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住宅ローンコラム FP菱田雅生が伝授!住宅ローン、賢く利用するためのコツ

住宅ローンは「借りられる金額」ではなく「返せる金額」で組むのが最も重要

2020年12月17日

借りられる金額はかなり多め!?

「私の場合、いくらまで借りられるでしょうか?」
住宅取得の相談に来られたお客さまから、このような質問を受けることが多くあります。確かに、借りられる金額がわかれば、手元に準備できている自己資金と合計することで、購入できるマイホームの価格帯がわかるので、知りたくなるのは当然だと思います。

例えば、準備できている自己資金が500万円あったとして、借りられる金額が4,000万円なら、諸費用込みで4,500万円以内の物件を購入できることがわかる訳です。だからこそ「借りられる金額がいくらなのかを教えてほしい」となるのでしょう。

しかし、残念ながら、「借りられる金額」を知ることに大きな意味はありません。なぜなら、「借りられる金額」と「返せる金額」は、同じではないからです。

一般の人が「返せる金額」は、その人が「借りられる金額」よりも少ないのが通常なのです。特に、会社員や公務員などのように収入が安定している人ほど、「借りられる金額」と「返せる金額」との差が大きくなっている傾向があります。

例えば、年収500万円の35歳会社員男性のケースで考えてみましょう。家族は、妻(パート)と子ども2人(6歳と3歳)、上の子どもが小学校に入学するタイミングでマイホームを購入したいと思ったとします。年収500万円だと、いくらまで借りられるのでしょうか。

フラット35のwebサイト上の住宅ローンシミュレーションで、年収から借入可能額を計算してみると、2020年12月の金利1.31%(融資率9割以下)で35年返済だと、借入可能額は4,910万円であることがわかります。

一方、各金融機関等の独自の住宅ローン商品の場合は、審査のルールが金融機関等ごとに異なるだけでなく、審査項目や内容がすべては公開されていないので、正確な金額を算出することはできません。

しかし、代表的な審査項目の1つである返済負担率(=年間返済額の年収に占める割合)を40%までOKにしている金融機関等もあるようなので、年収500万円だと最高で6,000万円近くまで借りられる金融機関等もあるといえそうです。

返せる金額は人それぞれで異なる

では、年収500万円の35歳会社員男性の「返せる金額」はいくらなのでしょうか。

結論から言うと、ケースバイケースです。その人またはその家族が、どのようなお金の使い方をしているのかによって、「返せる金額」はかなり違ってきます。

この「返せる金額」の多寡に大きく影響してくるのが、いま支払っている家賃(駐車場代も含む)と、毎月の貯蓄額の2つです。要は、「毎月いくら住居費に回すことができるのか」ということです。

仮に家賃と駐車場代で毎月12万円支払っている人は、その12万円は住宅取得後の住居費に充てることができるでしょう。さらに、毎月5万円の貯蓄をしている人であれば、合計17万円を住居費に充てることができるかもしれません。

しかし、ここで重要なのは、毎月5万円の貯蓄のうち、本当に住居費に充てても大丈夫な金額を慎重に見積もることです。子どもの教育資金や老後資金の準備も考慮する必要があります。現在の貯蓄残高の状況にもよりますが、もしかしたら、毎月5万円の貯蓄は1円たりとも住居費には充てないほうが無難かもしれません。

そうすると、住宅購入後の住居費も毎月12万円以内に抑えたほうが安全になります。この12万円は、住宅購入後の固定資産税等の維持費(マンションの場合は修繕積立金や管理費を含む)も含めた金額となるので、住宅ローンの返済に充てられる金額は、最大でも毎月10万円程度になるでしょう。

そして、毎月10万円を何年間支払うことができるのかを考えます。35歳男性が現役の間に住宅ローンを完済できるようにするための返済期間は、最長でも30年、できれば25年以内に抑えたいところです。というのも、60歳以降は収入が減る可能性もありますし、体力的・精神的な問題で60歳過ぎての住宅ローン返済が厳しくなるかもしれないからです。

では、毎月10万円を25年間返済していく場合の借入可能額はいくらになるのでしょうか。フラット35の金利1.31%で計算すると、2,557万円となります。これが「返せる金額」です。「借りられる金額」である4,910万円とは2,353万円もの差があります。このことに気付かずに「借りられる金額」で住宅ローンを組んでしまうと、途中で返済が苦しくなってしまったり、最悪の場合は家計が破たんしてしまったりする可能性も考えられるのです。

目標にすべきなのは「マイホームの取得」ではなく、「ゆとりのある生活」

住宅取得だけが人生ではありません。日々の生活や教育、老後のことも考える必要があります。だからこそ、「マイホームの取得」を目標にするのではなく、マイホーム取得後の「ゆとりのある生活」を目標にしたほうが、より幸せ感の大きい生活を送ることができるのではないかと思います。

マイホームを取得し、ゆとりのある生活を送っていくためにも、「借りられる金額」と「返せる金額」は違うということ、そして、自分が安心して「返せる金額」を冷静に見積もることが重要だということを念頭に置いて、マイホーム取得計画を立てていくようにしましょう。

執筆者:菱田雅生(ひしだまさお)

ファイナンシャル・プランナー(CFP、1級FP技能士)、1級DCプランナー、住宅ローンアドバイザー

1969年東京生まれ。早稲田大学法学部卒業後、山一證券に入社し支店営業を経験。山一證券自主廃業後、独立系FPに。以後20年以上にわたり、資産運用や住宅ローンを中心とした相談、執筆、講師業に従事。2000年以降の講演回数は4,000回を突破!(2020年2月現在)。近著には「お金を貯めていくときに大切なことがズバリわかる本」(すばる舎リンケージ)がある。

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