こんにちは。バンコク心友不動産の北浦 洋二です。
さて、第2回目のコラムではバンコクの不動産マーケットについてお話させていただきます。
現在コロナウイルスによる規制が不動産マーケットに影響を与えており、価額が下がっている側面もありますが、これから投資をする方や移住を考えている方には有利なマーケットになってきていると考えています。
まずはバンコクのコンドミニアム新規供給戸数推移についてお話させていただきます。
バンコクのコンドミニアム新規供給戸数推移
まずはバンコクのコンドミニアム新規供給戸数推移についてお話させていただきます。
第1にバンコクのコンドミニアム新規供給戸数は年々減少しております。
特に2020年は新型コロナウイルス感染拡大を受け、2019年は44,662であった新規供給戸数が21,643と半分以下になりました。
また、今年度は2021年第1四半期(1月〜3月)の新規供給戸数が前年同期比マイナス41.8%の3,634であることに加え、バンコク各地の建設現場でクラスターが発生したことを背景に今現在バンコクでは政府規制によりあらゆる工事が禁止されていること等もあり、新規供給戸数はさらに減少する見込みです。
そして、物件グレード別のデータでは2021年第1四半期の新規供給戸数の41%を1平米あたり80,000~150,000バーツのプロジェクトが占めました。次に多かったのは1平米あたり80,000バーツ未満のプロジェクトで31%、1平米あたり150,000バーツ超のプロジェクトは24%でした。
【グレード別顧客セグメント】
80,000 THB 未満: タイ人中流層、
80,000 THB 〜 150,000 THB: タイ人中流層、外国人
150,000 THB 超: タイ人富裕層、タイ人中流層 (アッパーミドル)、 外国人
エリア別では金融街のシーロムやサートン、日本人が多く居住するスクンビットエリアなどのCBD (中心部ビジネス街) への2021年第1四半期の新規供給はわずか4%であり、残りの96%はバンコク郊外等でのプロジェクトとなっております。
以上のデータから新規の供給戸数が減っていることがわかりますが、バンコクでは2019年の4月に実施された融資規制の影響により、それまで好調だった不動産販売が落ち込み、コンドミニアム価格も伸び悩んでいる状況にありました。さらに、2020年3月頃からは新型コロナウイルスの流行に伴う各種規制の影響も経済に打撃を与えております。
コロナ禍の規制で特に影響が大きいのは、外国人の渡航規制 (14日間の隔離)です。主要な買い手であった日本人や欧米人、中国人の入国が期待できない状態が続いていることから、外国人の投資需要やセカンドハウス需要が減少しています。
また、その他の各種規制も国内経済に影響を与えていることから、物件代金を支払えずに手付金を入れたお部屋がデベロッパーにより没収されるというケースも少なからず見られています。
こうした状況を映すように、コンドミニアムの供給戸数は低下しており、2021年現在、新規物件の供給は郊外にほぼ限られ、バンコク都心部では各デベロッパーによる在庫物件への割引、各種プロモーション付きでの販売が行われているほか、中古物件市場でもオーナー様による値下げ販売が目立っています。
既存ユニットの在庫整理
さて、先程新規供給戸数が減少しているとのお話をさせていただきましたが、では今現在タイのデベロッパーは何に注力しているのでしょうか。答えは彼らが保有する『既存ユニットの在庫整理』です。
その販売戦略として各社デベロッパーによる登記費用や管理費、修繕積立金といった権利移転登記手続き時にかかる諸経費を無料とするサービスを行っており、最近ではキャッシュバックの実施や前回のコラムでお話させていただいたタイランドエリートカードと呼ばれる滞在ビザの付与を行うデベロッパーもいます。
そして、こうした大胆なプロモーション戦略の結果、タイの大手デベロッパーは順調に売上高を伸ばしております。例えば、タイ大手Sansiri及びAPは2020年の物件引き渡し額 (Sansiri 450億バーツ・AP460億バーツ) で過去最高を更新、そして、タイ最大の財閥CPグループ会長、タニン・チャラワノンの娘が代表を務めるMagnolia Quality Development Corporationが開発を進める同国最大の複合施設フォレスティアズ (開発規模: 4,400億円)は2021年Q2の3ヶ月で約250億円の売上、またAnandaやRaimon Land、Origin Property等もそれぞれ目標を大きく上回る増収増益を達成しております。
こうしたデベロッパーによる単価を下げて数を売る戦略は、現在今までにないタイ不動産の平均価格引き下げをもたらしており、割安で大手デベロッパーの魅力的な物件を購入できるという特に新規購入者にとっては非常に優位なマーケット状況となっております。
また、パンデミックは不動産マーケットはもちろんこと、コンドミニアムの販売方法にも変化をもたらしました。日本と同様、以前のような対面販売が難しくなった結果、メインの販売チャンネルがオンラインに移行しました。Origin Propertyは『ザ・オリジン』ブランドのコンドミニアムをオンラインで販売したところ、わずか10日間で7億円超(日本円換算)の予約が入ったとのこと。
尚、弊社も今年に入ってから実際に現地で視察を行わずに、Webでのライブ中継を通してご購入いただく日本人のお客様が増えております。
購入方法
そして、購入方法についてですが、不動産購入と言えば現金でのイメージが強いと思います。しかし、ここバンコクではOrigin PropertyやAnanda、Sansiri、MQDCといった大手デベロッパーのプロジェクトをビットコインをはじめとする暗号資産によって購入することが可能です。残念ながら今現在その多くはタイ人のみを対象としたものになりますが、Singha Estate (日本でも有名なシンハービールを製造するシンハーグループの不動産部門)は外国人による暗号資産による物件購入を既に認めています。
前述の通り、各デベロッパーは過去最高益或いはそれに非常に近い水準を達成しております。こういった利益の大半はタイ人向け販売によるものですが、外国人のタイ不動産需要もゆっくり回復しつつある印象です。バンコク内にある外国人所有のコンドミニアムのうち51.8% (2021年現在)は中国人によって保有されていますが、既に昨年末時点で彼らによるタイ不動産照会件数がパンデミック前の水準に戻っているとのことです。実際、バンコクの中心アソーク駅前にある高級コンドミニアムの十数部屋をはじめとし、直近わずか数か月で中国人のお客様によって多数コンドミニアムを購入いただいております。尚、弊社のみでこの件数ですので、バンコク中の不動産会社を合わせるとかなりの数値になるかと思います。
現在ロックダウンの中、コロナ以前に比べてマーケットは鈍足傾向ですが、ワクチン接種が進む中でアフターコロナを意識した動きは確実に出始めており、割安に物件を購入できるタイミングで安く仕入れ、マーケットの回復に備えるという戦略を取る外国人の方が増えてきています。そのため、都心一等地の物件であればあるほど、現在のディスカウント状態は長く続かないかもしれません。
コロナ禍で買い手優位となっているこの環境を皆様も生かしてみてはいかがでしょうか。
さて、今回はバンコクのコンドミニアムマーケットの現状についてお話させていただきましたが、次回第3回目のコラムでは、実際の物件のご紹介をいたします。