不動産投資コラム

【令和2年度改正】所得税の国外中古建物の不動産所得に係る損益通算等の特例のポイント

1.特例の概要

個人が令和3年以後の各年において、下記2の国外中古建物から生ずる不動産所得を有する場合に、その年分の不動産所得の金額の計算上国外不動産所得の損失の金額があるときは、その国外不動産所得の損失の金額に相当する金額は生じなかったものとみなされます(租税特別措置法(措法)41条の4の3第1項)。

このため、その損失の金額は、国内の不動産から生じる不動産所得との内部通算及び不動産所得以外の所得との損益通算ができないことになります。

2.特例の適用対象となる国外中古建物の意義

国外中古建物とは、①個人により使用され、又は法人により事業の用に供された国外にある建物であって、②その個人の不動産所得を生ずべき業務の用に供されたもののうち、③その不動産所得の金額の計算上その建物の償却費として必要経費に算入する額を計算する際に、耐用年数を一定の方法により算定しているもの(注1)をいいます(措法41条の4の3第2項1号)。

(注1)「耐用年数を一定の方法により算定している」建物とは、次のものをいいます(措法施行規則18条の24の2第1項)。

①耐用年数をいわゆる見積法により算定した建物
…その建物の耐用年数を、耐用年数省令第3条第1項第1号に掲げる年数としているもの(その使用可能期間が、一定の書類により適当である ことが確認できる建物を除く。)

②耐用年数をいわゆる簡便法により算定した建物
…耐用年数省令3条第1項2号に基づき、次に掲げる資産(上記①の年数を見積もることが困難なものに限る。)の区分に応じて、それぞれに定める年数(年数が2年未満のときは2年)としているもの。

イ.法定耐用年数の全部を経過した資産
…法定耐用年数×20%
ロ.法定耐用年数の一部を経過した資産
…(法定耐用年数-経過年数)+経過年数×20%

3.国外不動産所得の損失の金額

上記1の国外不動産所得の損失の金額とは、個人の不動産所得の金額の計算上国外中古建物の貸付けによる損失の金額(注2)のうち、その国外中古建物の償却費の額に相当する部分の金額として一定の計算をした額(注3)をいいます(措法41条の4の3第2項2号)。

(注2)その国外中古建物以外の、国外にある不動産等
(以下「国外不動産等」)の貸付けによる不動産所得の金額がある場合は、その国外中古建物の貸付けによる損失の金額を、その国外不動産等の貸付けによる不動産所得の金額の計算上控除してもなお控除しきれない金額をいいます。

(注3)「一定の計算をした額」とは、その年分の不動産所得の金額の計算上必要経費に算入した国外中古建物ごとの償却費の額のうち、次の区分に応じそれぞれに定める金額の合計額(注4)をいいます(措法施行令(措令)26条の6の3第1項)。

①償却費の額がその年分の不動産所得の金額 の計算上生じた国外中古建物の貸付けによる損失の金額を超える場合
…その損失の金額

②償却費の額がその年分の不動産所得の金額の計算上生じた国外中古建物の貸付けによる損失の金額以下である場合
…その損失の金額のうち償却費の額の相当額

(注4)個人のその年分の不動産所得の金額のうち、国外不動産等の貸付けによる不動産所得の金額がある場合は、【下記①-下記②】の金額を控除します(措令26条の6の3第2項)。

①その国外不動産等の貸付けによる不動産所得の金額
②下記イの金額からロの金額を控除した金額
イ.国外中古建物の貸付けによる損失の金額の合計額
ロ.国外中古建物の償却費の額の合計額

4.1の適用を受けた国外中古建物を譲渡した場合

上記1の適用を受けた国外中古建物を譲渡した場合には、その譲渡による譲渡所得の金額の計算上、その取得費から控除する償却費の額の累積額からは、上記1により生じなかったものとみなされた損失の金額に相当する金額の合計額が控除されます(措法41条の4の3第3項)。

つまり1の適用を受けなかった場合に比べて、国外中古建物の譲渡時の譲渡所得に係る所得税額が減少することになります。

税理士法人タクトコンサルティング

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