都心の不動産価格は高騰しているため、フルローンではなかなかキャッシュフローが回りにくくなっています。そのため、利回りのいい地方都市の不動産を検討する方が多くなっています。実は、私もその一人。大阪に住みながら地方都市の不動産を保有しています。今回は、私が地方不動産を取得して、実際に感じているリスクをお話したいと思います。
家賃相場と下落率
まずは、家賃相場です。都心であれば、単身向けの1Kであっても、10万円近い家賃が取れる物件も多いですが、地方都市ではそうはいきません。地域によっては3万円を切るような家賃もたくさんあります。需給バランスが崩れてしまった地域では、家賃の値下げ合戦が起こってしまうのです。例えば、私が保有する物件の中には1Kで家賃が2.9万円というものもあります。さらに、他の投資家さんが保有されている物件で、雪国で駅からも遠く立地が悪いため、家賃が1万円台という物件も存在します。何事も需給バランスです。
さらに、「下落率」について考えてみます。同じ2,000円の家賃下落だとしても、都心の家賃が10万円の部屋であれば、下落率は2%。地方都市の家賃が2万円の部屋であれば、下落率は10%になります。これは、単純に入金される金額が2千円減ったというだけではなく、売却金額も10%下がる可能性があるということになります。
現在では、表面利回りで物件を選定する人が増えています。そのため、表面利回りが一定だとすると、家賃が10%下落するということは、売買価格も10%下落するということになるのです。つまり、家賃の低い物件こそ、相場家賃とのかい離に敏感にならなくてはいけません。
ただし、反対に前のオーナーがとりあえず空室を埋めるために家賃を下げていた場合、「相場家賃>現状家賃」という状況が発生しています。その場合は、数年かけて相場家賃へ持って行って、満室家賃を上げて売却するというのも一つの方法です。
いずれにせよ、物件購入時には、「現状の家賃で表面利回りがいくら...」ということではなく、「相場家賃と比較する」ことを行ってください。
管理会社との関係
私が保有する物件の中には、車で片道8時間かかるものがあります。そうなってくると、頻繁には行けません。初めの方こそ、年に数回行っていましたが、最近は年に1回行くか行かないかです。これが遠方物件の実情です。
年に1回行くか行かないかという状況で、満室をキープするためには、管理会社との関係が重要になってきます。個人的な付き合いも深めて、管理会社の担当者と仲良くなり、困ったときにすぐに動いてもらえる関係づくりをしなくてはなりません。
売却時のリスク
都心の不動産は、海外投資家などの参入により価格が高騰しています。そのため為替の動きやオリンピックなどが大きく影響しています。
一方で、地方不動産は金融機関の「融資」が価格に大きく影響します。結局、これも需給バランスなのですが、今は多くの金融機関が地方不動産へ融資を行っているので、東京などに住んでいる方が地方不動産を購入するケースが多いと思います。
しかし、金融機関が融資を引き締める(つまり、地方不動産への融資を行わない)となると、その地方都市の不動産を買える人が少なくなる(東京など地方以外の人が買えなくなり、地元の人だけが買える状況になる)ため、結果、不動産価格は下がってしまいます。
大手金融機関などが支店を置いている場合は、比較的安全かと思いますが、そうではない地方都市で、ある特定の金融機関だけが融資を行っているという状況であれば、その金融機関が融資を行っている間は買える人がたくさんいるので需要があります。ですが、その金融機関が撤退してしまうと、買える人がいなくなるので需要がなくなり、価格が大きく下落する可能性があります。こういった地方都市であれば、融資による価格変動リスクが大きいということになります。
「地方都市」と言っても、「大手金融機関の支店がある地方」と、「そうでない地方」があります。後者については、売却時の価格変動リスクが大きいため、早めに売却することも検討しておいた方が良いでしょう。
まとめると、地方物件の場合、購入時は融資さえ通れば問題ないのですが、保有時には管理会社との関係、そして売却時には地元金融機関の融資姿勢による価格変動リスクなど、都心の不動産とは違ったリスクが存在します。地方物件は、購入時は利回りが高いため、入居率や賃料がそのままの条件でいけばキャッシュフローが回るケースが多いですが、需給バランスが一気に崩れる可能性もあり、その場合家賃下落率が都心では考えられないくらい高くなるケースもあります。空室についても、地域によっては需要がそもそもない場合もあり、家賃を少し下げたくらいではどうにもならない場合もあります。長い目で見れば上記のようなリスクがありますので、長期保有という意味ではリスクが大きいと言わざるを得ません。一言に「地方」と言ってもいろいろな「地方」がありますので、どういう「地方」なのかを見分ける能力が必要になります。購入時点の利回りやキャッシュフローだけに注目せず、その後の運営や売却まで含めたトータルで投資を検討しましょう。