不動産投資コラム

最近また、高利回り物件の魅力が再評価されるようになりました。

利回りが高いということは、「物件が割安である」ということで、良い不動産を購入するために大切な要因であるはずなのですが、不動産価格が高騰してくると、主に都心部の物件を扱う不動産業者さんなどを中心に「高利回り物件は危険である」というようなセールストークが使われるようになってきます。

「リスクと利回りは比例する」といって高利回り物件を危険視したり、やみくもに高利回り物件を求める投資家のことを「利回り星人」と揶揄するようなこともあります(笑)。
そこで今回のコラムは、不動産投資の最重要指標である「利回り」について考えてみたいと思います。

高利回りはすべてに勝る

基本的な考え方として、利回りが高い物件は良い物件です。

1億円の売出価格で、表面利回りが10%のマンションがあったとしましょう。これに指値買付を入れて、8千万円で購入することができた場合、利回りは12.5%に上昇します。

「リスクと利回りは比例する」という理論が正しいのなら、このマンションは指値を通したことでリスクが上昇したことになってしまいます。これは明らかにおかしいですよね。価格が下がった分、投資のリスクは確実に減少しています。

買ってはいけない高利回り物件とは?

しかしながら、「リスクと利回りは比例する」という理論が正しく作用するケースもあります。

例えば、銀座の一等地で築30年のビルが売られているとします。新しいとは言えない建物ですが、おそらく表面利回りが6%くらいの価格設定で、ガンガン買付が入るでしょう。
一方、シャッター通りが痛々しい地方都市の駅近ビルが同じ築30年だとすると、利回りが2倍の12%でも売れるかどうかというところです。

この場合、地方都市の築古ビルが銀座ビルの2倍の利回りでも売れないのは、

  • 空室率やメンテナンスコストを考えると、銀座ビルの方が実質的な収益率が高い。
  • 銀座ビルの方が売却しやすく、出口が読みやすい。
  • 銀座ビルは将来値上がりの可能性があるが、地方ビルは逆に下がりそうだ。

などといったリスク要因を、投資家が地方ビルに感じているからだと想定されます。

このように、売り物件の利回りが高い場合は、通常「高利回りでないと売れない」という何かしらの理由があります。

利回りという数字そのものに目が眩んでしまって、その不動産から得られる実質的な収益(売却時の価格まで加味した最終的なもの)にまで考えが及ばなかった結果、「買ってはいけない高利回り物件」を掴んでしまうのです。

すなわち「買ってはいけない高利回り物件」というのは、空室リスクや修繕・運営費用、将来の不動産相場なども折り込んだ「実質的な利回り」は高利回りではないものであると言えます。見せかけの高利回り物件・・とも言えましょうか。

買っても良い高利回り物件とは?

では逆に、買っても良い高利回り物件とはどのようなものでしょうか。

これは先ほどの「買ってはいけない」物件の逆を考えると分かります。すなわち、「実質的な利回りも高い」物件です。
周辺相場(キャップレート)と比べても割安で、空室率や修繕費用を折り込んでも、高い収益を維持することができる物件でしたら、躊躇せず購入してしまえばいいのです。

ですがここで疑問が生じます。「そんな都合の良い高利回り物件なんて、存在するんですか?」というものです。
答えは「もちろん、存在します!」です。

これからこのような「都合の良い高利回り物件」が売られるパターンをご紹介します。

「都合の良い高利回り物件」が売られる1つめのパターンとして、「値付け間違い」というものがあります。不動産の売却に慣れているオーナーさんは多くありませんし、中には収益不動産についてあまり知識のない不動産業者もあります。

この「知らないものコンビ」によって売却される収益不動産は、時にめちゃめちゃな「安い値段」で売られていることがあります。(もちろん、めちゃめちゃな「高い値段」で売られることもあります)

安すぎた場合は買付が殺到し、売主さんが気づいて価格を変更したり、入札方式で価格をつり上げたりします。しかし、あまり人気のないエリアで安すぎの値付け間違い物件が出ても、買付が殺到するようなことが起きにくいため、大した競争もなく物件を格安購入できてしまう場合があるのです。

2つめのパターンは、「売主が売却を急いでいる」という場合です。

不動産を購入するためには、ある程度の調査をして資金の準備をし、契約→融資→決済というステップを踏むため、時間が掛かります。

しかし、売主側で早急に現金が必要な事情があるような場合は、買い手が現れるのをじっくり待っている余裕がなく、「明日契約して、月末決済する」くらいのスピードが求められます。当然、瞬時に売れるような価格で物件を売り出します。
このような「売り急ぎ」物件は、先に挙げたような収益を低下させるリスク要因がありません。

物件をキャッシュで購入できたり、超スピードで融資を確定させられるような人でしたら、「都合の良い高利回り物件」を簡単に購入することができます。

3つめのパターンとしては「改善が容易な阻害要因」のある物件です。

パッと見はものすごく汚くても、高圧洗浄やちょっとした塗装で見違えるような見栄えになったり、半分空室であっても、少し家賃を下げるだけで満室にできる物件が格安で売られるのは、珍しいことではありません。
ぼくも利回りの高い物件を多く購入していますが、そのほとんどはこのような「改善が容易な阻害要因」のある物件でした。

このように、改善が容易な阻害要因が放置されたまま格安販売されているケースでは、多くの場合、売主にアパート経営や不動産全般についての知識がありませんので、価格交渉をする際にも買い手が有利になることが多いです。

今回のコラムをまとめると、まず「高利回り物件には、買っても良いものとダメなものの2種類がある」ということ。
そして「買ってはいけない高利回り物件は、本当は高利回りではない」ということ。最後に「買っても良い高利回り物件には、パターンがある」ということです。

次回は買っても良い高利回り物件を「創り出す」ための、価格交渉の方法について説明します。

寺尾 恵介
寺尾 恵介

寺尾 恵介

大手保険会社に12年間勤務。2004年から不動産投資を始め、2008年3月までに7物件・94戸の不動産を購入し、サラリーマンを卒業。現在は大家業の他、不動産投資ブロガーとしても活躍中。著書『満室大家さんのヒミツ』(ぱる出版)他。

 

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