不動産投資コラム

所得税を節税する基本と裏ワザを押さえて
キャッシュフローを高める方法!

前回のコラムでは、不動産運営で金額が大きくなりがちな修繕費について、その支出が資産になるのか、修繕費になるのかの判断基準や、会計の処理方法を使った融資対策についてお伝えしました。第4回目となる今回は、青色申告のメリットを、所得税の話を中心に法人の場合にも触れながらご紹介します。また不動産所得でマイナスが出た場合に、確定申告の処理方法一つで税額が変わるケースについてもお教えしますので、しっかり押さえてくださいね。

青色申告のメリットは何?

青色申告は節税の基本と言われていますが、青色申告をすることでどんなメリットがあるのでしょうか?青色申告のメリットには大きく分けて4つあります。

1.個人の場合、帳簿を付けるだけで青色申告特別控除が受けられる!

青色申告特別控除は、不動産の賃貸収入から経費を差し引き、その金額からさらに引いてもらえる控除です。控除される金額は5棟10室の事業的規模を満たしていれば65万円、満たしていなければ10万円ですが、収入から経費を差し引いた利益の金額が上限になります。また65万円を控除するためには、事業的規模に加えて、複式簿記で記帳し、申告期限内(3月15日)に申告することが要件となっています。

あまり知られていない青色申告の裏ワザとして、不動産賃貸業に加えて、他に個人事業をしていて事業所得があれば、不動産賃貸業が事業的規模でなくても、青色申告特別控除65万円を控除することができます。例えば、青色申告特別控除前の不動産所得が5万円、青色申告特別控除前の事業所得が100万円ある場合は、青色申告特別控除65万円を、まず不動産所得の5万円から引いて、次に余った60万円を事業所得から引くことができるのです。

では、個人事業があっても、その個人事業が赤字の場合はどうなるのでしょうか?例えば、事業的規模でない青色申告特別控除前の不動産所得が70万円、青色申告特別控除前の事業所得△20万円の様なケースです。この場合、青色申告特別控除65万円を事業的規模でない不動産所得から65万円引けるんです!

青色申告特別控除は、その名の通り青色申告をするから控除してもらえるものなので、白色申告だと、この控除はありません。

2.個人の場合、事業的規模であれば家族に給料を払うことができる!

個人の場合、原則として家族に給料を払うことはできないことになっていますが、不動産賃貸業が事業的規模で、届出書を提出すれば払うことができるようになります。家族に給料を払うことができれば、所得が分散されて税率が下がり、節税に繋がります。

例えば夫の不動産所得が1,500万円あって所得税と住民税を合わせた税率が43%だとします。1,500万円のうち500万円を妻に給料として払うことができれば、夫の不動産所得は1,000万円になり税率は約30%、妻の税率は約20%になりますので、この税率の差を使うことにより節税となるわけです。

ちなみに家族に給料を払うためには「青色事業専従者給与に関する届出書」を、払う年の3月15日までに税務署に提出しなければいけません。

では、家族への給料はいくらまで払えるのでしょうか?実はこの金額に決まりはなく、仕事の内容、経験に応じた金額、同業種の水準と同程度、事業規模や収益の状況に見合う程度という基準があるぐらいです。ボーナスは払うことができますが、退職金は払うことができません。

白色申告でも給料を払うことはできますが、金額の上限が決められていて、配偶者は86万円、それ以外については50万円までですので、この金額以上を払いたいのであれば、青色申告の方が有利になります。

3.様々な特例が受けられる!

税金にはその時々で様々な特典があるのですが、そのほとんどが青色申告をしていないと受けられないものが多いです。その代表的なもので不動産に関係あるものとしては、「少額減価償却資産の特例」があります。これは、通常10万円以上だと資産計上しなければいけない備品などが、一つ30万円未満であれば、一括で経費にできるという特例です。ただし、年間で300万円が上限となっています。

また、今よく話題に出る太陽光発電設備を取り付けた場合でも、法人であればグリーン投資減税が受けられるのですが、こちらも青色申告をしていることが条件となります。

なにはともあれ、青色申告をしていなければ特典を十分に活用できない可能性があるので、青色申告をするに越したことはありません。

4.個人の場合3年、法人の場合9年、損失を繰越できる!

