2LDKとは、リビング(L)・ダイニング(D)・キッチン(K)のほかに個室が2つある間取りのことで、DINKSはもちろん、ファミリー層にとっても選択肢の一つとなっています。
ファミリー向けマンションの間取りというとまず3つの個室がある3LDKを思い浮かべますが、東日本不動産流通機構の調査(※1)によると、2023年度の首都圏全域における中古マンションの取引において、全ての間取りタイプの中で2LDK(含む2DK)が占める割合は27.9%でした。これは、3LDK(含む3DK)の45.3%に次いで多く、2LDKの間取りに人気があることがわかります。
さらに特筆したいのは、東京都区部では2LDKの成約数が33.7%と、3LDK の30.4%を超え、全ての間取りタイプの中で最も成約件数が多い点です。東京都区部の2LDKの成約件数5,566件は、首都圏全体の2LDKの成約件数10,212件の半数以上を占めることからも、とくに都市型のライフスタイルを好む人に支持されていることがうかがえます。
今回は「DINKS」「夫婦+子1人」「子どもが独立した夫婦」の各世帯におすすめの2LDKの間取り(専有面積70m2台、60m2台、50m2台)を紹介します。
※1:出典:公益財団法人 東日本不動産流通機構『中古マンション間取り別成約件数[首都圏]2023年度』
ファミリータイプのマンション選びに3LDKだけでなく2LDKの間取りも視野に入れることで物件選択の幅はぐんと広がります。そこで、あえて個室が一つ少ない2LDKの間取りを選ぶメリットを挙げてみましょう。
●専有面積がコンパクトになる分、購入時の費用が抑えられる(東京都を除く※2)
●専有面積がコンパクトになる分、同じ予算でより利便性の高い立地に住める可能性がある
●家族の気配を感じやすく、コミュニケーションが自然と増える
●LDKや各部屋を広めに確保でき、開放感のある暮らしができる
●売却時も、単身者やDINKS層など幅広いニーズが見込める
以上のように、一部屋少なくすることで、さまざまなメリットを享受できる可能性があります。それでは家族形態別におすすめの2LDKの間取り例を見ていきましょう。
※2:先の調査では、東京都では2LDKの平均成約価格は6,858万円で、3LDKの平均成約価格6,475万円を上回る
【図1】は共働きのDINKSに向く間取りの例です。2LDK、専有面積79.7m2、西向きの部屋です。
約19.5帖のリビング・ダイニング・キッチン(LDK)には、複数人で料理がしやすいアイランドキッチンが備えられています。休日には2人で料理を楽しんだり、友人を招いて食事をしたりとコミュニケーションを楽しめます。リビングにはソファーを置いてくつろいだり、趣味のピアノを楽しむなど、日々の暮らしを豊かにできる広さになっています。
2つある個室は同程度の広さがあり、洗面所に隣接した約8帖の広さの洋室(1)は寝室として使います。洗面所には洗面ボウルが2つあり、慌ただしい朝に2人同時に身支度をすることができます。
北向きの約7.5帖の洋室(2)は一日中室内の明るさが安定しており、本を読んだり仕事をする空間として適しています。書斎や在宅ワーク時の仕事部屋として、または趣味の部屋として利用してもよいでしょう。小さいバルコニーがついているため、仕事の合間の息抜きに外の空気を吸ったり、景色を眺めることもできます。
玄関にある広めのシューズインクローゼットにはアウトドア用品やスポーツ用品も収納できます。浴室はくつろげる1620サイズです。仕事も趣味も満喫するアクティブなDINKSにおすすめの間取りです。
注意点として、西向き住戸のため西日対策として開口部の上に庇(上部住戸のバルコニーの出でもよい)があることや、サッシの断熱性能をチェックしてください。
【図2】は夫婦+子ども1人のファミリーにおすすめの間取りの例です。2LDK、専有面積69.27m2、東南向きの部屋です。
