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#マンションの間取り考

2024.04.23

水まわりの位置に特徴があるマンションの間取り

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住まいの中で、水まわり(キッチン・浴室・洗面所・トイレ)がどこに配されているか、またそれぞれがどのような位置関係にあるかは、家事のしやすさや時短、家族のプライバシーの確保、コロナ対策などに関係します。一方でタワーマンションのビューバスなどは、その存在が住戸の魅力をパワーアップしています。

今回は水まわりの位置に特徴が見られるマンションの間取りをピックアップして、どのような点に特徴があるのかを解説します。

水回りを利用して回遊動線を生み出した間取り

近年の都市部のマンションでは1戸当たりの面積が縮小される傾向(※)がありますが、コンパクトな住戸ほど「いかに空間が有効に活用されているか」という視点で間取りを見てみることも大切だと考えます。注目は「廊下」の取り方です。廊下は広い必要はなく、その分をなるべく他の居室に割り当てたいところです。

※株式会社不動産経済研究所「首都圏 新築分譲マンション市場動向 2024年1月」によると首都圏の新築分譲マンションの1戸当たりの平均専有面積は68.96m2

【図1】の間取りは「洗面所」が「通路(廊下)」も兼ねているところに大きな工夫が見られます。洗面所をハブにして、2つの洋室やキッチンが結ばれているため、各部屋への移動がスムーズです。また、水回りが集まっていることから家事の時短にもつながるでしょう。

広い住戸なら寝室に専用の洗面と浴室がついているケースも見られますが、この間取りもそれに近い感覚で使えます。また、各室の引き戸を開け放てば住戸の中をぐるりと大きく回遊することができる「回遊動線」となっています。

【図1】専有面積60.05m2、2LDK+ウォークスルークロゼットの間取り

■どんな暮らしの人が向くか
例えば、夫婦共働きでどちらかの帰宅が深夜になることが多い、相手のいびきが気になるなど、何らかの理由で夫婦別室にする家庭もめずらしくありません。2つの寝室の間に洗面所と浴室があるこの間取りなら、夜中に帰ってきても家族に迷惑をかけることなく、洗面所からもれる灯りや音でお互いの気配を感じることができそうです。

玄関近くに水回りがあり、手洗いの習慣づけがしやすい間取り

コロナの流行で「帰宅後、まずは手洗いをする」という習慣がついた家庭もあるでしょう。コロナの流行が落ち着いてもインフルエンザなどは毎年流行しますので、この習慣はぜひキープしたいものです。

【図2】の間取りでは、洗面所と浴室、トイレなどの水回りが玄関の近くに配置され、帰宅したらすぐに手洗いをするという習慣を続けることができそうです。ファミリータイプのマンションで最もポピュラーな「田の字プラン」では、住戸の中央付近に水回りが配置されるケースが多いのですが、この間取りは住棟の端にある「妻側住戸」のため、PP分離(プライバシーとプライベートが切り離された間取り)かつ玄関近くに水回りを集約したプランを実現しています。

また、キッチンは他の水回りとは離れ、バルコニーに面した明るい場所に設けられています。住戸の間口が広いからこそ可能な配置で、キッチンを重視した間取りになっているといえます。

【図2】専有面積70.9m2、2LDK+S+WICの間取り

■どんな暮らしの人が向くか
小さな子どもがいる、または高齢者や病気の人と同居しているなど、帰宅後の手洗いを徹底したい家庭に向きます。また、明るく快適なキッチンなので、料理が好きでキッチンにいる時間が長い人にも向くでしょう。

ビューバスのあるタワーマンションの間取り

ビューバスとは、浴室に大きな窓がついており、入浴しながら外の景色を楽しむことができるお風呂のことです。周辺からの視線が気にならないことが前提なので、マンションの場合はタワーマンションに設けられることが多いです。入浴しながら高層階からの眺めを楽しみ、開放感を得てリラックスできること、自宅にいながら非日常的な体験ができる点が大きな魅力となっています。

【図3】はビューバスのあるタワーマンションの間取り例です。お風呂には西向きに大きな窓がついています。この向きにはどのような景色が見えるのか、周囲からのぞかれる恐れはないかなどを、必ず事前にチェックしておきましょう。

キッチンやトイレも廊下を介するものの、住戸の中央に集まって配置されています。キッチンは玄関や洗面所に比較的近い位置にあるため、専有面積90m2と広い住戸ですが、家事動線は短くまとまっており、家事がスムーズにできる間取りになっています。

【図3】専有面積90m2、2LDK+Sの間取り

■どんな暮らしの人が向くか
バスタイムに重きを置いているお風呂好きな人、タワーマンションから見える景色を堪能したい人、また家事動線がコンパクトにまとまっていることから、毎日忙しく家事は短時間で済ませたい人などに向いています。

水回りに特徴があるマンションの間取りのまとめ

・専有面積がコンパクトな住戸なら空間の使い方にひと工夫ほしいところです。例えば水回りを閉じた空間にするのではなく、通路(廊下)の役割も持たせてスペースを節約するのも一つの方法です。

・マンション住戸においてポピュラーな田の字プランでは水回りは住戸の中央付近に設けられることが多いですが、コロナ禍では手洗いが玄関近くにある間取りが注目されました。特に小さな子どもや高齢者、病気の人がいて帰宅時の手洗いを徹底したい場合は、手洗い器もしくは洗面所の位置を確認してください。

・タワーマンションのビューバスは、高層階からの眺め、開放感、非日常を味わえます。窓の向きや人の視線が気にならないか確認しましょう。

洗面所、浴室、トイレ、キッチンなどの水回りは毎日使う場所であり、使い勝手の良しあしは暮らしやすさと直結します。マンション選びの際には、水回りが住戸内のどのあたりに設けられているのか、それぞれの水回りの位置関係がどうなっているかということを確認してください。日々の動線と照らし合わせ、そこで行う動作なども思い描き、使いやすいか、気持ちよく使えそうかなど想像してみると良いでしょう。

井上恵子(いのうえ・けいこ)

井上恵子(いのうえ・けいこ)

住まいのアトリエ 井上一級建築士事務所主宰/一級建築士/インテリアプランナー
総合建設会社の設計部で約14年間、主にマンションの設計・工事監理、性能評価などを担当。2004年の独立後は生活者の視点から「安心・安全・快適な住まい」「間取り研究」をテーマに、webサイトでの記事執筆、新聞へのコラム掲載、マンション購入セミナーの講師として活動。
著書に「住宅リフォーム計画」(学芸出版社/共著)「大震災・大災害に強い家づくり、家選び」(朝日新聞出版)などがある。夫と子ども2人との4人暮らし。
住まいのアトリエ 井上一級建築士事務所 http://atelier-sumai.jp/

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