不動産投資コラム

物件調査・購入ドキュメント(3) 後編

人口約200万人の政令指定都市で購入した区分マンションを購入した経緯の後編です。

区分マンションは、一棟ものと違って管理組合という存在のあることが最大のメリットです。購入直後に外壁塗装や屋上防水を行わなければならないような場合でも、新築時から積立てられている修繕費用のおかげで、個人の出費を免れることができます。共用部の清掃も既に委託されている業者さんがやってくれますし、決められた管理費と修繕積立金を支払っていれば、管理面での手間はほとんど掛かりません。

逆に言えば、管理体制がしっかりしていない区分マンションには、購入するメリットがありません。
一棟もののアパートやマンションを購入する場合は、自分の頑張りで物件価値を上げていくことができますが、ダメダメな管理をしている区分マンションを改善していくことは非常に困難です(管理組合の理事長になって改革に取り組むくらいしか方法がありません)。

現地調査

ぼくは、一棟ものの物件を購入する前に、何十もの区分マンション(この時は単身者向けのものをチェックしていました)を見ましたが、管理がずさんで手が付けられないようなマンションもたくさんありました。

ですので、現地で物件をチェックする際には、管理体制をしっかりとチェックする必要があります。まず、物件のエントランス近くにしばらく張り込んで、マンションに出入りする人を確認します。いかにも居住マナーが悪そうな人が住んでいないか、ペット不可のマンションに動物を持ち込んでいる人はいないかなどを調べます。

15~20分ほどエントランスにいるだけで、相当数の入居者が出入りするので、この作業だけでもかなりのことが分かります。

そのほかエントランス付近で重要なのは「郵便受け」と「掲示板」です。郵便受けが溢れているような入居者はいないか。不要チラシを廃棄するためのゴミ箱は設置されているか、ネームプレートは付いているかなどを確認することで、そのマンションの管理体制を把握することができます。掲示板も同様で、掲示物はきれいに貼られているか、期限の切れた案内が放置されていないかなどを確認します。購入したマンションは、この2点は非常にしっかりとしており、これまで現地を見に行った中でもトップクラスの管理体制でした。

あとは購入する部屋の内部です。ぼくが内見に行った時には、まだ売主さんが居住していました。当然、部屋の中は生活感が溢れるものだったのですが、ここで遠慮して室内チェックを適当にやってしまうと、購入後に思わぬリフォーム費用の出費に驚いてしまうことになります。

トイレや浴室、クローゼットの中などもしっかり確認するようにしましょう。(賃貸中の物件は基本的には内見ができません。空室または売主居住中の物件は、購入から家賃発生までに時間が掛かること、利回りが確定していないことから敬遠される傾向にありますが、ぼくは内部が確認できない賃貸中の方が、むしろリスクが高いと思います)

今回は売主さんが非常に良い方だったので、室内を全て見せてくれましたし、長年居住されているにも関わらず、部屋の傷み具合も少なかったです。それから、売主さんとも多少コミュニケーションを取るようにしました。コミュニケーションといっても世間話程度ですが、後々価格交渉を行うときに、何も話さないよりは有利だと思ったからです。

価格交渉・運営

管理体制、室内とも問題がないことが分かり、浴室やトイレなどの交換なしで賃貸に出せると判断できたため、このマンションを購入することにしました。「売主様の希望通りの期日に契約、決済を行います」という条件で90万円の値引きをお願いしたところ、快諾をいただきました。価格交渉は、自分の側からも何かメリットを相手に与えるように気を遣いました。

一棟ものの場合は、物件の積算や収益性(利回りなど)を根拠に、比較的論理的に価格交渉を行った方が上手くいきやすいのですが、戸建てやファミリータイプの区分マンションなど、投資家ではない人が売主の場合には、理屈を並べるよりもストレートにお願いしてみた方が価格交渉に応じてくれる確率が高いように感じます。

購入後はリフォームを行う訳ですが、きれいに使っていたとはいえ、20年以上も居住されている部屋なので、水回り以外のほとんどの部分を取り替えました。また、3DKのうちの2部屋をつなげて、広めの2LDKに変更するなど、入居者さんから選ばれる部屋作りに努めした。

リフォーム業者さんを探すのは、普段は電話帳などを使って地道に探しているのですが、今回はそこそこの規模になる工事だったので、地元の建設組合に問い合わせて職人さんを紹介してもらいました。

地元の建設組合に直接職人さんの紹介をお願いする方法は、書籍で知りました。非常に工事が丁寧で、しかもリーズナブルな価格でした。職人さんに直接発注している時点で十分に価格的には安いはずなので、ここでは合い見積もりを取ったりするようなことはせず(紹介者にも不義理ですし)、「この部分は予算オーバーなので、もう少し何とかなりませんか?」というような感じで交渉しました。エアコンの設置も含めると、トータルのリフォーム費用としては70万円ほどです。

リフォームには2ヵ月ほども掛かってしまいました。これは、職人さんの作業が遅かったのではなく、自分にとって初めての大規模リフォームであったために発注内容の判断がすぐにできなかったことが原因です。

そして最後に賃貸付けですが、これは本当に簡単でした。物件近くの大手フランチャイズ店にお願いに行ったところ、連日のように問い合わせや内見があり、2名の方から申し込みが入りました。その間、当時既に所有していた地方のアパートの問い合わせはまったくなく、「場所が良いとここまで反響が違うのか」と驚いたのを覚えています。

結果的に、成約家賃は104,800円。購入+リフォーム費用の合計が970万円でしたので、単純利回りは約13%。管理費と修繕積立金を除いたネット利回りが10%程度になり、投資としては非常に良いものになりました。

物件購入から7年が経ちましたが、このマンションには今でも同じ入居者さんが居住されています。これまでお支払いいただいた家賃を合計すると、物件の購入価格と同じくらいになっており、少し申し訳ないなという気がしないでもありません(笑)。

寺尾 恵介
寺尾 恵介

寺尾 恵介

大手保険会社に12年間勤務。2004年から不動産投資を始め、2008年3月までに7物件・94戸の不動産を購入し、サラリーマンを卒業。現在は大家業の他、不動産投資ブロガーとしても活躍中。著書『満室大家さんのヒミツ』(ぱる出版)他。
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