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#マンションの間取り考

2024.02.15

ルーフバルコニーのあるマンションの間取り例と注意点

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マンションの住戸には、たいていの場合「バルコニー」という外部空間がついています。わざわざ外出しなくても、部屋からバルコニーに1歩出るだけで新鮮な空気を吸えたり、外の景色を見てリフレッシュできる場として、基本的に庭のない2階以上のマンションライフでは貴重な場所となっています。

あまり数は多くないものの、マンションによっては庭くらいの広さの「ルーフバルコニー」がある住戸もあります。マンションに住みながら庭付きの戸建て感覚で暮らせるため、人気があります。

ルーフバルコニーってどんな場所?

ルーフバルコニーとは、その名のとおり、下階住戸の屋根(ルーフ)の上を活用してバルコニーにした外部空間をいいます。一般的なバルコニーより広いものが多く、手すりや柵で囲われており、基本的に上部に屋根はありません。したがって、陽当たりや見晴らしがよく、開放感が得られるなど、さまざまなメリットを享受することができます。

ルーフバルコニーが設けられているマンションの特徴として、ひとつはマンションの上階部分において斜線制限や日影規制をクリアするために建物が段々状にセットバックし、その部分をルーフバルコニーとして活用するケースがあります。または、斜面地に張り付くように建てられ、建物が上階に行くに従い段々状に後退していく形状のマンションに設けられるケースなどがあります。

ルーフバルコニーの専用使用権と管理規約

ルーフバルコニーは、一般的には「その住戸の住人が専用で使用できる権利(=専用使用権)がある」と定められています。詳しくはマンションの「管理規約」に記載があります。管理規約は、多様な価値観やライフスタイルの人が集まって住むマンションにおいて、安全や快適な暮らしを維持するために定められた「法律」に値するものであり、そのマンションに住む全ての住民が守らなければならないルールです。

専用使用権が認められているルーフバルコニーは、基本的に自分の好きな使い方ができます。例えば、植木鉢を置いて花や植物を植えるガーデニング、野菜を育てる家庭菜園、床にウッドデッキを敷き込む、椅子やテーブルを置いてアウトドアリビングとして活用する、ホームパーティを開くなどです。洗濯物や布団を干すこともできますが、禁止しているマンションもあるので管理規約をよく確認しましょう。

一方、注意したいのは、専用で使用する権利はあるものの共用部扱いのため、管理はマンションの「管理組合」が行います。従って、管理組合が「バルコニーのメンテナンスを行う」と通知してきた際は、置いている植木鉢やウッドデッキをいったん撤去しなければなりません。また、大変重要なことですが、災害時の避難経路に当たる部分には、家具や植木鉢などを避難の邪魔になるようなものを置いてはいけないことになっています。

勝手な改変も行うことができません。例えば手すりを別のデザインのものに取り換える、土をバルコニーの床にじかに盛って庭園にする、サンルームを作る、などです。それらの行いは、マンションの外観に影響を及ぼしたり、構造的な負担を増やしたり、避難する際の安全性を損なうなど、住民全体に影響を与えてしまう恐れがあるからです。

ルーフバルコニーの楽しみ方と注意点

それでは、ルーフバルコニーをどのように活用できるのか、さまざまな楽しみ方を紹介します。

■べランピングを楽しむ
最近人気が出ている「べランピング(glamping)」をご存知でしょうか。豊かな自然の中でキャンプを楽しむ「グランピング(Glamping)」のベランダバージョンで、コロナ禍で"おうち生活"が続く中、自宅のベランダで気軽にキャンプが楽しめる、新しいアウトドアとして広がりました。

一般的に、ルーフバルコニーはべランダより面積が広いので、べランピングにもってこいです。お天気の良い日にさっとテーブルやイス、ランタン、ハンモックやテントなど、キャンプ気分を味わえるアイテムを出し、食事や読書、家族との会話などを楽しみます。

その他にも、楽しみ方はいろいろあります。
■子ども用プールを出して遊ばせる
■ヨガマットを敷いて自然光と風を感じながらヨガをする
■地域の花火大会やお祭りなどを高い位置から楽しむ
■机と椅子を出して在宅勤務時のワークスペースとして利用する
■陽当たりの良さを利用して梅干しや乾燥野菜などの保存食をつくる
■クリスマスシーズンにはイルミネーションを飾って楽しむ など

ルーフバルコニーで楽しい時間を過ごす際の注意点もあります。べランピングなどを行う際には、近隣住戸に迷惑が掛からないよう、大声でしゃべったり大音量で音楽を流したりすることは避け、ニオイや煙などにも気を付けましょう。ベランダは「火気厳禁」になっているマンションも多く、調理は室内のキッチンで行い、食事は外で、がお勧めです。

