不動産投資コラム

何のために不動産投資をするのか?

何のために不動産投資をするのか?

はじめまして。赤井誠です。このコラムではサラリーマンで不動産投資を始めた私が、不動産投資を行うにあたり、必要な心構えや具体的なノウハウを、自身の経験をふまえて紹介します。第1回にあたる今回は、自己紹介をかねて私が不動産投資を始めるまでの経緯とそのために大切にしたいと考えていることをお話しします。

最近の不動産を取り巻く環境

現在、不動産業界ではかぼちゃの馬車に端を発したS銀行問題、最近では札幌のビル爆発事件での不動産会社による契約の不履行事件など、不動産業界における様々な問題が多発しています。このようなニュースを聞くたびに、お金を得るためであれば何をしてもいいのか?人をだましたり欺いたりして稼いで本当に幸せになれるのか?と考えてしまいます。

確かに不動産業界は多額のお金が動く業界で、経済的に魅力のある市場です。お金は豊かな人生をおくるために必要不可欠ですし、そのために、数多くの投資家が不動産賃貸業に参入し、ここ数年は不動産バブルと言われるほど市況が活性化していました。

過去、アパート・マンションの賃貸経営と言うと、多くの土地を持つ地主や多額の資金を持つ資産家だけが参入できる市場でした。しかしながら、ここ10年程度で多くの銀行が不動産の資産的価値や収益的な価値によってサラリーマンやOL、さらに主婦や学生などに対しても多額の融資を行うようになりました。その結果、誰でもアパート・マンションの賃貸経営を始めることができる、参入障壁の低い業種となりました。

建築業者もこのようなすそ野の広がったオーナー予備軍に対して、数多くのアパート・マンションを建築し、市場にはますます賃貸物件が溢れるようになってきました。(図1参照)

そのため、現在、賃貸経営はより競争の激しい市場になっています。空室の増加や入居者募集の時に支払う広告費の増加など、地方では3ヵ月分以上の広告費を付けないと不動産会社に入居付けをしてもらえないようなところもあります。また、S銀行問題が起きたことで、金融機関の融資姿勢も厳しくなりました。

図1.総住宅数と空き家率の推移

資本のない人にも生まれたビジネスチャンス

しかし、悪いことばかりではありません。いままで地主や資産家に占有されていた賃貸マーケットが多くの人に開放されたことにより、そこにビジネスチャンスが生まれ、資本のない人でも頑張って努力すれば、大きな資産を形成することができる可能性が広がったことも事実です。

私もこのチャンスを生かして資産を形成した一人です。私は中学生の頃に父親が倒れて、ほとんど収入がない家で育ってきました。何の資格も持たない母親は早朝と夜中に仕事をして家計を支えていました。そのおかげで私は高校を卒業でき、さらに授業料免除によって国立大学・大学院を進み、生活はアルバイトと育英会と企業からの奨学金でなんとか卒業することができました。そのころからお金の大切さは身に染みてわかっていました。

入社してからはがむしゃらに働き、経済的にはだいぶ裕福になってきましたが、当時は精神的につらい仕事も多く、「自分に何かあった時に私の労働収入だけに頼っている状態では家族が困るかもしれない」という思いがだんだん芽生えてきたのです。

そこで2005年、43歳の時に200万円を元手に不動産を買い始め、2019年現在では家賃収入1億円を超える規模になっています。始めた当初はサラリーマンとして勤めていたため、不動産に費やせる時間は帰宅後と休日のみでした。しかし、不動産賃貸業の仕事は自分の趣味のDIYを生かせるということでとても楽しく、時間の経つのを忘れて働くことができました。

サラリーマンだけの収入だけに頼ることのリスク

私はそのまま定年まで兼業でやるつもりでいましたが、50歳の時に、会社での様々なトラブルによりストレスを抱え、病気になりました。そして、会社の同期や上司の働き方・生き方を見ながら、自分自身の生き方に疑問を持つようになりました。

自分は何のために働き、何のために生きているのか?

私は、その頃に明確に人生の目標を決めました。
それは"安心して幸せな人生を送ること"です。

具体的には
・好きな仕事をして安定収入を得ること
・時間的、経済的自由を持ち、夢だった世界中を旅すること
・仕事を通して社会に貢献すること
・一緒に人生を楽しめる仲間と過ごすこと
これらを大切に、実現できる状態にしたいと考えました。

不動産投資は、時間的な自由と経済的な自由とを両立させてくれるものだと思います。私は賃貸経営の収入があったことによって、残りの自分の人生を豊かに生きるという目標を最優先にする選択をすることができました。そして、53歳の時に、最後はストレスだらけだったサラリーマンを辞めました。

賃貸経営は甘いものではない

しかし、誰でも賃貸経営の世界に入れば幸せになれるというものではありません。サラリーマンは時間的な拘束を受けますが、逆に非常に多く点で会社に守られています。賃貸経営というと、何もしないでお金が入ってくる不労所得と勘違いしている人も多いのですが、そんなことはありません。

魅力的な物件を作り、管理会社、仲介会社と連携を取り、トラブルには迅速に対応して、事業を円滑に進めなくてはなりません。それはすべて経営者の責任で進めていかなくてはならないのです。
そのため、自分自身の経営能力をどんどん高めていかないと、これからの厳しい賃貸業界の中で生き残っていくことは難しいでしょう。

サラリーマンの場合、仕事がうまくいかなくても給与が大きく下がることはなく、失敗したからといって、個人が借金を背負うわけでもありません。サラリーマンはそういう意味では本当に恵まれている商売です。「運が悪かった」で片付けても何とかなるからです。

もちろん今は、サラリーマンにもリストラはありますし、成果に応じた給与体系もだいぶ取り入れられています。ただ、自営業に比べれば、いろいろな意味で守られていることは間違いありません。

甘い考えで賃貸経営を始めて、うまくいかないことを他人のせいにするのは自由ですが、つぶれて困るのは自分です。
借金を背負うのも自分。自分だけならまだしも、家族や両親までも不幸にしてしまったら取り返しがつきません。

少なくとも高額の借金をして不動産の世界に入るのであれば、すべての事は自分自身の責任で判断して行動できるようにならない限り、やるべきではないと思います。

投資をするうえで忘れてはいけないこと

不動産の世界で上手くいってくるとそれまで得たことのないような金額の家賃収入が入り、お金の感覚が麻痺する人がいます。そして、どんどんお金の亡者になり目的と手段が入れ替わる人もいます。

お金が儲かるためなら何でもやる、人が困ろうと自分が儲かれば何でもあり、と考えるようになってしまうのです。そして、お金を得ることに必死になり、もっと重要な存在である家族や友人も失ってしまう人がいます。

これでは何のために賃貸経営を始めたのかわかりません。

これから始める人も賃貸経営をもうすでに始めた人も、自分は何のために賃貸経営をやるのかをもう一度よく考えてみてください。経済的自由と時間的自由を得て、自分自身や家族が幸せで豊かな人生を歩むためということを忘れないようにしてほしいと思います。

次回は、「可能な限りリスクを減らしたサラリーマンの投資戦略(仮)」についてお話します。

赤井 誠
赤井 誠

赤井 誠

1985年、北海道大学大学院工学研究科卒、大手電機メーカーに27年勤務、2004年より不動産投資を開始し、その後、サラリーマンを退社、専業大家となる。16棟117室所有。家賃収入は年間1.2億円。不動産会社を経営しながら、そこで得た知識や情報をブログやコラムで全国に発信し、またセミナー講師としても活動中。著書は「ゼロからの不動産投資」「本気で始める不動産投資」(すばる舎)。

 

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