不動産投資コラム

不動産購入のための融資戦略

不動産購入のための融資戦略

不動産を買い進めるためには、融資を受け続けることが必要不可欠です。前回は、融資を受けて不動産を購入し続けるために最低限理解しておくべきこととして、積算評価方法と収益還元評価方法のお話をしました。今回はそれに加えて融資を受けるうえで重要なことをお話ししたいと思います。

今の厳しい融資状況の中、どうしたらいいのか?

私は定期的に都銀・地銀・信金の支店長さんと融資関係のお話をします。今まで真摯に不動産経営をしてきたおかげで、ほとんどの金融機関から1%以下の金利で融資を受けており、もっとも低い金利は0.45%程度です。それなりに信用が構築できていると思っていますが、それでも、現在は本当に融資に対して厳しいと感じます。

自己資金の20~30%くらいは普通に要求されますし、古い物件などでは融資期間がなかなか伸びません。さらに、所有物件に対する評価もより厳しくなって、トータルとしての与信も小さくなってきています。評価に関しても、従来では積算評価が足りなくても、収益還元評価を加味して融資可能額をあげる努力を銀行サイドがしてくれました。ところが、現在はそういったことはなく、積算評価そのものもかなり厳しめに見ています。

そのような厳しい融資状況ですが、不動産投資を行うときには、銀行からの融資は欠かせません。どのようにすれば、よりスムーズに、有利な条件で融資を引くことができるのでしょうか?

銀行は何を見ているのか

前回のコラムで「融資対象である物件の価値」として各銀行が積算評価方法や収益還元方法のどちらか、もしくは、一定の比率でそれぞれを平均して見ていることは理解していただいたと思います。

それに加えて、金融機関は、この不動産を購入した後に経営する「個人または法人の代表者の資質と属性」もしっかり見ています。
では、その資質や属性とはどのようなものでしょうか。

金融機関が見る資質と属性

何千万円、何億円という借金をして不動産を購入し、長期にわたって満室経営を維持するためには、その人の経営能力が必須です。それを評価するために、資質と属性を見ます。

この場合の資質とは、購入しようとしている人が本当に不動産賃貸業を継続してやっていけるか、そしてそこから得た収益で借金をきちんと返し続けていくことができるかということを評価します。お金遣いが荒かったり、考え方がいい加減だったりしないか、すなわち真面目に働いて信頼がおける人かどうかということを見ます。
しかし最近、一部の銀行ではそのような評価が疎かになり、銀行に嘘をついたり、契約書を改ざんしたりするような信用のおけないような人にも多額の資金融資を行っていたことは非常に問題です。今後は銀行が本来の形に戻って、このあたりもきちんと評価することになってくると思います。

属性とは、勤続年数・給与収入・確定申告書・さらに金融資産をどの程度持っているかということです。長い間きちんと勤務をし、収入や役職を得ている人は真面目であると評価されます。そして一定の収入があるのであれば、預金やその他の金融資産が形成されると考えられます。収入が高いのに資産がなければ、支出の多い人すなわち浪費家と思われても仕方ないのではないでしょうか。

信用を毀損しないこと

金融機関は、その人または法人が所有する資産より負債が多い場合、信用が毀損されているとして融資しなくなります。そのため、積算価格を上回る借入れを行うと次の融資を受けることが難しくなるのです。
しかし、前回もお話しした通り、都心部などの立地の良いところでは、単純に積算価格では実態とかけ離れていることも事実で、そのような地域では収益還元価格でも評価されることが多いようです。
そのため、各金融機関の評価の仕方によって信用が毀損されているかどうかが変わります。ただ、収益還元価格と積算価格の両方を上回るような過大な借入金があると、さすがに与信を毀損した状態だと認識するしかありません。

これを防ぐためには、当たり前のことですが購入時にきちんと頭金をいれることです。急速に資産を拡大することだけに目がいって、物件の購入額のほとんどを借金でまかなう人もいますが、10%の利回りに満たないものをフルに近い融資で購入するのは非常に危険です。拡大だけでなく、安全性という視点も絶対に忘れてはいけません。
もちろん、借金があっても不動産以外に株や預貯金など他に資産があれば、トータルとして与信は復活します。

金融資産の棚卸をする

では金融資産というとどのようなものになるでしょうか。私たちは意外に多くの「隠れ金融資産」を持っています。

  • ・預貯金
  • ・株
  • ・年金
  • ・財形貯蓄
  • ・生命保険
  • ・がん保険
  • ・退職金
  • Etc.

預貯金については説明するまでもないでしょう。株は、会社に持ち株会があれば、知らない間に貯まっているものです。また、年金については、今いくら自分が積み立ててあるかが年金定期便でわかります。
サラリーマンの方は財形貯蓄などもやっていると思いますが、こちらも会社からの補助があったりして、意外に貯まっているものです。
いずれも、いくら保有しているかを定期的に整理しておきましょう。

生命保険やがん保険なども毎年報告書が届いて、現時点で解約するといくら返金されるかが明記されています。これも当然金融資産です。
また、見逃しやすいのが退職金です。勤続年数が長い方は、退職金も積み立てられている状態です。私が前に勤めていた会社では、退職金についても、現在辞めるといくらもらえるかを社内のホームページなどで調べることができました。これも立派な金融資産です。

ほかにも、共有名義人に奥様やご両親などがいれば、彼らの金融資産もトータルの金融資産として検討することができます。
両親などに法人の役員に入ってもらっている場合は、お金を出してもらう形でなく、「信用を借りる」ことができます。

このように整理してまとめてみると、意外に金融資産はあるものです。単にタンス預金になっていては仕方ありません。一度きちんと棚卸をしてそれを有効に利用しましょう。銀行にこれらを見せることで自分自身の属性評価をあげることができます。

「銀行が貸したい人」になれ

金融機関はお金持ち(資産家)にお金を貸したいものです。お金を持っていない人には貸したくありません。さらに、お金持ちに対しては低金利、お金を持っていない人には高金利でお金を貸します。

これに対して不満を持つ人も多いと思います。しかし、金融機関は慈善事業でお金を貸しているわけではありません。普通の企業と同じ事業法人です。お金を貸したり、金融商品を売ったりすることで利益をあげていかなくてはなりません。
リスクが低い人や企業に融資したいし、リスクが低ければ金利も当然下げることができます。自分が借りている金利が高いと感じている方は、まだまだ自分自身のリスクが高いと銀行から評価を受けていると認識すべきだと思います。

融資を受けて大きな資産を形成したいのであれば、自分自身が借金の管理をしっかりとしていかなくてはなりません。物件を購入する前も購入した後も、その努力を続けていく必要があります。購入して終わりではないのです。

赤井 誠
赤井 誠

赤井 誠

1985年、北海道大学大学院工学研究科卒、大手電機メーカーに27年勤務、2004年より不動産投資を開始し、その後、サラリーマンを退社、専業大家となる。16棟117室所有。家賃収入は年間1.2億円。不動産会社を経営しながら、そこで得た知識や情報をブログやコラムで全国に発信し、またセミナー講師としても活動中。著書は「ゼロからの不動産投資」「本気で始める不動産投資」(すばる舎)。
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