子ども用プールを出して遊ぶ際も、水が他の住戸の洗濯物を濡らさないように気を付ける必要があります。下階は他住戸の住まいなので、走り回ったり、ボールを使った遊びや運動などの音や振動が伝わるような運動は迷惑をかける可能性があります。

イルミネーションについては、管理規約に記載されていなくても、発熱しないLED電球を使うことや点灯する時間などを検討し、管理組合から了解を得た方が無難です。以上の注意点については、マンションの管理規約を読んで必ず事前に確認しておきましょう。

ルーフバルコニーのある間取り例(1)

ここからは、ルーフバルコニーのあるマンションの間取りを2つ紹介します。まずは3LDK,専有面積約79m2のファミリータイプの間取りです(間取り図1)。約18畳の広いルーフバルコニーがついています。

【間取り図1】3LDK、専有面積約79m2のファミリータイプ

■注目ポイント
・陽当たりが良く、便利なスロップシンクも

ルーフバルコニーは住戸東側についており、視界は北~東~南方向に開けています。朝早くから陽が差し込み、陽当たり条件は大変良いです。ベランダ菜園、ガーデニングなどでも植物がよく育つでしょう。平面図のルーフバルコニーに「SK」という記号が書かれていまが、これは「スロップシンク」という深いシンクと蛇口がある設備がここにあることを示しています。スロップシンクは、水やりをしたり雑巾を洗ったりするのに便利です。

・来客よりも家族で楽しむ場として活用
間取り図1では、ルーフバルコニーがリビング・ダイニング・キッチンに面しておらず、個室を通らなければ出入りできません。なので動線的から考えると、お客様を招いてパーティをするというよりも、家族で楽しむ場に適していると言えます。

ルーフバルコニーのある間取り例(2)

3LDK,専有面積約90m2のファミリータイプの間取りです(間取り図2)。約28畳分の広いルーフバルコニーがついています。

【間取り図2】3LDK、専有面積約90m2のファミリータイプ

■注目ポイント
・住戸を囲む形で陽当たり、開放感がある

住戸の南~西~北方向をぐるりと囲うようにバルコニーがついており、陽当たり、開放感と良い条件が揃っています。キッチンの勝手口のすぐ横にSK(スロップシンク)がついていますが、ガーデニングの水やりはもちろん、泥付き野菜を洗ったりするなど便利に使えそうです。

・各居室からアクセス可能で、用途が広がる
リビング・ダイニング、和室、洋室、キッチンがそれぞれバルコニーに面しています。キッチンから直接バルコニーに出られる勝手口があるので、ゴミを一時的に外に仮置きしたり、料理に使うハーブなどを栽培して必要な時にちょっと収穫するなどの楽しみ方ができそうです。

まとめ

今回はルーフバルコニー付き住戸のメリットや注意点、マンションの間取り事例をみてきました。紹介した間取り図は2つとも住棟の端にある妻側(つまがわ)住戸になります。妻側住戸はもともと東西南北のうち3方が開けており、開放感、眺望、採光、通風条件に恵まれた住戸が多いのですが、さらにルーフバルコニーという広い外部スペースが使用できるとあり、マンションの中でもとても人気がある住戸です。

注意点としては、住戸内でルーフバルコニーへ至る動線がどうなっているか、外部用水栓やコンセントの有無を確認してください。もしお客様を招いてルーフバルコニーでパーティをしたいなら、ルーフバルコニーがリビング・ダイニングから直接出入りできる位置にあると良いでしょう。また、もしガーデニングや家庭菜園をしたいなら、太陽の光が当たる向きにあるかどうか、ルーフバルコニーの方位も確認しましょう。

井上恵子(いのうえ・けいこ)

井上恵子(いのうえ・けいこ)

住まいのアトリエ 井上一級建築士事務所主宰/一級建築士/インテリアプランナー
総合建設会社の設計部で約14年間、主にマンションの設計・工事監理、性能評価などを担当。2004年の独立後は生活者の視点から「安心・安全・快適な住まい」「間取り研究」をテーマに、webサイトでの記事執筆、新聞へのコラム掲載、マンション購入セミナーの講師として活動。
著書に「住宅リフォーム計画」(学芸出版社/共著)「大震災・大災害に強い家づくり、家選び」(朝日新聞出版)などがある。夫と子ども2人との4人暮らし。
住まいのアトリエ 井上一級建築士事務所 http://atelier-sumai.jp/

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