不動産を購入すると、購入諸経費が掛かる初年度や、大規模修繕をしたときなどは、所得がマイナスになる場合があります。所得がマイナスになった場合、個人はまず給与所得や事業所得など、他の所得と合算(※これを損益通算と言います)してもまだ損失が出ている場合(※これを純損失と言います)は、青色申告をしていれば、その損失を翌年以降に繰り越すことができます。繰り越せる期間は3年間です。

一方、法人も損失が出た場合は、青色申告をしていれば、その損失を翌年以降に繰り越すことができます。繰り越せる期間は、個人の3倍の9年間です。

これをうまく活用することができれば、思わぬ損失が出た場合でも、その損失を翌年以降の利益と相殺することによって、節税をすることができますね。

ただし、個人の場合はいくつか気を付けることがあります。まず、個人の場合、土地や建物などの不動産を売却した場合に発生した損失は、同じ年に売却した不動産の売却益との合算はできますが、他の所得とは損益通算ができません。そして、不動産所得で損失が発生している場合でも、借入金の利息のうち土地の取得にかかる分は損益通算ができません。ここは少し難しいので、詳しく説明しましょう。

不動産所得がマイナスになったときの裏ワザ

不動産所得でマイナス(損失)が発生している場合、借入金の利息のうち土地の取得にかかる分の損益通算ができないとはどういうことなのでしょう?

例えば1億円の一棟マンションを1億円のフルローンで購入し、そのうち建物が7,000万円、土地が3,000万円とします。そして、不動産所得のマイナスが▲100万円で、その年の利息が300万円だったとします。まず、利息300万円のうち、土地の取得にかかった分を計算します。

利息300万円×(土地の取得に要した借入金3,000万円/土地建物1億円)=90万円

そして、この90万円を不動産所得のマイナスにプラスします。

 ▲100万円+90万円=▲10万円

不動産所得のマイナスが▲100万円から▲10万円になったので、給与や事業などの他の所得がある場合は、損益通算できる金額が少なくなり、その結果、税金は増えてしまうわけです。
こう見ると、特に中古物件を購入するときは、建物の割合を高く、そして金利交渉をして支払う利息を少なくすることが、節税につながることがわかりますね。

ではフルローンではなく、自己資金を入れた場合はどうなるのでしょう?ここで知っている人しか使えない裏ワザがあります。先ほどの例を元に、借入の金額だけを変えてみましょう。

1億円の一棟マンションを8,000万円のローンで購入し、そのうち建物が7,000千万円、土地が3,000万円とします。そして、不動産所得のマイナスが▲100万円で、その年の利息が300万円だったとします。まず、利息300万円のうち、土地の取得にかかった分を計算するのですが、このケースでは建物から先に借入金を充てられたと仮定して計算します。

借入金額8,000万円-建物7,000万円=1,000万円

1,000万円が土地の取得に充てられた借入金となり、この金額を元に計算します。

利息300万円×(土地の取得に要した借入金1,000万円/土地建物1億円)=30万円

そして、この30万円を不動産所得のマイナスにプラスします。

▲100万円+30万円=▲70万円

先ほどと比べて、損益通算できるマイナスの金額が大きくなったことをおわかりいただけると思います。不動産所得のマイナスの金額が大きくなるということは、申告する所得が減少し節税に繋がります。

このように、確定申告の際の計算一つで、税額が変わる場合もありますので、事前にしっかりと勉強しておいてくださいね。次回は、不動産運営をしている人の関心が最も高い法人化について、そのタイミングや、所得税との違いについて解説する予定ですのでお楽しみに!

叶 温
叶 温

叶 温

叶税理士事務所代表。広告代理店の営業として3年間勤務後、税理士を目指し会計事務所に転職。勤務時代に年収400万円で、1億円のマンションを購入。現在は自社ビルを含む2物件のオーナーでもある。著書『大家さん税理士が教える 不動産投資で効率的にお金を残す方法』(ぱる出版)他。

 

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