約16.2帖の広さのリビング・ダイニング・キッチン(LDK)には、子育てファミリーに人気が高い対面式キッチンがあります。キッチンで作業をしていても、顔を上げるだけでリビングにいる家族とコミュニケーションを取ることができます。
子どもにリビング学習をさせたい場合は、キッチンの流しの前にカウンターを置くか、または長い壁面(図中の矢印参照)に沿って学習机を置くこともできます。比較的長い壁面なので横に親が使う在宅ワーク用の机も並べることができそうです。このように、壁が多い間取りは家具の配置がしやすいメリットがあります。
リビングの隣にある約8帖の洋室(1)は子ども部屋として使います。成長に合わせ、家具の配置によって使い方を変えることができ、もしもう1人子どもが増えた場合でも、家具やカーテンなどで仕切って対応できます。玄関に近い洋室(2)は主寝室として使います。約6帖とコンパクトな空間ですが、廊下から直接入る動線でプライバシー性が高く、落ち着いた寝室となるでしょう。
玄関とつながる土間は、ベビーカーやサッカーボールなど子どもが外で使うグッズ、家族の靴、ランドセルなどの収納に便利です。家族の上着をかけるフックなども付ければ外で使うものは全てここに収納でき、ほこりや花粉を室内に持ち込むことなく生活できるでしょう。子どもがいて収納がたくさん必要なファミリー、リビング学習をさせたい家庭などにおすすめの間取りです。
【図3】は子どもが独立した夫婦におすすめの間取りの例です。2LDK、専有面59.26m2、南東向きの部屋です。
約13.9帖のリビング・ダイニング・キッチンには、コンパクトながら子どもが独立したあとも本格的な調理に対応できるキッチンを備えています。
夫婦の寝室は、テレビを置いたり読書ができるスペースを確保した約7.5帖の洋室(1)とし、約5.6帖あるもう一室の洋室(2)は、書斎や趣味の部屋として使用し、将来的には介護対応の予備室としての転用も可能です。
この間取りが優れている点は、主寝室の洋室(1)と洗面所、トイレ、浴室が直結していることです。寝室と水回りが近接していることで、高齢になっても日常生活における自立性が高まり、より長く自分のことは自分でできる生活を維持することができます。これは心身の健康維持にもつながります。
個室の出入り口や水回りの扉に引き戸を多用していることもポイントです。この間取りであれば、高齢になって車いすを使うことになった場合なども最低限のリフォームで住まい続けることができそうです。
注意点として、玄関や浴室には手摺が設置できるスペースがあるかどうか、また玄関にはベンチが置けるスペースがあると良いでしょう。
最後に2LDKの間取り選びのチェックリストをまとめます。
・通風・採光条件は十分か(2LDKは個室数が少ない分、条件が良好になりやすい)
・各部屋の広さにゆとりはあるか
・収納スペースは十分か
・家事動線は効率的になっているか(洗濯動線、キッチン周りの動線)
・現在の家族構成に適しているか
・将来的な家族構成の変化に対応できるか(子育て、老後など)
・在宅ワークなどの新しい生活様式に対応できるか
・趣味などのスペースは確保できるか
これらのリストをもとに、自身のライフスタイルや将来計画と照らし合わせ、理想の2LDKの間取り選びにお役立ていただけましたら幸いです。
住まいのアトリエ 井上一級建築士事務所主宰/一級建築士/インテリアプランナー
総合建設会社の設計部で約14年間、主にマンションの設計・工事監理、性能評価などを担当。2004年の独立後は生活者の視点から「安心・安全・快適な住まい」「間取り研究」をテーマに、webサイトでの記事執筆、新聞へのコラム掲載、マンション購入セミナーの講師として活動。
著書に「住宅リフォーム計画」(学芸出版社/共著)「大震災・大災害に強い家づくり、家選び」(朝日新聞出版)などがある。夫と子ども2人との4人暮らし。
住まいのアトリエ 井上一級建築士事務所 http://atelier-sumai.jp/
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