不動産投資コラム

新シリーズは、物件の調査・購入ドキュメントの間に普通のコラムを挟むような流れで回を重ねていく予定で、前シリーズとは違った角度から不動産投資を考えてみたいと思っています。ちょっとマニアックな内容も入れていきたいですね。
今回は「都市部で行う不動産投資」について検証してみましょう。

単位面積あたりの家賃が高いので...

ぼくは、地方で高利回りの物件を購入するスタイルでここまで来ましたが、都市部の物件もたくさん見ていますし、名古屋や埼玉の中心部に区分マンションを数戸保有しています。前シリーズの最終回でも少しふれましたが、常に安定した人口流入があり、単位面積あたりの家賃が高い場所では、「入居率が高く維持できやすい」「運営コストの占める割合が低い傾向がある」というメリットがあります。後者の「運営コスト」というのは、たとえば家賃3万円の部屋であっても、一等地で8万円の部屋であっても、部屋の面積が同じくらいならエアコンの価格も大して変わらない。クロスの張り替えやハウスクリーニングも同様。となると、家賃に占めるこうした経費は、単位面積あたりの家賃が高い方が低くなるという意味です。

不動産会社や各種業者さんの選択肢が豊富だったり、交通の便が良く、現地に行きやすいというメリットもあるでしょう。

ぼくが考える大きなメリット

そのほか、都市部の物件にはもうひとつ大きなメリットがあります。それは「物件を売りやすい」ということです。

不動産投資は物件を売却できて初めて収支が確定するものです。キャッシュフローが出ていても、それ以上に物件の価値が下落していたら意味がありません。物件を当面売るつもりがなかったとしても、いつの時点でいくらなら売れるかという指標は重要です。大幅に下がってしまった株式を「配当が出ているから」という理由で持ち続けている人は、投資に成功しているとは言えませんよね。それと同じです。

物件を売りやすい理由は、まず都市部をターゲットにしている投資家が圧倒的に多いこと。資金力や調達力に優れた投資家の絶対数も多いので、耐用年数の関係で融資が付きづらい物件でもあっても、ポンっとキャッシュで購入されたりします。ですので、地方の物件に比べると経年による価格下落が少ないという特徴があります。利回り的には地方物件に及ばなくても、売却までをトータルで考えた場合には、都市部物件に軍配が上がることもあるでしょう。

もちろん、高利回りの物件が出にくい、融資を使った場合に返済比率が高くなりやすいなどのデメリットもあります。

  • 短期的なキャッシュフローを重視するなら、地方の高利回り物件
  • 保有~売却までトータルで、低リスクで安定した収益を考えるなら都市部の物件

という原則が、おおよそ当てはまるのではないかと思います。地方物件を中心に不動産投資をしていた方でも、次第に人口の多い場所にある物件に資産を組み換えていくケースが多いのは、やはり長期で安定した「損をしない」投資へとニーズが移っていくからでしょう。

自分の場合は...

ここで自分の事例ですが、高利回りの地方物件を購入していったことで、比較的短期間で不動産からのキャッシュフローが増えています。そうすると、手持ち資金にも少しは余裕が出てくるので、それまでのような「フルローンでなければ一棟ものは買えない」ということもなくなり、ある程度自己資金を投入できるようになりました。

また、不動産投資を始めてから数年が経過し、先に挙げた「リフォーム費用が家賃に対して割高」「売却に時間がかかる」などのデメリットも感じ始めていたため、そろそろ効率を考えて投資物件を検討したほうが良いと思い始めたのです。

ちなみに、ここでいう「効率の良い投資」とは、

  • 同じ手取り額なら家賃総額も借入額も低い方が良い
  • 物件の維持管理にかかる時間は少ない方が良い

というものです。
そこで、首都圏を中心に購入物件を探してみることにしました。

探してみると、表面利回りが10%もあれば、堂々と「高利回り物件!」と書かれていたりしてとまどいましたが、利回りの絶対値が大切なのではなく、相対的に高いことを重視しなければなりません。いわゆる「安い」ではなく「割安」であることが重要です。しかも、利回り15%以上の物件も珍しくない地域と、ほとんどが利回り一ケタで流通している都市部では、利回り1%の重みが全然違います。利回りそのものの数値はもちろん、その利回りを構成している家賃の金額が、地域相場と比べて適正かどうかも、しっかり確認しないといけません。

ぼくが何十棟かの売り物件で家賃を調査した限りでは、都市部の物件のほうが家賃のバラツキも大きかったのですが、これはおそらく地方から上京してきたような入居者さんが、よくわからないまま賃貸の契約をしてしまうケースが多いからではないかと思っています。

また、地方に比べて積算評価が出にくい物件が多いこともわかりました。これは、銀行の担保評価では主に「路線価」を基準としていることが理由です。一般的に良い立地になればなるほど、なぜか路線価と土地の実勢価格の隔たりが大きくなるので、路線価をベースに積算評価を算出すると、利回りはまずまずの水準であっても販売価格に比べて極端に低くなってしまう物件がほとんどでした。

ですから、無理をしてフルまたはそれに近い融資を受けようとするのではなく、「自分だったらどのくらいの自己資金を出せるか」を念頭に置きつつ、「価格が割安かどうか」「将来の価値を維持・向上」を中心に選ぶようになっています。

買う前から売るときのことを考えて、(何度も出てきますが)「トータルで儲かる物件」を選んでいくことが都市部で物件を選んでいくポイントです。

寺尾 恵介
寺尾 恵介

寺尾 恵介

大手保険会社に12年間勤務。2004年から不動産投資を始め、2008年3月までに7物件・94戸の不動産を購入し、サラリーマンを卒業。現在は大家業の他、不動産投資ブロガーとしても活躍中。著書『満室大家さんのヒミツ』(ぱる出版)他。
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