不動産投資コラム

個人が土地区画整理事業により換地又は補償金・清算金等の交付を受けた場合の税務

1. はじめに (注:租税特別措置法は以下「租特法」と簡記)

土地区画整理法に基づき、道路や公園、河川などの公共施設を整備改善し、土地の区画形質を整えて宅地利用の増進を図ることを目的とする土地区画整理事業が行われる場合、個人の地権者(借地権者を含む。)は換地(区画整理前の土地の代わりに交付を受ける宅地)又は補償金・清算金等といった名称の金銭を取得することになります。換地として土地又は土地の上に存する権利(以下「土地等」)を取得した場合には、区画整理で手放した(譲渡した)土地等のうち、換地に対応する部分は税務上、譲渡がなかったものとみなされます(租特法33条の3)。2以下では、個人の地権者が補償金・清算金等を取得した場合の税務を説明します。

2. 補償金・清算金等の種類

補償金・清算金等は、土地区画整理法以外の法令に基づく各種の再開発の場合も含め、区画整理事業等の対象となって手放すこととなった土地などの資産そのものの対価としての性格を有する「対価補償金」と、「それ以外の●●●●●補償金」に分類されます。「対価補償金」には、再築工法を行うために交付を受けた建物補償金や、工作物補償金も含まれます。これに対し「それ以外の補償金」は、さらに、1)移転補償金(資産の移転に要する費用の補填に充てるものとして交付を受ける補償金)2)経費補償金(事業上の費用の補てんに充てるものとして交付される補償金)3)収益補償金(区画整理事業が行われることによって生ずる事業の減収や損失の補てんに充てられるものとして交付される補償金)4)その他対価補償金の実質を有しない補償金に分類されます。(参考:租税特別措置法通達33-8)。

個人に交付された各種補償金等は、土地等を譲渡した対価や事業収入の補償などとして外部から得る収入なので、対価補償金を含めすべて所得税法上課税の対象となる所得となることが原則です。ただし、補償金等は上記のように性質がそれぞれに異なり、その性質の違いにより、一定の要件はあるものの、所得税法上の所得が生じない●●●●ものとする取扱いを受けられるものもあります。次の3で補償金等の種類(性質)別に課税上の取扱いを整理して説明します。

3. 土地区画整理事業の補償金・清算金等の課税関係

対価補償金となる清算金などは、原則として譲渡所得の収入金額として扱われます(租特法通達33-9)が、譲渡所得の特例として、「譲渡所得の特別控除の特例」(租特法33条の4)と「収用等に伴う代替資産の取得の特例」(租特法33条)のいずれかを選択することができます。なお、これらの特例の選択・適用のためには確定申告が必要です。

(1) 「譲渡所得の特別控除の特例」

これは、譲渡所得の金額から最高 5,000万円までの特別控除を差し引くことができる特例ですが、以下の要件すべてを満たすことが必要です。

  • (イ)土地区画整理の対象資産は固定資産であること。
  • (ロ)その年に公共事業のために譲渡した資産の全部につき「収用等に伴う代替資産の取得の特例」を受けていないこと。
  • (ハ)最初に移転等の申出があった日から6か月を経過した日までに土地建物を譲渡していること。
  • (ニ)土地区画整理事業の施行者から最初に移転等の申し出を受けた者が譲渡していること。

なおこの特例は、この事業の地区内に複数の物件を所有している方が2年以上に分けて各資産の対価補償金を受ける場合には、原則として最初の年に受けたその金額についてのみに適用が限られます。

(2) 「収用等に伴う代替資産の取得の特例」

こちらは、対価補償金の清算金で他の土地建物(代替資産)に買い換えたときに課税の繰延べができる特例で、清算金に比べ代替資産の取得価額の方が多い場合には売った年は譲渡所得が‘なかった’とされ、所得税の課税が将来に繰り延べられます。また、清算金に比べ代替資産の取得価額の方が少ない場合には、その差額のみが収入金額とされて、譲渡所得の金額の計算を行います。この特例を受けるには、次の要件のすべてを満たすことが必要となります。

  • (イ)土地区画整理の対象資産は固定資産であること。
  • (ロ)原則、譲渡資産と同種の資産に買い換えること。
  • (ハ)原則、移転に承諾した日から2年以内に代わりの資産を取得すること。

(3) それ以外の補償金の取扱い

2の1)の移転補償金は、その区画整理のため必要な資産の移転等の費用に充てるために交付されるものであり、その交付を受けた補償金を交付目的に従って資産の移転等の費用に充てたときは、その補償金は、所得金額の計算上、総収入金額に算入されません(所得税法44条)。

2)経費補償金や3)収益補償金はそもそも収入の代わり金などであるため事業所得や不動産所得などに分類され、3(1)、3(2)の特例の適用はありません。4)の補償金は、原則として各種所得の収入金額となりますが、非課税所得を定める所得税法9条第1項に該当するものは非課税となります。

税理士法人タクトコンサルティング

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