これからのマイホーム取得計画は、いかに貯蓄のできる計画にするかが重要
2021年01月20日
人生100年時代を念頭に置いた計画が必要に
寿命の延びにしたがって、今後はますます長い老後のことを考える必要性が高まっていくと思われます。当然ながら、老後の生活資金の準備も、若いころから考えておく必要があるでしょう。
総務省が公表している家計調査年報(2019年)の数字を見ると、高齢夫婦無職世帯(夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦のみの無職世帯)の1ヵ月あたりの実収入は237,659円、実支出は270,929円となっています。1ヵ月あたりの不足額は33,269円(※円未満の端数を考慮した計算結果を四捨五入しているため、四捨五入後の数字による計算結果とは1円のずれが生じています)、年間では399,228円(=33,269円×12ヵ月)の不足です。仮に、65歳から95歳までの30年間で計算すると、不足額の合計は約1,198万円(=399,228円×30年)となります。
1年半ほど前に「老後2,000万円問題」が多くのメディアに取り上げられましたが、あれは2017年の家計調査年報の数字(1ヵ月あたりの不足額54,519円)で計算すると30年で約1,963万円不足となったので、およそ2,000万円足りないと言われていました。
2017年から2019年までのたった2年間で不足額が約800万円も減少したことを喜びましょう、と言いたいわけではありません。これらの数字からわかることは、毎年の統計数字で計算される平均的な不足額は、その年によって金額が大きく違うことと、あくまでも平均額なので、実際の収入や支出の金額は人によって大きく異なる可能性が高いということです。
とにかく、若い世代ほど、ゆとりのある老後生活は公的年金の収入だけでは厳しくなる可能性があるということを十分に認識して、老後資金準備を早くから始めておくことが重要かと思います。
仮に、35歳から65歳までの30年間で、1,200万円の老後資金を準備するなら、まったく利息が付かなかったとして毎月約3.33万円の積み立てが必要になります。年1%で運用できるとした場合の毎月の積立額は約2.86万円、年3%なら約2.05万円、年5%なら約1.44万円になります。
下表は、目標金額1,200万円と2,000万円の場合の必要積立額を計算したものです。30年という時間をかければ、1,200万円も2,000万円も無理な金額ではないと思いますが、やはり最低でも毎月3~5万円くらいは積み立てておく必要がありそうです。
●目標金額を達成するための毎月の必要積立額
30年後の目標金額 | |||
1,200万円 | 2,000万円 | ||
運用利回り | 年0% | 3.33万円 | 5.56万円 |
年1% | 2.86万円 | 4.76万円 | |
年3% | 2.05万円 | 3.42万円 | |
年5% | 1.44万円 | 2.39万円 |
つみたてNISAやiDeCo(イデコ)などの税制優遇をうまく利用しつつ、さらに、さまざまな商品にリスク分散をしながら運用していくことで、年3%や5%などの利回りを得られる可能性も高まります。
いまの時代、まさにマイホーム取得を考えるのと同時に老後に向けた資産形成も考えていく必要があると思われます。
教育資金準備も早くから計画しておくのが無難
時代の流れとともに晩婚化が進み、昔なら子どもの教育が終わってから老後の準備をすればよかったのが、子どもの教育が終わるのと同時、もしくは、それよりも前に、老後がやってきてしまうケースが増えているようです。
したがって、老後資金準備と教育資金準備は若いころから同時進行で行っていくのが無難だと思われます。特に、子どもの教育にお金をかけたいと考えているのであれば、早め早めの準備が重要でしょう。
教育費は、学校教育費だけでなく学校外教育費もかかります。オール国公立の学校に通ったとしても、幼稚園から大学までで1人当たり1,000万円近くはかかると言われます。オール私立だと軽く2,000万円を超えると言われます。さらに、子どもにかかる食費や被服費、医療費、通信費なども考慮すると、生まれてから大学を卒業するまでに1人当たり2,000~3,000万円のお金が必要になることも十分に考えられます。
もちろん、これらの金額は一度に支払う額ではありません。生まれてから22年程度の期間をかけて必要になる金額です。だからこそ、早くから準備を始めておいたほうが無難だと言うことができます。
とにかく多めに貯蓄。余ったら繰り上げ返済を検討
マイホームの資金計画を立てる際には、教育資金や老後資金の積立額を確保したうえで、いくらまでなら安心して返済していけるのかを冷静に考えていくことが重要だと思います。とにかく、教育資金と老後資金の不足が発生しないように慎重に見積もり、積み立てを実行していきます。
住宅ローンの返済額の設定は、教育資金や老後資金の積み立てにしわ寄せがいかないような金額にしながら、リタイアまでに完済できる返済期間で借入可能額を逆算します。そして、準備できている自己資金の額と合計し、安心して購入できる物件価格を算出します。このような流れで算出した物件価格の範囲内の物件を探しに行くというのが、本当の意味で安心できるマイホームの取得につながると思います。
このような資金計画を立てられれば、きっと、教育や老後にも不安の少ない、夢のマイホームが実現するでしょう。理想を言えば、そのようなマイホームを取得した後も、定期的に家計の見直しを行い、教育費の出費が予想より少なければ、すかさず住宅ローンの繰り上げ返済に回すなど、家計改善のための見直しをしていくとよいでしょう。そうすることで、結果的には老後資金が想定以上に貯められるようになるはずです。
ファイナンシャル・プランナー(CFP、1級FP技能士)、1級DCプランナー、住宅ローンアドバイザー
1969年東京生まれ。早稲田大学法学部卒業後、山一證券に入社し支店営業を経験。山一證券自主廃業後、独立系FPに。以後20年以上にわたり、資産運用や住宅ローンを中心とした相談、執筆、講師業に従事。2000年以降の講演回数は4,000回を突破!(2020年2月現在)。近著には「お金を貯めていくときに大切なことがズバリわかる本」(すばる舎リンケージ)がある。
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