不動産投資コラム

こんにちは。今回のコラムは、「遠隔地での物件購入と管理」についてお話させていただきたいと思います。一口に「遠隔地」「遠い」といっても、突き詰めていくと奥が深いものだったりします。このコラムが投資の幅を広げることにつながれば幸いです。

人によって価値観が違う概念

「距離」は、人によってかなり価値観が違う概念です。不動産投資では、自宅からの距離について、絶対に一定範囲内で購入すると決めている人もいれば、飛行機で10時間以上もかかる外国であっても、気にせず物件を購入する人も少なくありません。それ以外の分野でも、例えば会社への通勤において、新幹線通勤さえいとわないという人もいますし、かなり割高な家賃を払っても会社から30分以内は譲れないという人もいます。

ぼくは今のところ、比較的遠隔地と呼ばれる地域で物件を購入していることが多いですが(最近は自宅から30分くらいのところでも買っています)、たまたま購入したい物件が遠隔地にあったからそうしているだけで、遠隔地でない場所に物件を購入する方が、不動産投資としては有利だと思っています。いざというときすぐに現地まで行けますし、賃貸仲介会社や管理会社とのコミュニケーションも取りやすい。さらには、融資の上でも対象となる金融機関の数が多いです。

「近い物件」でなければどこでも同じ

ただし、ここでいう遠隔地でない物件(仮に「近い物件」と言うことにしましょう)は、上記のようなメリットを直接享受できるほどの距離であることが条件です。行きたい時にいつでも行ける、時間にしてせいぜい30分程度の場所に物件がないと、近い物件とは呼べないということです。

例えば、ぼくが今住んでいる横浜市中区から電車で1時間移動すると、西方面では熱海まで行けてしまいます。千葉の船橋も1時間以内で行けます。この距離になると、居住地域を営業拠点とする地方銀行のほとんどが「エリア外」となってしまいます。

また、これくらい離れてしまうと、物件管理においてもかなり大変です。週末に現地に出向いて管理会社と打ち合わせをした後、客付け会社を数社訪問しようとなると、ほとんど丸1日仕事です。簡単な補修や清掃のために現地に行くのにも、交通費や移動時間を考えるとメリットがある距離でもありません。

要するに、「近い物件」でないなら、どこでも同じです。横浜に住んでいる投資家さんでいうと、千葉で物件を所有するのと福岡で所有するのとは、購入上も運営上もたいして違いがないということですね。ご自身の購入対象を、「近い物件」に限定するつもりがないのでしたら、積極的にエリアを広げて検討されることをおすすめします。

遠隔地の購入

さて、自宅からかなり離れたエリアであっても、良い物件を購入することは可能です。遠隔地の購入で問題になる要素として思い浮かぶのが...

  1. 物件を頻繁に(すぐに)見に行くことができない
  2. 居住地周辺に比べて土地勘がない
  3. 融資が受けられる金融機関が少ない

の3つです。これを解決する方法として、ぼくが使っている方法をご紹介します。

まず、1についてはスピード勝負で購入することをやめます。誰が見てもすぐに買いたいと思う物件を、現地に住んでいる投資家さんに先駆けて購入することは不可能です。ですから購入対象として「一定規模以上のリフォームが必要な物件」や「空室が多い物件」など、すぐには売却されそうにないものを中心にします。手がかかりそうな物件であっても、工夫と運営力次第で高収益物件に変身させることは可能です。

また、購入を検討している地域の不動産会社と関係を強化し、有力な見込み客になっておくことが望ましいです。物件情報を早めに紹介してもらえたり、簡単な現地調査は代行してくれたりします。

2の解決法は、購入エリアをある程度絞ることです。遠隔地であっても地方であっても物件を購入することは問題ありません。ただし、購入対象エリアがあまりに広範囲になると、土地勘(地域の特性や賃貸需給状況など)を養うのが大変です。1にも通じますが、不動産会社との関係を強化するのも、地域がバラバラでは難しいのではないかと思います。

3については確かに不利です。対処法としては、ご自宅と投資エリアの両方に支店のある金融機関を選択することです。日本政策金融公庫などは、全国どこでも利用できていいですね。地域の大きな地方銀行も活用できることが多いです。

遠隔地での運営

次に運営面です。これについて、自分が心がけていることは以下の通りです。ほぼ「管理会社対策」ですね。

  1. 管理会社を中心に、しっかりとした賃貸経営チームを作る
  2. 他社仲介でも、管理会社に何らかのフィーが入るようにする
  3. 写真を撮ってメールで送ってもらう仕組みを作る

1は、日頃のコミュニケーションや訪問時の会話、素早く適切な支払いなどで、相手から「この人は素晴らしいオーナーさんだ」と思われるようにします。具体的な手法は、ぜひ拙著「満室大家さんのヒミツ」をお読みください。この本に書かれていることができていないだけで、破綻する大家さんがたくさんいます。

2はどういうことかというと、例えば管理会社ではない他の仲介会社が入居を決めてくれた場合でも、最低1ヶ月分のフィーが管理会社に入るようにします。名目は広告料でもかまわないのですが、とにかくそれなりのお金が入るようにするのです。そして、「他社が仲介しても手数料が入りますので、ぜひ地域の仲介会社に積極的に営業をしてください」と交渉します。こうすることで、オーナー自らが現地に足を運ばなくても、一定以上の頻度で仲介会社への営業ができるようになります。

3は、距離のハンディを克服するために必須の手法です。退去時室内状況や原状回復の完成報告、設備の破損、迷惑駐車、近隣にできたライバル物件など、写真を撮影してメール添付で送ってもらえる状況が整うと、遠隔地の管理運営が何倍も楽になります。この時期ですと、地域によっては積雪の状況を写真で判断し、除雪をするかどうかを判断するというような活用もできそうです。

どういうわけか、不動産会社はメールの活用が苦手である場合が多いのですが、メリットをしっかりと説明して、仕組みを構築するように努めてください。

寺尾 恵介
寺尾 恵介

寺尾 恵介

大手保険会社に12年間勤務。2004年から不動産投資を始め、2008年3月までに7物件・94戸の不動産を購入し、サラリーマンを卒業。現在は大家業の他、不動産投資ブロガーとしても活躍中。著書『満室大家さんのヒミツ』(ぱる出版)他。
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