不動産投資コラム

調整区域の約4千平米の宅地が地積規模の大きな宅地として減価できないと判断された事例

1.はじめに

定期借地権でコンビニエンスストア等の敷地にしてた市街化調整区域の約4千平米の貸宅地を相続した人が、その相続税評価について「地積規模の大きな宅地」(財産評価基本通達20-2)に準じて減価すべきと主張し争っていた審査請求事案で、国税不服審判所(以下、審判所という。)は減価を認めない裁決を下しました(令和6年3月6日)。

2.事案の概要

問題となったのは、土地の所在が市街化調整区域であったこと。土地の所在の状況は、次のとおりです。

都市計画法上の地域等 市街化調整区域。平成28年3月28日、市条例改正に伴う開発基準見直しにより相続の開始時(R2.8)において、都市計画法第34条第12号に規定する条例で定める区域のうち、令和3年改正前市条例第16条の4第1号に定める特定集落区域内及び同条2号に定める×××沿道区域内に位置することになっていた。なお、同市ではHP上、市街化調整区域における宅地の拡散防止と小学校周辺等の地域拠点の維持とそのための緩やかな誘導を図るため、平成29年4月1日以降、特定集落区域を将来の生活拠点候補地として緩やかに誘導する旨を公表していた。
(参考)都市計画法34条12号「開発区域の周辺における市街化を促進するおそれがないと認められ、かつ、市街化区域内において行うことが困難又は著しく不適当と認められる開発行為として、災害の防止その他の事情を考慮して政令で定める基準に従い、都道府県の条例で区域、目的又は予定建築物等の用途を限り定められたもの」
評価上の所在 倍率地域。倍率は1.1倍

3.「地積規模の大きな宅地」の評価とは

地積規模の大きな宅地とは、①三大都市圏においては500平米以上、②それ以外の地域においては1,000平米以上の宅地で、所定の宅地をいいます。これに該当する宅地は、奥行価格補正から不整形地補正までの定めにより計算した価額に、その宅地の地積の規模に応じ、一定の規模格差補正率により減価することになっています。
ただし、市街化調整区域に所在する宅地の場合には上記の減価の対象とはなりません(財産評価基本通達20-2)。
なお、市街化調整区域で倍率地域あっても、都市計画法第34条第10号又は第11号の規定に該当する区域のうち宅地分譲に係る開発行為が可能な区域については、戸建住宅用地としての分割分譲が法的に可能なため、これらの区域内の宅地について、他の要件を満たす場合には「地積規模の大きな宅地」に該当することとされています。規模格差補正率は次の計算式のより求めることになっています。

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各数値については以下を参照してください。

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hyoka/4609.htm

4.審判所の判断

審判所は、地積規模の大きな宅地の評価の「適用対象については、評価通達の地区区分や都市計画法の区域区分等を基にすることにより明確化を図ったもの」と説示しました。
通達改正前の減価対象だった「広大地の評価」の判定上、苦慮する事態が見られたことを反面教師として「地積規模の大きな宅地の評価」の導入へ至った経緯を踏まえたものです。
それを踏まえ審判所は、問題の土地が「市街化調整区域に所在する宅地であって、10号区域又は11号区域に所在しないことから、(中略)本件通達の適用対象とはならない。また、(中略)評価通達5にいう評価方法の定めのない財産に当たらず、評価通達5の適用もない。したがって、本件各土地を本件通達の適用対象となる 「地積規模の大きな宅地」に準じて評価することはできない」と判断しています。
また審判所は問題の宅地が減価の対象にならない理由として、要旨「都市計画法第34条第12号の規定は、同条第14号に相当する開発行為で、審査基準のうち定型的なものを条例で定めることにより、開発許可の手続の迅速化・合理化を図る趣旨」と指摘。
そして審判所は「その開発行為としては、分家に伴う住宅、収用対象事業の施行による移転等による建築物、社寺仏閣等の建築物の用に供するものが予定されているのであるから(開発許可制度運用指針の 1の7の1)、同条第12号の規定に基づく開発行為の対象となる宅地は、仮に宅地分譲に係る開発行為が可能な区域に所在していたとしても、本件通達が適用対象とする「戸建住宅用地としての分割分譲が法的に可能であり、かつ、戸建住宅用地として利用されるのが標準的である地域に所在する宅地」の範囲に含むべきものではない」としています。

税理士法人タクトコンサルティング

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