の存在も大きく関係している。
3路線利用可能なエリアに新駅ができたという意味では、そもそも立地優位性、交通利便性の良さが備わっていてこその結果ではないかと考える。近年、明らかに新線・新駅の開業数は減少していて、本格的な人口減少時代に突入したことを示す結果となった。
今後の鉄道網拡充は、勢い経済効率の追求を前提とした大規模再開発の一つのオプションとしての位置付けに変化するはずで、すでに変化したと考えるのが妥当である。
この10数年で、従来の人口(=利用客)が増加したため駅を作るという「経済成長ありきの駅開業」から、「計画的・戦略的地域成長のための駅開業」へのダイナミズム変化が起こったと考えるべきだろう。
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