私たち、投資物件の仲介担当者が行う物件調査のチェック項目は、100を超えます。その中から、個人投資家の方が物件をチェックする際に、参考になるようなエッセンスを紹介していきます。
事前準備で調べておくべきこと3つ
まず、現地に行く前に調べておきたい項目です。物件広告に出ている情報を手掛かりに、インターネットなどで以下をチェックしましょう。
<価格相場のチェック>
・近隣の路線価や公示地価を調べ、おおよその土地の価格相場をつかんでおきます。
それぞれ国税庁の「路線価図・評価倍率表サイト」、国土交通省の 「土地情報総合システム」で調べられます。
・そのエリアの賃料相場や表面利回りも調べておきます。賃貸情報サイト、投資物件のサイトなどでも確認できます。
■プロの目
私たちが現地案内する場合は、レントロール(全戸の家賃・共益費の明細が書かれた表)を持参します。周辺相場と実際に貸している家賃とを比較して、適正な賃料設定か、購入後に家賃が下がる可能性はないかなどを把握するのに役立ちます。
<周辺環境のチェック>
・住宅地図やグーグルのストリートビューなどで、周辺の住環境、生活利便施設の有無や現地からの距離などをチェックします。
・鉄道線路、工場やゴミ焼却場などの気になる施設が近くにないかなども把握しておきましょう。
・災害危険度も知っておいたほうがいいでしょう。「国土交通省ハザードマップポータルサイト」では、多様な災害関連情報が得られます。
■プロの目
居住用(アパートや賃貸マンション)であれば、マイホームを購入する際とほぼ同じ項目をチェックすればよいでしょう。ただし、自分の好みではなく、"入居者目線"であることが必要です。物件の住戸タイプで、入居者ターゲットを想定し、必要な施設の有無をチェックします。
<権利関係のチェック>
・土地が所有権か借地権かなど、権利関係をチェックします。
■プロの目
不動産仲介会社に依頼して、事前に登記簿情報を取得してもらうと良いでしょう。
あくまで登記簿上だけですが、権利関係等の情報を把握する事ができます。
ここだけは見落とせない、現地調査の重要ポイント
最寄り駅から該当物件まで歩いてみることで、どのような賃貸需要があるかを見ることができます。自動車利用が中心のエリアでは、自動車でアクセスを確認するのもよいでしょう。
また、物件の周辺100メートルくらいは歩いてみて、実際の施設を確認します。車などの交通量や町の雰囲気など、肌で感じる情報も大切です。
現地に到着したら、物件そのものをチェックしていきます。敷地内に入るには、オーナーの許可を得て案内する仲介担当者の同行が必要です。
<敷地回り>
・敷地の境界標(石)の有無を、わかる範囲で目視チェックします。
・越境のチェックも重要です。建物の屋根や庇(ひさし)、植栽、工作物(電柱、フェンス、ブロック塀など)がないか、隣地からの越境、隣地への越境を調べます。
■プロの目
水道管などの地下埋設管が隣地へ越境している場合、修繕が必要になったときに隣地所有者の許可が必要になったり、費用が余計にかかったりするおそれがあります。
必要に応じて、越境物確認書、協定書(越境物に関わる同意書)の有無を確認します。
また、現行法に適合していない「既存不適格建築物」になっていると増改築や同じ規模での建て替えはできません。図面と現地を照らし合わせてチェックします。
<管理状況>
・敷地内や共用部分の清掃がきちん行われているか、ポストが荒れていないか、ゴミが散乱していないか、不法投棄はないか、などをチェックしましょう。不審な車や人の出入りがないかも見ておきましょう。
■プロの目
建物の中に入れれば、共用部分の清掃状況も確認します。隠れて飼っているペットの臭いがついていないかもチェックします。
<建物の劣化状態>
・外壁のクラックがないか、敷地に入れる場合はバルコニーの裏側や廊下の淵など、雨掛かり部分にコンクリートの爆裂(割れて中の鉄筋が錆びて露出している状態)が無いかなどをチェックしましょう。
■プロの目
屋上防水の状況なども、できれば見ておきたいところです。将来的な大規模修繕の時期やコストが予測できます。
<共用施設・設備>
・一棟マンションの場合は、受水槽やタンク、消防設備、エレベータの有無、きちんと点検されているかを確認します。
■プロの目
法定点検が義務付けられている設備についてはそのランニングコストを考える必要があります。
<入居状況>
・総戸数のうち、実際に何戸入居しているかを、わかる範囲でチェックします。
■プロの目
郵便ポストもヒントの一つですが、建物内の廊下側に水道・電気メーターが出ていれば、その稼働状況で入居中かどうかを推測できます。
<住戸内>
・建物内に入れる許可があり空室がある場合は、部屋の中に入って設備の種類や稼働状況などをチェックします。部屋の向き、日当たり、眺望など、賃借人が住む観点で見てみましょう。
■プロの目
この部屋ならいくらで貸せるか、周辺相場とも合わせて考えます。また、共用設備と同様に、住戸内設備(エアコン、給湯器、照明、調理器具など)について、リフォーム費用がどのくらいかかるかを予測します。
不特定多数の人の出入り、事件・事故物件の可能性もチェック
たとえば、居住用のマンションで、1つの部屋から男性が何人もぞろぞろ出てくる場合、いわゆる"振り込め詐欺"などのアジトにされている可能性を疑ってみたほうがいいでしょう。許認可を得ていない違法な"民泊"に利用されていることもあります。
入居・退去が激しいマンションやアパートは、良好な住環境を保つのが難しく、セキュリティの面からも好ましくありません。既存入居者の退去が増え、募集しても成約しにくくなるおそれがあるので注意が必要です。
いわゆる"事件・事故物件"の有無も、稼働率や募集家賃に影響するだけに重要な要素です。こうした情報を提供しているサイトなどで調べておいたほうが良いかもしれません。
昼と夜で顔が変わる街も。時間を変えて現地を見るべし
昼と夜でガラリと表情が変わる街もあります。
ある駅から徒歩数分にあるマンションは、少し離れた場所に飲食店や風俗店が集まっています。昼間は静かで気になりませんが、夜になるとマンションの目の前で外国人が露店を開いていたり、客引きの男性がウロウロしているのです。女性は怖がって入居してくれないかもしれません。昼間しか見に行っていなかったら、「駅に近くて便利なマンション」という印象しかないでしょう。
何度も現地を見る時間が取れない場合は、地域の事情に詳しい仲介会社の担当者に案内してもらうといいでしょう。また、街の住人の口コミも貴重な情報になります。
投資物件の調査は、マニュアル化しにくい面があります。知りたいこと、不明点があれば、気軽に仲介担当者に聞いてみるのが早道といえるでしょう。