長引くコロナ禍や東京五輪の終了など、マンション市場にマイナス影響を与えることが懸念された事象があった2021年。しかし、現実のマンション市場は、それらの影響は皆無と言えるほど、新築、中古ともきわめて堅調に推移している。
迎えた2022年、マンション市場はどのように推移するのか、前後編2回に渡って考察していく。前編の今回は2021年のマーケットを改めて振り返ってみたい。
まずは2021年までの新築マンション平均m2単価の直近データを見てみてよう。グラフは2020年までが年間平均で、右から2番目は2021年上半期平均、最右は2021年7月~10月の各月のデータから、筆者が4カ月分の平均値を算出したもの。
このため赤点線より右側は、あくまで参考値ととらえてほしいが、首都圏、近畿圏とも2021年時点で上昇が続いているのは明らかだ。
特に首都圏は2021年下半期に入って上昇が加速している感があり、最終的に年間平均で前年より高くなるのは確実だろう。逆に近畿圏は下半期に入って横ばい気味に見えるが、上半期と11、12月分が合算されれば、やはり2021年の年間平均は前年より上昇となる可能性が高い。
次にデータのサンプル数が多い首都圏については、エリア別に見てみた。2020年から2021年にかけた上昇度は都下や周辺3県が横ばいに近い動きなのに対し、23区の上昇が際立って見える。首都圏でマーケット動向を正確にとらえるには、23区内と周縁エリアとで分けて考える必要があるだろう。
一方の中古マンション市場も、首都圏、近畿圏とも2020年までの上昇トレンドが、2021年も継続しているか、むしろ上昇が加速しているようにも見える。
また、2020年の平均築年数は首都圏が21.99年(2010年より+4.42年)、近畿圏が25.12年(2010年より+6.55年)と、いずれも過去10年で最も長くなっていることも押さえておきたい。
特に近年は新築の供給戸数が大きく減っていることで、築浅の中古物件が出にくくなっていることも影響しているはずだ。一般に築年数が進むと価格査定にはマイナスに働くことを踏まえると、たとえば同じ築年数で比較した場合の中古価格は、実質的にはグラフの見た目以上の角度で上昇していると捉えるべきだろう。
ちなみに、筆者はマンションの価格相場は「新築マンションがリードして中古マンションが追随する」と見ている。新築マンションは立地や商品力にもよるが、事業主の思惑次第で従来のエリア相場から大きく乖離した高値設定がなされることが珍しくない。価格上昇トレンドにある昨今は特にその傾向が強い。
一方で、中古は個人の売主がエリアの取引事例や自身の売却期限などを考慮しながら、エリア相場のレンジ内で「売れそうな価格」を設定することが一般的だ。
たとえばあるエリアで高値の新築マンションが出ると、同エリアの中古マンションは新築マンションとの対比で割安感が増すため、それ以前より強気な値付けが可能になる。逆に安価な新築が出ると、同エリアの中古マンションに割高感が出て、値下げ圧力が働きやすくなる。
もちろん中古マンションでも「二度と出ない立地」のような個別条件による例外はある。しかし多数の平均で形成される「価格相場」という観点では、「新築マンションがリードして中古マンションが追随する」構造と言ってよいだろう。
このマンションの市場構造を前提とすれば、マーケットの変化を見立てるには、新築マンションの市場動向がカギになると言うことができる。そこで次回は、新築マンションを中心に2022年の市場動向を考察していく。
住宅ライター
1990年、京都大学工学部卒業、株式会社リクルート入社。2005年より住宅情報誌「スーモ新築マンション」「都心に住むbySUUMO」等の編集長を10年以上にわたり務め、2016年に独立。現在は住宅関連テーマの企画・執筆、セミナー講師などを中心に活動。財団法人住宅金融普及協会「住宅ローンアドバイザー」運営委員も務めた(2005年~2014年)。株式会社コトバリュー代表
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