不動産投資コラム

不動産投資の7つのリスクと7つの回避術

不動産投資の7つのリスクと7つの回避術

不動産投資にはたくさんのリスクがつきまといます。手堅く投資をすすめるには、リスクの内容や回避方法を知っておかねばなりません。今回は不動産投資にともなう7つのリスクと7つの回避術をまとめています。

1. 不動産投資の7つのリスク

不動産投資のリスクの特徴

不動産投資のリスクは、ほかの投資と比べて特別高いわけではありません。投資のリターン(収益率)とリスク(不確実性・危険確率)は、図1のように、高いリスクを取るほどリターンが大きくなるという関係にあります。



主に売買差益(キャピタルゲイン)を目的に投資するFXや株式は「ハイリスク・ハイリターン」、利息や配当(インカムゲイン)を得る預貯金や国債などは「ローリスク・ローリターン」となるのが一般的です。不動産投資は、「ミドルリスク・ミドルリターン」と言われます。急激な変化のない賃料収入というインカムゲインを中心に、相場上昇期に売却すればキャピタルゲインを得られる可能性があります。

不動産投資が他の投資商品と大きく違う点が、借り入れ(ローン)の存在です。金利の変動は不確実ですから、リスク要因ととらえるべきです。自己資金が多いほど、「ローリスク」に近づくと言っていいでしょう。ただ、ローンはリターンを大きくするのに役立つということも覚えておきたいところです。

もう一つ、不動産投資の大きな特徴は、管理運営のやり方次第でリスクを下げて運用益を高められることです。例えば株価は、自分ではコントロールできません。これに対して、不動産投資の場合は物件に手を加える、入居者募集を工夫するなどして、収支を改善できる可能性があります。一定のコストはかかるにしても、自分でコントロールできるのはメリットです。

不動産投資のリスクとは、具体的に何でしょうか。あるサイトで行われた「不動産投資に関する意識調査(2020年7月)」によると、「不動産投資・賃貸経営で苦労したこと」の第1位は「退去、滞納、家賃減額」と「入居付、リーシング」で19.6%でした。
第3位は「物件の購入」「リフォーム、設備工事」の14.5%、第5位は「入居者対応、トラブル」の10.1%となっています。

※出典:健美家「不動産投資・賃貸経営で苦労したこと」2020.07

以下ではいよいよ、具体的な不動産投資にともなうリスクを7つ、ご紹介していきます。

1-1.空室リスク

1つ目は「空室の増加、長期化」、つまり「空室率の上昇リスク」です。空室率が高まると収益性が減少しますし、ときには赤字になってしまう可能性もあります。

空室リスクの種類には、不動産マーケット(地域・全体相場)によるものと、物件によるものの2種類に分けられます。

a) 不動産マーケットによる空室リスク
人口や世帯数の減少に伴い、空き家が増加しているため、賃貸住宅の空室率の上昇は避けられないという見方があります。しかし、すべての地域で人口が減っているわけではありません。事前に地域の不動産マーケットをリサーチして賃貸需要のある地域を選ぶ必要があります。
人口減少のみならず、不動産全体、ひいては経済全体の景気が悪化している等の事情による空室リスクも考えられます。

b)物件に由来する空室リスク
物件そのものに問題があり、空室率が上昇するケースです。「賃料設定が周辺の賃料相場と比べて高い」「入居者の募集活動が適切でない」「築年数の古い物件で建物・設備が老朽化している」などが典型的な例です。

入居者同士でトラブルが起こり、空室になってしまうケースもみられます。

1-2.家賃下落リスク

不動産全体の相場が落ち込んだり地域の需要が低くなったりすると、入居促進のために募集家賃を下げざるを得ない場合が出てきます。また契約更新のタイミングなどで、入居者からの家賃交渉が入る可能性もあるでしょう。

1-3.家賃滞納リスク

満室稼働中だとしても、その入居者の中で家賃を滞納する人が出てくるリスクがあります。
その場合、滞納期間の家賃収入が減るだけでなく、滞納者へ家賃を支払ってもらうよう、督促する手間が発生するでしょう。督促しても尚、払わない場合には、訴訟や強制執行が必要となる可能性もあり、想定外のコストがかかります。
簡単には立ち退きさせることもできず、滞納を続ける入居者との交渉が必要になります。

1-4.老朽化、修繕リスク

物件も築年数が経過してくると、老朽化が進み、定期的な修繕の必要が出てきます。

よくある修繕対応の例

  • ・給水管や排水管を交換
  • ・外壁や屋根の塗装、防水
  • ・室内やキッチン、トイレや風呂場などのリフォーム
  • ・エアコンや給湯器の取替え
  • ・入居者の入退去にともなうリフォーム

予想外に修繕費用が高額になり、オーナーの負担となってしまうケースがあります。

1-5.金利上昇リスク

投資用の物件を購入する際には、多くの方が不動産投資ローンを利用します。
変動金利を適用していると、返済途中で金利が上昇し、ローン返済が厳しくなってしまう可能性があります。ただ、利子は経費になるため、金利上昇がダイレクトに手取り額の減少に跳ね返るわけではありませんので、そこまで神経質になる必要はないでしょう。

1-6.地震・火災リスク

不動産を所有していると地震などの自然災害によるリスクもあります。火災が発生する可能性もあります。例えば地震によって建物が壊れた場合、不動産ローンの返済だけが残ってしまっては返済が難しくなってしまうでしょう。

1-7.赤字運用リスク

家賃が下がった、入居者がつかない、修繕費用や税金などの経費がかかりすぎるなどの事情で赤字運用が続いてしまうリスクです。売却も難しい状況であれば、延々と赤字運用を続けざるを得なくなり、破綻してしまう可能性も懸念されます。

2. リスクを回避する7つの方法

不動産投資にともなうリスクを回避するため、以下のような対処方法を検討してみてください。

2-1.立地(地域・エリア)の吟味

こちらは空室リスクや家賃下落リスク、赤字運用リスクへ対応する方法です。
物件選びの際に立地をしっかり吟味し、空室になりがちな物件は避けましょう。

事前に地域の不動産マーケットをきちんとリサーチして、賃貸需要のある場所を選ぶことで空室リスクや家賃下落リスクなどを回避できます。

  • ・駅から近い
  • ・周辺に生活利便施設がある
  • ・閑静な住宅地で人気のあるエリア
  • ・近隣類似物件に空室の多い物件がない
  • ・人口減少が想定されにくい地域
  • ・築年数が古すぎない

ただし必ずしも上記であればリスクを避けられるとは限りません。地域によっても状況が異なることを把握しておきましょう。

<オーナーの声>
「郊外の駅からバスを利用する立地、いわゆるバス便エリアの駐車場付きの一戸建てに投資しています。価格はおよそ1,500万円で購入しました。表面利回りは約9%です。子育てファミリーが安定して入居してくれていますね。
この立地で、ワンルーム主体のアパートだったら手を出さないと思います。戸建て賃貸には共用設備はないし、敷地周りの清掃は入居者が自分でやってくれるので、維持管理のコストや手間がほとんどかからないのもメリットです」

2-2.収益シミュレーションをする

赤字運用リスク、空室リスクや老朽化、修繕リスクへ対応する方法です。
投資用の不動産を購入する際には、必ず事前に収益のシミュレーションをしましょう。
綿密にシミュレーションしておけば、想定違いで赤字になってしまうリスクを避けられます。

空室リスクや災害リスク、修繕費用や税負担なども考慮した実質利回り(ネット利回り)で計算してみてください。
例えば入居者の入れ替わり時に行う原状回復のリフォームは、一定の間隔で必ず発生するものとして収支計画に織り込んでおくべきです。

また「相場より高く買ってしまった」という失敗を防ぐためにも不動産マーケットを調べることが重要です。類似物件の価格や家賃相場は、インターネットである程度調べることができます。検討物件のレントロールを入手し、家賃相場との比較や、入居者属性(法人や個人、ファミリー、DINKS、カップル、単身、学生等)を把握しましょう。平面図や間取りを見ながら、どのような層に賃貸ニーズがあるのかをイメージしてみてもよいかもしれません。
不動産投資はインターネットに公開しない取引も多いです。そのため、不動産仲介会社の担当者からそれらも含めた直近の市況や客観的意見を教えてもらうのも効果的です。

ただ、不動産マーケットには波があります。全体相場のピークに近い時期に購入して、下落傾向の時期に売れば、売却損が発生する可能性は高くなります。また、価格相場が動かなくても、経年による物件価格の値下がりは、ある程度までは避けられません。

値下がりした場合の収支シミュレーションを行うと、そのリスクをどの程度恐れるべきなのかを知ることができます。

シミュレーションの具体例

図3は、2億8,000万円の融資を受けて3億円の一棟マンションを購入し、10年後に1割超値下がりした状態で売却するケースの試算(概略)です。結果は、売却収入だけで考えても660万円のプラス(購入時に払った自己資金3,620万円を差し引いたあと)です。これに10年間の賃貸運用益の手取り額(累積キャッシュフロー)2,880万円を加えると、10年間のトータルで3,540万円のプラスとなります。

以上のような検討を行ったうえで十分収益性を維持できそうな物件のみを購入すると、失敗しにくくなります。

2-3.修繕コストを抑える

老朽化、修繕リスクへ対処する方法です。
購入前に修繕履歴や現地を確認することで、修繕の状況を事前に把握しておくことが重要です。長期にわたり修繕が実施されていない場合は、購入直後に漏水が発生してしまうなど、早速修繕が必要になるケースがあります。もし購入後に修繕が必要だと気づいた場合は、なるべくコストを抑えて施工する方法を考えましょう。コストを抑えるためには、管理会社任せにせず、工事金額の相場を調べたり、見積りをチェックしたりすることが大切です。

老朽化した設備仕様をリニューアルするためのリフォームは、空室率を下げるためには必要な対策です。かといって、最新設備を入れて内装デザインまで凝った作りにすると、コスト負担が重くなります。最近では、それほどお金をかけずに、入居者ニーズの高い設備仕様にアレンジしてくれるリフォーム業者が増えてきました。こうした業者を調べて、費用対効果の高いところに頼むようにしましょう。

維持管理費の負担が重くなる原因の一つは、物件の共用設備にあります。エレベータ、給水ポンプ・受水槽、消防設備などは、定期点検・清掃、補修コストがかかります。こうした共用設備の少ない中低層のマンション、アパートを選んでおくと支出のリスクを抑えることができます。購入後に維持管理費用の負担が重いと感じた場合には、管理会社との契約内容の見直し、委託先の変更などを検討しましょう。

<オーナーの声1>
「屋上防水の工事をローコストで行う業者を選び、施工が終わった後に太陽光発電装置を設置しました。売電収入が得られるうえに、太陽光パネルでカバーするので防水層の劣化防止にもつながるそうですよ」

<オーナーの声2>
「以前は、保守点検の外注先も含めて管理会社に丸投げしていました。例えばエレベータは、メーカー系列の正規業者とフルメンテナンス契約になっていて月5万円ほどかかっていました。コストを見直そうと、独立系業者に見積りをとったら、なんと半分以下の2万円になると知って驚きましたね」

2-4.自己資金を用意する

赤字運用リスク、金利上昇リスク、家賃下落リスクへ対応する方法です。
購入時にフルローンを組むと、レバレッジを活用でき、自己資金よりも大きな金額の投資が長期にわたってできる、というのは不動産投資の醍醐味です。一方で、家賃が下落し、金利が上昇したためにキャッシュフローがマイナスに陥るなど、負担が大きくのしかかる場合もあります。できる限り自己資金を入れてローン額を抑えておけば安心できるでしょう。

2-5.保険加入

地震や火災リスクへ対応する方法です。
地震や災害への対策としては、保険加入が必須です。万一の際に十分な保険金が出るように、保険内容もしっかり検討しましょう。

2-6.固定金利を選ぶ

金利上昇リスクへ対応する方法です。
不動産投資ローンを組むときに「固定金利」を選ぶのも1つの対処方法となります。固定金利の場合、金利が上昇してもローン設定時の金利のままになるため返済額が上がりません。

2-7.信頼できる不動産仲介会社、管理会社にサポートしてもらう

空室、家賃滞納、家賃下落、人口減少、赤字運用などさまざまなリスクに対応する方法です。
物件検討の際に細かいリサーチを抜け漏れなく行うことは難しいものです。良い物件を選ぶには、良い物件を紹介してくれる、確かな情報をもとに相談にのってくれる不動産仲介会社の存在が助けになります。
物件の購入後、建物の維持管理をはじめ、入居者探しや賃貸契約業務、修繕・リフォームの提案、家賃の入出金管理や入居者からの苦情処理などをオーナーのかわりに管理会社が行います。これらをオーナーが全て行うのは困難ですし、委託することで、空室リスク、家賃滞納リスク、老朽化・修繕リスクへの対応ができます。また、管理会社にサブリースに入ってもらうことで、空室リスクを回避することもできます。

<オーナーの声>
「うちは代々アパート経営をしているのですが、父親は空室が長引くと、『なぜ部屋が埋まらないんだ』と上から目線でよく営業マンを叱っていましたね。それでも、なかなか部屋は埋まりませんでした。
自分が引き継いでからは、管理会社の勤務状況などを調べて、営業の邪魔にならない時間帯に菓子折りを持ってお願いに行くようにしたんです。『うちの物件をよろしくお願いします。決まったら、インセンティブも付けますから』と、ビジネス・パートナーとして接するようになったら、空室が出てもスムーズに決まるようになりました」

良質な会社を選択し、良い付き合いを継続していればリスクを抑えて不動産投資を成功させやすくなるでしょう。
野村不動産ソリューションズでも、投資用物件のご紹介を行っています。是非お気軽にお問合せください。当社の不動産投資のプロフェッショナルが、皆様の不動産投資をサポートさせていただきます。


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宮澤 大樹
宮澤 大樹

宮澤 大樹野村不動産ソリューションズ株式会社 プライベートコンサルティング営業部

1998年から不動産業界に携わり、首都圏のマンション販売・投資用マンションの販売を経験。 その後、2005年より主に一棟マンション・ビル等の投資事業用不動産を中心とした仲介業務に従事。

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